今年も師走、日本の国祭日がやってきた。私は、天皇誕生日の祝賀レセプションを催し、おおぜいのお客さんを公邸に招いている。昨年は昼間に行ったけれど、今年は治安も安定してきたので夜会にした。庭にテントを張って、カクテルを出し、天麩羅、寿司などを振舞う。そして、時間が来たので、私からの挨拶である。
はじめに両国国歌の吹奏を行う。昨年は、既存の録音をスピーカーから流した。今年は違う。「国立芸術文化院」のブラスバンドが控えている。国歌の生演奏がはじまった。そう、日本の楽器を使っているこの楽団に、私がぜひにとお願いしたのは、国祭日における国歌の演奏であった。コートジボワールの国歌「アビジャネーズ」が流れる。さすがに自分の国の国歌だから、上手に演奏。引き続き、「君が代」。大丈夫かなと心配したけれど、上々の出来。後で聞くと、リハーサルでは行進曲のように演奏したので、慌てて、そういう曲じゃないんだと修正したのだそうだ。
国歌吹奏が終わり、私は演台に立つ。
「今年もこうして、皆さまをお迎えすることが出来て、たいへん喜ばしくまた光栄です。今年は、天皇陛下は76歳におなりになるとともに、御在位20周年を迎えられた、記念すべき年です。」
今年の祝辞の主題を何にしようか、何週間も前から考えてきた。11月29日の大統領選挙予定日が流れた直後に演説するわけであるから、選挙が延期になり残念だ、来年こそは選挙実施を、という内容は当然期待されよう。でも、それだけだと御説教じみてよくない。御祝いの席なのだから、もっと前向きの話題がいい。私が選んだのは、「歴史」である。
「多くの国は、独立記念日などを国祭日にしています。ところが、そうした国を創設した日付というのが、日本については分りません。歴史が始まったときに既に日本はそこにあり、以来、国の歴史が続いてきました。そして、天皇陛下は第125代。天皇誕生日を迎えるたびに、日本の国民はこの連綿とした国の歴史を思うのです。」
そうして、私はコートジボワールにも、古い歴史がある、と続ける。
「私がコートジボワールの歴史というとき、それは単に脱植民地や独立の歴史をいうのではありません。植民地化以前にも、王国の興亡、部族の形成の、長い歴史があります。マンデ系、クルー系、ボルタ系、アカン系、それぞれの部族が編み綴ってきた歴史を、互いによく識ることこそ、国家の一体性を考える手始めだと考えます。」
そして、もちろん大統領選挙に話題をつなぐ。
「コートジボワールの歴史において、今新たな頁が繰られようとしています。年が明けると、2010年は独立50周年です。そして、大統領選挙が行われ、危機からの脱出を果たすことになるでしょう。選挙人名簿が全国民の賛同を得て確定することは、コートジボワール危機の原因であった、誰が国民なのか、という問題を解決する、大きな意義があります。さらに大事なことは、大統領選挙の後、どういう国の発展をめざすのか、それを考えることです。」
「日本はコートジボワールを待っていられなくて、今年の8月、先に選挙をやってしまいました。衆議院選挙です。」
そして、日本も歴史の転換点を迎えた、と述べると、会場がどよめく。
「民主党が、1955年以来続いた自民党政権を覆し、政権交代を実現しました。今政策の見直しが、精力的に進められており、移行期にあるといえます。しかしながら、一つのことは明らかです。日本の対アフリカ政策に、変わりはない、ということです。」
私は、鳩山総理の国連演説の文言、つまり「日本はTICAD IVのプロセスを継続強化する」の部分を引用するとともに、岡田外務大臣が明らかにした政策方針を紹介する。
「新政権も、2012年までのアフリカ向けODAを倍増し、民間投資倍増を支援するという、TICAD IVでの約束を、必ず実行する。岡田大臣はそう述べました。ですから、日本は引き続きアフリカ支援に力を注いでゆくのです。」
たくさん拍手が起こる。
日本とコートジボワールには、経済協力の長い歴史がある。その一例が、皆さんの前にある。私はそう言って、先ほど演奏したブラスバンドを紹介する。
「日本が、今を去る17年前に、文化協力で供与した楽器を、コートジボワールの学生たちが大事に使い続けていました。日本の側は、協力を行ったことをとうの昔に忘れていたけれど、コートジボワールの人々はそれを受け継いで、楽器を大事に磨いて、今も音楽を奏でてくれていた。私はそのことに感銘を受けて、今日の演奏をお願いしたのです。」
2010年は、コートジボワールにとって、新しい歴史の章が始まる年になる、と私は再び繰り返す。
「私は、コートジボワールの人々が、希望とともに責任をもって、新しい章への頁を繰るものと確信しています。そして、日本はこの歴史の転換点にあってもまた、コートジボワールの人々とともにあります。」
そう締めくくった。
祝辞の後は、ふたたび歓談に戻った。ブラスバンドは、日本の唱歌の旋律を演奏し始めた。3百人を越えるお客さんと、私は握手をし、挨拶を交わした。この大きな行事が終わると、私の大使館も年納めの段取りになる。
はじめに両国国歌の吹奏を行う。昨年は、既存の録音をスピーカーから流した。今年は違う。「国立芸術文化院」のブラスバンドが控えている。国歌の生演奏がはじまった。そう、日本の楽器を使っているこの楽団に、私がぜひにとお願いしたのは、国祭日における国歌の演奏であった。コートジボワールの国歌「アビジャネーズ」が流れる。さすがに自分の国の国歌だから、上手に演奏。引き続き、「君が代」。大丈夫かなと心配したけれど、上々の出来。後で聞くと、リハーサルでは行進曲のように演奏したので、慌てて、そういう曲じゃないんだと修正したのだそうだ。
国歌吹奏が終わり、私は演台に立つ。
「今年もこうして、皆さまをお迎えすることが出来て、たいへん喜ばしくまた光栄です。今年は、天皇陛下は76歳におなりになるとともに、御在位20周年を迎えられた、記念すべき年です。」
今年の祝辞の主題を何にしようか、何週間も前から考えてきた。11月29日の大統領選挙予定日が流れた直後に演説するわけであるから、選挙が延期になり残念だ、来年こそは選挙実施を、という内容は当然期待されよう。でも、それだけだと御説教じみてよくない。御祝いの席なのだから、もっと前向きの話題がいい。私が選んだのは、「歴史」である。
「多くの国は、独立記念日などを国祭日にしています。ところが、そうした国を創設した日付というのが、日本については分りません。歴史が始まったときに既に日本はそこにあり、以来、国の歴史が続いてきました。そして、天皇陛下は第125代。天皇誕生日を迎えるたびに、日本の国民はこの連綿とした国の歴史を思うのです。」
そうして、私はコートジボワールにも、古い歴史がある、と続ける。
「私がコートジボワールの歴史というとき、それは単に脱植民地や独立の歴史をいうのではありません。植民地化以前にも、王国の興亡、部族の形成の、長い歴史があります。マンデ系、クルー系、ボルタ系、アカン系、それぞれの部族が編み綴ってきた歴史を、互いによく識ることこそ、国家の一体性を考える手始めだと考えます。」
そして、もちろん大統領選挙に話題をつなぐ。
「コートジボワールの歴史において、今新たな頁が繰られようとしています。年が明けると、2010年は独立50周年です。そして、大統領選挙が行われ、危機からの脱出を果たすことになるでしょう。選挙人名簿が全国民の賛同を得て確定することは、コートジボワール危機の原因であった、誰が国民なのか、という問題を解決する、大きな意義があります。さらに大事なことは、大統領選挙の後、どういう国の発展をめざすのか、それを考えることです。」
「日本はコートジボワールを待っていられなくて、今年の8月、先に選挙をやってしまいました。衆議院選挙です。」
そして、日本も歴史の転換点を迎えた、と述べると、会場がどよめく。
「民主党が、1955年以来続いた自民党政権を覆し、政権交代を実現しました。今政策の見直しが、精力的に進められており、移行期にあるといえます。しかしながら、一つのことは明らかです。日本の対アフリカ政策に、変わりはない、ということです。」
私は、鳩山総理の国連演説の文言、つまり「日本はTICAD IVのプロセスを継続強化する」の部分を引用するとともに、岡田外務大臣が明らかにした政策方針を紹介する。
「新政権も、2012年までのアフリカ向けODAを倍増し、民間投資倍増を支援するという、TICAD IVでの約束を、必ず実行する。岡田大臣はそう述べました。ですから、日本は引き続きアフリカ支援に力を注いでゆくのです。」
たくさん拍手が起こる。
日本とコートジボワールには、経済協力の長い歴史がある。その一例が、皆さんの前にある。私はそう言って、先ほど演奏したブラスバンドを紹介する。
「日本が、今を去る17年前に、文化協力で供与した楽器を、コートジボワールの学生たちが大事に使い続けていました。日本の側は、協力を行ったことをとうの昔に忘れていたけれど、コートジボワールの人々はそれを受け継いで、楽器を大事に磨いて、今も音楽を奏でてくれていた。私はそのことに感銘を受けて、今日の演奏をお願いしたのです。」
2010年は、コートジボワールにとって、新しい歴史の章が始まる年になる、と私は再び繰り返す。
「私は、コートジボワールの人々が、希望とともに責任をもって、新しい章への頁を繰るものと確信しています。そして、日本はこの歴史の転換点にあってもまた、コートジボワールの人々とともにあります。」
そう締めくくった。
祝辞の後は、ふたたび歓談に戻った。ブラスバンドは、日本の唱歌の旋律を演奏し始めた。3百人を越えるお客さんと、私は握手をし、挨拶を交わした。この大きな行事が終わると、私の大使館も年納めの段取りになる。
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