強盗殺人事件の現場。容疑者の寮(左)から被害者宅(右奥)まで50メートルほどしか離れていない=伊万里市東山代町

 伊万里市東山代町の住宅で母娘が死傷した強盗殺人事件は、2日で発生から1週間が経過した。逮捕されたベトナム国籍の技能実習生は、現場から50メートルほどの距離の寮に住み、同じ住宅街で暮らしていた。現場は普段は高齢女性の1人暮らしだった。在留外国人が増え続ける中で、地域を震撼(しんかん)させた凶行。佐賀県警はこの住宅を狙った経緯や動機の解明を進めている。

 「数年前に『物騒だから』とインターホンをカメラ付きに変えたばかりと聞いた。知らない人なら出ていなければ…」。親類の男性は悔しさをにじませた。玄関のモニターを通じて記録されていた男の画像などからダム・ズイ・カン容疑者(24)が浮上し、県警は逮捕した。

 容疑者は2023年12月に来日。伊万里市内の食品加工工場に勤務し、鶏肉の解体作業を担当していた。ベトナム出身の同僚7人と、現場近くの一軒家の寮で共同生活を送っていた。

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 近隣住民は、容疑者とみられる実習生が熱心に野菜を育てている様子を目にしていた。「最初のころはよくあいさつを返してくれたが、最近は返してくれなくなった」という。別の住民は「実習先や寮関係者からあいさつもなく、いつから住んでいるのか知らなかった。地域交流があれば、こんな事件は起こらなかったかも」と吐露した。

 実習先の会社によると、容疑者は勤務態度は真面目でトラブルはなく、給料に対する不満なども確認されていない。事件当日の26日は休みだったが、出勤要請に応じて午前中に勤務していた。変わった様子は確認されなかったという。受け入れを仲介した監理団体の担当者は「おとなしく内向的で、地域との交流の機会があっても参加していなかったようだ」としつつ、「どうして事件を起こしたのか、見当がつかない」と話す。

 殺害された女性(40)は中国江西省の景徳鎮陶磁大学で日本語学校の講師をしていた。交流のあった人形作家の清水真理さん(東京)によると、中国に関して生活で得た知識が豊富で、学生から慕われていたという。清水さんは「中国人から愛されていた。『秋にまた会いましょう』と約束していたのに…。信じたくない」と声を震わせた。

 現場の住宅は70代の母親が1人暮らしをしていて、女性は大学の夏休みに合わせて帰省中だった。事件は26日午後4時20分ごろ発生。インターホンが鳴って母親が玄関を開けると男が侵入し、刃物を示して現金を要求した。椋本さんが現金を渡した後で切り付けられ、殺害された。母親も首付近などを切られて負傷した。

 翌27日に椋本さんに対する強盗殺人と住居侵入の容疑で県警に逮捕された容疑者は「何も話したくない」と供述した。寮からは血の付いたナイフ1本を押収しており、計画性の有無なども調べている。母親に対する強盗殺人未遂容疑での立件も視野に捜査を進めている。(取材班)