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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

中学校が開校した

2009-11-25 | Weblog

こちらに来て初めて自分で手掛けた案件が、このたび実を結んだ。中学校の建設に協力する案件である。昨年の10月に、初めてアビジャンの外に出て、村を訪れた。その機会に、その村を含む人口8万人のバヨタ県(Bayota)に一つも中学校がない、という話を聞いた。

バヨタでは、小学校を卒業した子供たちがさらに勉学を続けるためには、そこから40キロ離れたガニョアの町の中学校に通う算段をつけなければならない。つまり、寄宿させてくれる親戚を探すか、あるいは下宿のアパートを借り、そこで一人で生活する必要がある。そうした算段が付かない場合、毎日バスで、片道1時間かけて中学校に通わなければならない。

中学一年生といえば、まだ10歳くらいなのに、大変な負担だ。寄宿だのアパートを借りるだのと、親には大きな負担である。バヨタ県の人々は、何とか地元に中学校を作ることを願ってきた。中学校のための土地は、バヨタ市内に確保された。問題は、学校の校舎を作るかどうかなのである。国は、学校の施設さえ整えば、先生を派遣するという。それで、地元の資金を集めて、土地を整地し、教職員棟と教室を3室建てた。そこで資金が尽きた。

そこに、たまたま日本大使が訪れた、というわけである。経済社会評議会のクドゥ副議長は、私を現場に案内した後、私を夕食に招いた。私が猿を食べた夕食である。地元の人たちは、ただ中学校がほしいといって天を仰いでいただけではない。自分たちで何とかしようと、半分まで作ったのだ。現地の自助努力に日本が協力する話、そして子供たちの教育を助ける話だ。私は心を動かされた。猿を食べながら、この案件も食べようと決めた。

バヨタ中学校の校舎建設計画は、草の根協力の資金2800万フラン(約550万円)を活用して実施された。そして建設は、何とかこちらの新学期の10月に間に合った。校舎が中学校を開くために十分な数になったので、国は約束通り先生を派遣してきた。私は、11月13日、校舎の引き渡し式に出席するため、ジェジェ大統領顧問といっしょに、ふたたび現地を訪れた。

バヨタ中学校に到着したら、お揃いの制服を着た生徒たちが全員で出てきて、一列に並んで出迎えてくれた。私は歓呼に応えて手を振りながら、校庭に設えられたテントに座る。1年前に訪れた時に出会った人々が、皆顔をそろえて私を待っていた。部族は国の心棒であると教えてくれた、バカール教授もいる。

州教育局の局長が来ていて、挨拶がある。日本の協力のおかげで中学校ができて、誰もが皆喜んでいる。生徒たちは、これから遠くの学校に通わないでよくなったので、その分勉強に精を出すことが出来る。局長はそう感謝の言葉を述べた後、とても大きな朗報を持ってきた、と言った。
「州教育局では、予算を付けて、この中学校に給食施設を建設することを決定しました。」
参集している人々や、生徒たちから、わーっと歓声が上がる。それはいい話だ、と傍らのバヨタ市長も喜んでいる。親たちは、これから子供の弁当の心配をしなくて済む。

私も演台に呼ばれて、挨拶をした。若い人々が、これからの国の未来を背負って立つ。日本の協力で建てた中学校で、多くの若者がよく勉強して、コートジボワールで一番の成績を上げてくれれば、日本の人々にとって大きな喜びである。そういう趣旨を話した後、校舎の鍵の引き渡しである。
「この鍵は、皆さんの使う校舎の扉を開く鍵です。それとともに、このバヨタにおいて、日本とコートジボワールの友好関係を開く鍵でもあります。」
そう述べて、校長先生に鍵を渡した。

引き渡し式のあと、席を立って教職員棟と校舎の視察に向かう。日本の資金で、教職員棟は完成し、校舎は新築された。2つの建物が、綺麗に色塗られている。つい先月から使い始めたばかりの建物である。校長先生の案内で、「日本からの寄贈」と大きく書かれた校舎に入ると、そこには黒板や机椅子が整備され、先生の下でもう生徒たちが授業を始めている。私が教室をのぞくと、生徒たちが起立して迎えてくれる。

校長先生に生徒数を聞くと、6クラス364人です、とのこと。実は、もともと予定していた生徒数は300人ほどであった、という。
「ところがです。バヨタの中学校が開校したと分るや、これまで外の親戚の家などに生徒を下宿させていた多くの親が、どんどん子供を呼び返しはじめた。それで見積りよりも60人以上も生徒が増えたのです。そうですよね、子供は出来れば手元に置いておきたいですよ。」

日本の協力で、教室の数が基準を満たして、悲願だった中学校が開校した。先生が国から派遣されてきた。バヨタの中学生たちが、親とともに暮らしながら、中学校に通えるようになった。これはバヨタの町にとって歴史的な進歩である、という。私にとっての最初の協力案件が、こうして町の生活を変えるだろう。案件を手がけたかいがあったというものである。

 バヨタ中学校への道
生徒たちの歓迎の列

 新築校舎

 「日本からの寄贈」

 挨拶に立つコドゥ副議長
バカール先生も真白の服で

 男衆の踊り

 力強く足を踏みならす

 教室で学ぶ中学生たち

 新しい机に新しい制服

 日本万歳


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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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学ぶこと (太平洋mama)
2009-11-30 02:14:40
 学ぶことを心から熱望する子供や家族に日本が力になれて嬉しく思います。
 学ぶこと、学べることを感謝して日々過ごして欲しいと、我が子らにも日本の子供たちにも願うところですが、これがなかなか難しいとは困った時代です。
 度々お邪魔させて頂き、応援させて頂いております。
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