ところがそれは無理です。
その理由は、18条の文言自体が「犯罪に因る処罰の場合を除いては」と明示的に例外を限定していること。加えて、個々の条文の解釈にも法体系全体との整合性が必要であるところ、戦争放棄と戦力不保持を定め軍備に関する規定も持たない現行憲法下では、徴兵制が「意に反する苦役」にあたらないという解釈は無理があること。
ところで、思考実験として、仮に18条に「犯罪に因る処罰の場合を除いては」という文言がなかったとしても、懲役刑を合憲と解することは可能だし、おそらく判例・通説もそのように解釈したでしょう。なぜならば、憲法31条が、法律の定める手続によって「自由を奪はれ」ることを予定しており、懲役刑は憲法自身が予定する例外であると解し得るからです。(ただし、労役義務のない禁固刑しか認められないという反対説が出てくる余地はある)
他方で、現行憲法には徴兵制を予定しているとか許容しているとか読める規定はどこにもないし、そればかりか、戦争を放棄し戦力を保持しないとさえ書いてある。徴兵は普通に考えて懲役と同程度以上の強制労働なのに、例外的にOKと解釈できる要素が憲法のどこにもない。だから徴兵制は「意に反する苦役」にあたると異論なく認められているし、改憲なしに18条の政府解釈だけを変更して、法律で徴兵制を導入することは無理。これが法律家のコンセンサスです。
逆に言うと、改憲して徴兵制を導入すれば、18条の「意に反する苦役」の禁止の部分は改正しなくても、憲法自身が認める例外だからOKという理路で合憲、という解釈が可能になる余地があるということです。
それに、そもそも、改憲するなら18条を改正してしまうことだってあり得ます。憲法の中には改正できない条項があるという改正限界説が通説ではあり、その中で、意に反する苦役の禁止が改正限界に触れるという説も有力ですが、ここは通説とまでは言えませんし、そもそも国会と国民投票で改正が強行されてしまえば、そのような学説など無力です。また、言うまでもなく、改正無限界説及び限界説の中でも「意に反する苦役」の禁止が改正限界に触れないという立場からは、当然に改正可能です。
このように、
① 改憲すれば18条の解釈変更の余地も出てくる
② 18条自体の改憲も可能(学説上は争いがあるが、ぶっちゃけ改正されてしまえばどうしようもない)
③ 改憲しない限り、徴兵制が「意に反する苦役」にあたらないという解釈は成り立たない
なので、徴兵制が(政治的に困難だろうというならともかく)「絶対に無理」というのも誤りだし、逆に18条の解釈変更だけでできるというのも誤りです。
Quote
あ〜る菊池誠(反緊縮)公式
@kikumaco
そうだとすれば、改憲しなくても徴兵制は実現できるんですよ。18条の解釈変更でいい x.com/lawkus/status/…