【独自】取手生徒自殺 報告書掲載、茨城県を提訴 担任教諭 処分取り消し判決後も
2015年に茨城県取手市立中3年の女子生徒が自殺した問題で、当時担任だった女性教諭の懲戒処分を取り消しとした一審判決後も県が調査報告書をホームページに掲載し続けたとして、教諭が県に謝罪文を求め、水戸地裁に提訴したことが31日、分かった。提訴は7月14日付。精神的損害の賠償として150万円も請求する。
訴状によると、15年11月、教諭が勤務していた同市立中学校で担任だった3年の女子生徒が自殺。県教委の調査委員会は19年3月、生徒はいじめを原因に自殺し、「教諭がいじめ行為を誘発、助長した」などとする調査報告書を公表し、県ホームページにも掲載した。県教委は同7月、報告書を基に教諭を停職1カ月の懲戒処分とした。
これに対し22年3月、教諭は処分の取り消しを求め、県を相手に水戸地裁に提訴。同地裁は24年1月に教諭の訴えを認め、処分の取り消しを命じた。県は控訴したが、二審東京高裁も同10月に一審判決を支持し、県の敗訴が確定した。
教諭は一審判決後、県にホームページから調査報告書の削除を求めたが、二審判決後の同11月8日ごろまで掲載され続けた。教諭は「調査報告書の記載の真偽を確かめることなく漫然と県ホームページに掲載し、社会的評価が著しく低下し、多数の人格攻撃、誹謗(ひぼう)中傷を受けた」と指摘。県が削除したことについて「調査報告書の記載に事実に反する部分が含まれていることを自認したものと言うべき」と主張した。
名誉回復のため、県に対し、謝罪文を県ホームページで300日間掲載し、精神的損害として150万円の支払いも求めた。
茨城新聞の取材に対し、教諭は「県に裁判の結果を真摯(しんし)に受け止めてほしい。誤った行政判断をして個人に懲戒処分を科したり、誤っていることが判明した後でもそれを認めなかったりするような対応を、二度と繰り返してほしくない」とコメントした。教諭は問題後、研修を受けて今年4月に学校現場に本格復帰した。
県教委は「訴状が届いていないので、答えられない」としている。