「マノ河同盟(Mano River Union)」という、西部劇にでも出てきそうな名前である。正真正銘の国際機関であり、歴史も長い。1973年に、リベリアとシエラレオネの2ヶ国の間で設立され、1980年にギニアが加わった。近隣国の間で、経済・貿易協力を進めることを目的とする。事務局は、シエラレオネの首都フリータウンに置かれている。名前は、ギニアに源流を発し、リベリアとシエラレオネとの3国の国境地域を流れる、マノ河に由来する。
1990年代のリベリア、シエラレオネ両国の内戦の危機により、この国際機関は事実上その機能を停止していた。それが内戦の終結とともに、2004年から復活することになった。紛争でぼろぼろになった経済の国々、貧困国が同病相憐れむ寄合いのように見えるかもしれないけれど、じつはこの3ヶ国は豊富な鉱物資源を擁している。森林資源も豊かに広がり、これらを近隣国どうしの経済協力により開発していこうという目的には、十分な合理性がある。そして、2008年4月には、コートジボワールも加盟し、4カ国の国際機関となった。
日本は、この「マノ河同盟」に着目し、内戦後の戦後復興の支援を決めた、おそらく最初の国である。西アフリカのこの地域において、平和への足取りを確実にするための「平和構築」の協力をするべきである。そういう考え方を、国連のコフィ・アナン事務総長(当時)が提言した。この提言に応じて、国連産業開発機関(UNIDO)が、マノ河同盟と共同した、「若年層を対象とした緊急雇用創出計画」を組み上げた。何より、若者たちに職を与えないと、平和の経済に移行しない。そのための雇用創出を行おう、というものである。
日本は、このUNIDOの計画に賛同し、ちょうど「アフリカ開発会議(TICAD)」の横浜開催直前であったこともあり、2007年に5百万ドルの資金を提供することを決めた。この資金は、リベリア、シエラレオネ、ギニア、コートジボワールの4ヶ国に対して割り振られ、現在、若者の研修、事業立ち上げへの便宜、融資促進、起業家支援、雇用市場情報の提供、などが各国それぞれにて進められている(2008年案件開始)。日本はこうして、マノ河同盟諸国が必要とする復興支援に、積極的に取り組む姿勢を見せることになった。そのおかげで、日本は大変感謝されている。
だから、コートジボワールが主催して、マノ河同盟の投資促進会議を行うということになると、日本の代表として出席して欲しい、という案内が来るのである。日本は、平和構築の協力に意欲があるのはもちろんであるけれど、この国々が持つ潜在性、特に鉱物資源などへの関心がある。だから、このようにマノ河同盟加盟国地域の経済人たちが集まる会合に、日本大使として出席しておく意義がある。日本が、この地域への貿易・投資・開発に参加する可能性があることを、印象づける必要がある。
10月25-27日にヤムスクロで開催された、この「マノ河同盟・投資促進会議」は、4ヶ国のビジネスマンたちを集めて、対外資本を呼び込むためにどういう方策があるか、貿易促進のために4ヶ国で協力できることは何か、といった議論を行った。私は、そこに外交団からの唯一の代表者として出席した。
そこで驚いた。あの内戦に苦しんだはずのリベリアのビジネスマンたちが、実に活発で意欲的である。綺麗な色刷りの「対リベリア投資ガイド」と題された案内書を持ってきて、皆に配っている。対リベリア投資促進の専門誌まで発行して、それも説明しながら配っている。リベリアの案内書には、ジョンソン=サーリーフ大統領が献辞を書いていて、リベリアは積極的に外国投資を誘致します、政府は安全かつ透明性のある投資環境を、全力で確保します、と書いてある。「リベリアはビジネスを歓迎します。ぜひリベリアに来て、国の再建に助力ください。」と、大統領は結んでいる。
会議にリベリア代表団長で参加した、トルバート投資促進委員会委員長(故トルバート大統領の甥)が、演説で力説する。
「リベリアには、今開発への意欲が満ちています。もともと、金、ダイアモンド、鉄鉱石などの鉱物資源から、熱帯木材、天然ゴム、沿海の海産物など、高い潜在性のある資源が豊富にあります。もちろん、リベリア政府は、この国が紛争の傷を負っているということを、否定はしません。しかし同時に、投資促進委員会は、外国の投資家たちにとって信頼性こそが最重要であることを、良く理解しています。」
昼食の時に、トルバート委員長と席が隣同士になった。私は、リベリアのビジネス関係者が、とても活発なことに驚いた、と述べる。
「そうですね。リベリアは開発に取り残されてきたからこそ、手を付ければ大きく伸びるところが、たくさんあると思うのです。たとえば、熱帯林など、他の国では開発が進んだために、今や西アフリカ全体で残された森林のうち、43%がリベリアにあるのです。沿海部の漁業資源も、まったく手付かずで残っています。探査が全く行われていないから分かっていないだけで、おそらく石油も沿岸部にあるはずです。」
トルバート委員長は、意気軒昂である。
「それに、リベリアは、世界標準をすでに実現しています。まず、時刻はグリニッジ標準時です。」
まあ、それはあまりビジネスに影響なさそうだ。
「それから、公用語は英語です。」
リベリアは、もともと米国からの解放奴隷が建てた国なので、英語が普及している。たしかに、英語であれば日本のビジネスマンなども相手にしやすい。西アフリカ地域で、どうしても日本とのビジネスの足かせになるのが、フランス語である。
そして、とトルバート委員長は、とっておきの秘密を漏らすかのように言った。
「国内通貨が、米ドルなんですよ。だから、取引の為替リスクが、米ドルとの関係でゼロです。」
なるほど、これはリベリアの強みかもしれない。リベリアは、邦貨リベリア・ドルに加えて、米ドルも国内通貨と認めている。仏語圏西アフリカのCFAフランも、ユーロに固定されているとはいえ、実際にユーロに交換するには、かなりの手数料がかかる。
ともあれ、世界標準というならば、政権が安定し、制度が機能し、法秩序が確立するという意味で、標準を達成することが何より大事である。そして汚職などのない、公正と透明性が確保された商慣行があれば、投資は自ずから集まってくる。
「日本からの投資に期待します。関心のある日本企業があれば、私自身がお世話しますから、ぜひ手を挙げて下さい。」
と、トルバート委員長は言っていたから、ご関心のある向きはご連絡を。リベリアの新しい時代の経済発展に、大いに期待したい。
1990年代のリベリア、シエラレオネ両国の内戦の危機により、この国際機関は事実上その機能を停止していた。それが内戦の終結とともに、2004年から復活することになった。紛争でぼろぼろになった経済の国々、貧困国が同病相憐れむ寄合いのように見えるかもしれないけれど、じつはこの3ヶ国は豊富な鉱物資源を擁している。森林資源も豊かに広がり、これらを近隣国どうしの経済協力により開発していこうという目的には、十分な合理性がある。そして、2008年4月には、コートジボワールも加盟し、4カ国の国際機関となった。
日本は、この「マノ河同盟」に着目し、内戦後の戦後復興の支援を決めた、おそらく最初の国である。西アフリカのこの地域において、平和への足取りを確実にするための「平和構築」の協力をするべきである。そういう考え方を、国連のコフィ・アナン事務総長(当時)が提言した。この提言に応じて、国連産業開発機関(UNIDO)が、マノ河同盟と共同した、「若年層を対象とした緊急雇用創出計画」を組み上げた。何より、若者たちに職を与えないと、平和の経済に移行しない。そのための雇用創出を行おう、というものである。
日本は、このUNIDOの計画に賛同し、ちょうど「アフリカ開発会議(TICAD)」の横浜開催直前であったこともあり、2007年に5百万ドルの資金を提供することを決めた。この資金は、リベリア、シエラレオネ、ギニア、コートジボワールの4ヶ国に対して割り振られ、現在、若者の研修、事業立ち上げへの便宜、融資促進、起業家支援、雇用市場情報の提供、などが各国それぞれにて進められている(2008年案件開始)。日本はこうして、マノ河同盟諸国が必要とする復興支援に、積極的に取り組む姿勢を見せることになった。そのおかげで、日本は大変感謝されている。
だから、コートジボワールが主催して、マノ河同盟の投資促進会議を行うということになると、日本の代表として出席して欲しい、という案内が来るのである。日本は、平和構築の協力に意欲があるのはもちろんであるけれど、この国々が持つ潜在性、特に鉱物資源などへの関心がある。だから、このようにマノ河同盟加盟国地域の経済人たちが集まる会合に、日本大使として出席しておく意義がある。日本が、この地域への貿易・投資・開発に参加する可能性があることを、印象づける必要がある。
10月25-27日にヤムスクロで開催された、この「マノ河同盟・投資促進会議」は、4ヶ国のビジネスマンたちを集めて、対外資本を呼び込むためにどういう方策があるか、貿易促進のために4ヶ国で協力できることは何か、といった議論を行った。私は、そこに外交団からの唯一の代表者として出席した。
そこで驚いた。あの内戦に苦しんだはずのリベリアのビジネスマンたちが、実に活発で意欲的である。綺麗な色刷りの「対リベリア投資ガイド」と題された案内書を持ってきて、皆に配っている。対リベリア投資促進の専門誌まで発行して、それも説明しながら配っている。リベリアの案内書には、ジョンソン=サーリーフ大統領が献辞を書いていて、リベリアは積極的に外国投資を誘致します、政府は安全かつ透明性のある投資環境を、全力で確保します、と書いてある。「リベリアはビジネスを歓迎します。ぜひリベリアに来て、国の再建に助力ください。」と、大統領は結んでいる。
会議にリベリア代表団長で参加した、トルバート投資促進委員会委員長(故トルバート大統領の甥)が、演説で力説する。
「リベリアには、今開発への意欲が満ちています。もともと、金、ダイアモンド、鉄鉱石などの鉱物資源から、熱帯木材、天然ゴム、沿海の海産物など、高い潜在性のある資源が豊富にあります。もちろん、リベリア政府は、この国が紛争の傷を負っているということを、否定はしません。しかし同時に、投資促進委員会は、外国の投資家たちにとって信頼性こそが最重要であることを、良く理解しています。」
昼食の時に、トルバート委員長と席が隣同士になった。私は、リベリアのビジネス関係者が、とても活発なことに驚いた、と述べる。
「そうですね。リベリアは開発に取り残されてきたからこそ、手を付ければ大きく伸びるところが、たくさんあると思うのです。たとえば、熱帯林など、他の国では開発が進んだために、今や西アフリカ全体で残された森林のうち、43%がリベリアにあるのです。沿海部の漁業資源も、まったく手付かずで残っています。探査が全く行われていないから分かっていないだけで、おそらく石油も沿岸部にあるはずです。」
トルバート委員長は、意気軒昂である。
「それに、リベリアは、世界標準をすでに実現しています。まず、時刻はグリニッジ標準時です。」
まあ、それはあまりビジネスに影響なさそうだ。
「それから、公用語は英語です。」
リベリアは、もともと米国からの解放奴隷が建てた国なので、英語が普及している。たしかに、英語であれば日本のビジネスマンなども相手にしやすい。西アフリカ地域で、どうしても日本とのビジネスの足かせになるのが、フランス語である。
そして、とトルバート委員長は、とっておきの秘密を漏らすかのように言った。
「国内通貨が、米ドルなんですよ。だから、取引の為替リスクが、米ドルとの関係でゼロです。」
なるほど、これはリベリアの強みかもしれない。リベリアは、邦貨リベリア・ドルに加えて、米ドルも国内通貨と認めている。仏語圏西アフリカのCFAフランも、ユーロに固定されているとはいえ、実際にユーロに交換するには、かなりの手数料がかかる。
ともあれ、世界標準というならば、政権が安定し、制度が機能し、法秩序が確立するという意味で、標準を達成することが何より大事である。そして汚職などのない、公正と透明性が確保された商慣行があれば、投資は自ずから集まってくる。
「日本からの投資に期待します。関心のある日本企業があれば、私自身がお世話しますから、ぜひ手を挙げて下さい。」
と、トルバート委員長は言っていたから、ご関心のある向きはご連絡を。リベリアの新しい時代の経済発展に、大いに期待したい。
明るい未来はあるとおもいます(@^-^@)
現在大学の先輩がフランスの会社のインターンシップの一環でコートジボワールに在住しているので気になってコメントをつけてみました。
これから西アフリカについても知識をつけていきたいです。