まず、生活向上への意欲がある。そして、立案して計画に纏める力がある。何より重要なのが、組織を作って事業を動かす、管理・運営能力がある。西アフリカにおける女性たちのことだ。この間も、「世界人口デー」での式典では、「女性に投資しよう」というテーマであった。女性に高い事業能力があるというのは、こちらでは常識なのかもしれない。
女性たちは、家にあって家計を支え、さまざまな家事をこなし、子供を育てる。だから、日頃から、運営や計画について、真面目に考える機会が、男性たちよりもずっと多い。それに、こちらでは料理も水汲みも洗濯も、みな隣近所の女性たちで一緒に行っている。事業を立案し実施に移したり、それを皆で協力して動かしたり、そういうことに関心を持ち、また自然に行えるのは、男性よりも女性のほうだ、というのはあながち不思議なことではない。
こちらに来てから、地元の団体やNGOによる有意義な活動を、日本の資金で支援してきている。いわゆる「草の根無償資金協力」である。女性が事業活動に熱心だというのは、この「草の根無償資金協力」を通じて、私自身も実感するところである。実際に、数多くの応募があるなかで、女性の団体によるものが多いし、実際に事業の意義や立案・実施能力などについて、大使館の審査を通過するものは、殆どが女性の団体によるものである。
今回、ベナンに出張して、2件の「草の根無償資金協力」案件の完成式を行ってきた。このどちらもが、女性組織が運営する事業である。そもそもベナンでは、経済活動において女性たちの力が大きい。私も以前に、コトヌ漁港に出かけた時、そこで魚市場のおかみさんたちの迫力に圧倒されたものである。農村の女性たちも、数多くの女性組合を結成して、自分たちの生活程度の向上や、意識の改革などに努めている。
最初の案件は、農村女性の研修センターの建設である。ベナンのコトヌ市から近くの、アトロポコジ村(Atrokpokodji)を中心に、女性の生活協同組合、「ガイフェディッド(GAIFEDID)」が、近隣の農村の250団体に及ぶ女性組合をとりまとめて、女性の生活向上のための活動を行っている。加盟人数は、6千人にのぼる。「ガイフェディッド」が力を入れているのは、農村女性の研修事業である。
女性の地位向上のために鍵となるのは、識字率の向上や、収支計算などの能力獲得である。農村では、まだ9割の女性が、字が読めないままでいる。子供の頃に教育の機会が得られなかったからだ。ところが、家計をやりくりし、子育てをし、そして商店などの小さな事業をするのは、こちらでは主として女性たちである。女性たちこそ文字を知り、算数を知る必要がある。だから彼女たちには、学習の意欲がある。読み書き算盤だけではない。保健衛生の知識向上、農業技術、商売などの技術、そうしたものを学んで生活向上を図る。
「ガイフェディッド」では、識字教育、会計実習、農村開墾、ヤム芋・キャッサバなどの農作物加工、児童の権利保護、石鹸製造などの、様々な分野での研修事業を行ってきた。ところが、各地の女性団体から女性たちが集まって、合同で研修をするための施設がなかった。これまで広場で青空教室を開いたり、小学校の校舎を借りたりして、何とかやってきた。しかし、青空教室では天候に左右されるし、小学校では授業をしていない時間に限られる。何より、遠くの村々から参加する研修生は、日帰りでは参加できない。寝泊りする場所も必要だった。
そこで、日本が協力して、研修施設を建設した。「農村女性の研修センター建設事業」:総額5万8千ユーロ(約1千万円)である。4月に合意書に署名して、早速建設を始め、ほぼ完成した。会議室3つと、宿泊室にもなる休憩室2つを備えた、平屋の建物である。これで、同時に最大180人の研修が行える。小さくても、専用の施設、雨露をしのげる施設が出来たことで、たくさんの女性組合に対する研修を、計画的かつ効率的に実施していくことが出来るようになった。
(続く) 女性組合員たちのお祝いの歌
研修センターの門
研修用の部屋
休憩室には、ベッドが届いた
女性組合「ガイフェディッド」の代表、ウダグバさん
後ろの集会場は自分たちの費用で建設中のもの
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