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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

終点の一つ手前

2009-12-12 | Weblog
さて、大統領選挙の投票日だったはずの11月29日は、とうに過ぎてしまった。騒ぎが起こるわけでもなく、新聞などで激しい批判がでるわけでもなく、天下泰平のままである。とはいっても、大統領選挙をこのまま箪笥にしまって、忘れ去るというわけにはいかない。延期は仕方がないとして、いつに延ばすのか。

それには再び、関係する責任者たち、つまり、バグボ大統領、ソロ首相、ウワタラ元首相、ベディエ元大統領の4人が、全員一堂に会して、きちんと意思統一をしなければならない。どこで集まるか。関係当事者は全員コートジボワールに居るのだから、アビジャンで集まれば手間も費用もかからないのに、そうはしない。ブルキナファソの首都ワガドゥグまで出かけて、会議をするのである。

それは、コンパオレ・ブルキナファソ大統領が、周旋者という役割で、コートジボワール紛争の調停を行ってきているからだ。そして、4人の当事者は、コンパオレ大統領が仲介役になってくれればこそ、和解と大統領選挙にむけて、話し合いをすることができる。まあ、この喧嘩、あっしに預けてくだせえ、と名乗り出たコンパオレ親分の顔を立てる、というところだ。そういう、劇場舞台の設定が必要なのだ。だから、みんなでワガドゥグに出向く。

その「協議継続枠組会合」という名前の協議は、12月3日にその第6回会合を行った。議題は、大統領選挙への段取りをどうするか。つまり、新しい「工程表」である。

2009年12月:選挙人名簿(暫定版)の異議申立て案件処理
2010年 1月:選挙人名簿の確定版を完成。各投票所での投票者確認名簿、選挙人証・身分証の作成・公示
2010年 2月:選挙人証及び身分証の発給。選挙運動。
そして、大統領選挙の投票日は、「2010年2月末から3月初旬にかけて」という合意になった。

大統領選挙の日程も、こう守られないで何度も延期が続くと、さてこの「来年2月末か3月初旬」というのも、どうだろうかと思ってしまう。

でも、今度こそ違うというのである。これまでは、大統領選挙という終着駅までに、途中の通過駅がいくつもあった。その途中駅を通り過ぎようとするたびに、何かしら赤信号が点ってしまい、長時間停車をすることを余儀なくされた。ところが、今年はもう、「暫定版の選挙人名簿の公示」という駅は通過し、今は「異議申立ての処理」というトンネルを経て、「確定版の選挙人名簿」という駅にさしかかりつつある。

この、「確定版の選挙人名簿」という駅は、終点の一つ手前の駅である。この駅を通過することになれば、もう終点までに途中駅は存在しない。新幹線の博多発東京行きが、品川駅まで来たようなものである。

そもそも、コートジボワールの紛争は、誰がコートジボワール人として選挙資格があるのか、というところをめぐる争いから始まった。だから、「選挙人名簿」が誰も異議を唱えられないような手順を踏んで出来上がる、というのは、紛争の根源を片付けることになるのだ。だから、あとは選挙そのものを実施するだけ。

といって、本当に安心が出来ればいいのだけれど、そうはいかない。終点の一つ手前であるがゆえに、かえって警戒を高めなければいけない、という側面がある。つまり、列車が終着駅に向かうのに、もはや途中駅が無いということになれば、列車を駅で止めるという方法は利かないということだ。大統領選挙に行ってほしくない、と思っている人々がいて、それでも列車を止めようと考えるならば、これまでのように途中駅で赤信号を点すのではなく、列車そのものを脱線・転覆させるという手段に訴える危険が出てくる。

それは、社会が大混乱することを意味する。せっかく、ここまで安定を取り戻し、正常化の道を歩んで来たコートジボワールが、ふたたび元の木阿弥になるということである。大統領選挙が現実味を帯びれば帯びるほど、そういうどんでん返しが起こる可能性も、高まってくる。私は、これからこの「来年2月末か3月初旬」にむけて、もういちど気持ちを引き締めていこうと、心に言い聞かせている。

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