Post

Conversation

第一回 【静かな“リング”ー菅野完氏対立花孝志氏・被告代理人は福永活也弁護士ー第一ラウンド】 8月4日10:00 損害賠償請求事件 原告 菅野完 被告 立花孝志 令和7年ワ略 806 号法廷 民事32部 午前10時。東京地裁806号法廷。建物の外は灼熱が始まっている。エアコンが効いた法廷内は約70席が並ぶ傍聴席。この種の裁判ではおなじみの「いつメン」が気持ちぐったりしている(お疲れ様) 午前10時3分、裁判体3名が入廷、原告代理人である弁護士が、一人で原告席。被告本人と、その代理人である福永活也弁護士の姿はない。しかし、彼らの「存在」は、すでに書面となってこの法廷に提出済。 「原告は訴状陳述でいいですか」 「はい」 原告代理人が短く応じる。 続いて、 「被告からは答弁書が出ています」 通常、第一回の口頭弁論期日では、被告側は「請求の棄却を求める。認否や反論は追って主張する」といった擬制陳述のみ。実質的な審理は次回以降に持ち越す。しかし、本件の被告代理人を務める福永活也弁護士はすでに原告の請求原因二つに対し、具体的な反論を記した答弁書を提出済みのようである。 この対応を受け、裁判長は原告代理人にボール。 「まずは原告からの反論をお願いします」 戦いのゴングは、静かに、原告の近くで鳴り響いた。 書証の取り扱いについて、原告代理人が「USBについては原本として扱う」と述べる。証拠調べが次回以降のテーマとなることが確認される。裁判官は、原告の反論、それに対する被告の再反論という、今後の進行計画の骨子を淡々と述べた。 陪席はすっと眼を動かす。表情はない。 「現時点で人証の計画はあるか?」 原告代理人は立ち上がる。迷いのない口調2を準備して述べた。 「人証の計画は全くなく、本件は書面で決着できると思っている」 証拠は揃っており、書面での主張立証だけで勝訴は揺るがないという強い自信を法廷で示す代理人。 裁判官は「何回も往復する事件ではないとは思っている。しかし、少なくとも原告の反論を受け、被告の反論を行う期日は行う」と、審理の見通しを追記。さらに、「できれば弁論準備手続に付したいが」と提案。 原告代理人は「はい」と短く同意。 左陪席の中堅が、裁判長に囁く。裁判長は小さく「ああそうか」と声。 内容は訴訟の法的構造を最終確認。 大前提として、原告は二段構えの法的戦略のようである。 第一の請求原因は事実の摘示による名誉毀損。 被告の発言が原告の社会的評価を低下させた、とするアプローチ。 第二の請求原因は事実摘示による名誉感情侵害。 一般論だがーたとえ発言内容が事実で、名誉毀損にはあたらないと判断されたとしても、その表現方法や言葉遣いが社会通念上許される限度を超えており、原告個人の自尊心やプライド(名誉感情)を著しく傷つけた等の主張。いわゆる予備的な請求。原告はどちらかの網で引っ掛けようとしている。 整理を受け、裁判長は、この二つの請求の性質を被告代理人(福永弁護士)に正確に伝える必要があると述べた。 最後は次回期日の日程調整。 裁判官が反論書面の提出期限を尋ねる。原告代理人は再び立ち上がる。口調は、先ほどまでの自信に満ちたトーンとは少し異なる。内情を吐露するもの。 「現在、福永弁護士から(本件主語を言い直した後)、N国関係で大量の訴訟を受けていて、訴訟対応に追われている。」 「そうなのですか」と陪席裁判官が軽い相槌(他人事)。 プロとしての顔に切り替えて続ける。 「本件は中身の反論自体は難しくないが、名誉感情侵害にかかる反論は会見の文字起こしをする必要がある。」 勝訴は当然だというトーン。同時に実務的な作業時間を要することを伝える。陳述を受け、裁判官は秋の期日を提案。原告代理人による反論書面の提出期限は9月24日、次回期日は9月30日午後3時から、ウェブ会議を利用した弁準として実施。 「大丈夫です」と原告代理人。午前10時15分。入廷から10分余。初のラウンドは法廷で裏の神経戦が垣間見えた。外に出れば、真夏。次の地へ息を止めてワープしたい。
Image