岐阜市の新大学 「まち」が学生を育めば
2025年8月2日 05時05分 (8月2日 05時05分更新)
岐阜市は、「岐女短(ぎじょたん)」の愛称で知られる市立女子短大を2033年度をめどに、男女共学の四年制大学へ移行させる構想を進めている。短大は20年度から定員割れが続いており、あり方を根本から見直すことは理解できる。自治体の強みを生かした地域密着の大学づくりを期待したい。
岐阜県には私立のほか、岐阜大など国公立大も4校あるが、大学進学者の8割ほどが県外を選ぶという。就職時のUターン率は3割にとどまるとの調査結果もある。企業などで人材不足が深刻化しているだけに、新たな公立四大が誕生するインパクトは大きい。
1946年創立の岐女短には国際コミュニケーション学科やデザイン環境学科などがあり、約300人が在籍中。市が今年3月に示した基本計画の素案によると、新大学ではビジネスやまちづくりを学ぶ「社会共創学部」、デザインや情報技術の「デザイン情報科学部」(いずれも仮称)を設ける。
こうした社会科学系と理工系の学部の定員は県内では比較的少なく、市は潜在的なニーズがあると見込む。学生総数は800人。全学共通でデータサイエンスや起業家精神を学び、卒業後の進路はビジネスマンや行政職員、デザイナーなどをイメージしている。
市立大ならではと感じるのが、「まち」をキャンパスとして、課題と向き合って学ぶという教育理念だ。校舎の場所は市中心部などを検討しているが、学生がそこに閉じこもらずに地域に出て、企業の仕事を体験したり、街でイベントを企画したりといった実践教育に重きを置くという。
県内では既に東海学院大(各務原市)の学生が、ご当地食材をPRする弁当をスーパーと共同で開発▽岐阜女子大(岐阜市)の学生が老朽化した公営住宅のリノベーションに取り組む-といった先例もあり、新大学も参考にできるのではないか。
学生が「まち」で学び、地域への愛着を育めば、人材定着にもつながるはずだ。そのためには、市民や企業の理解と協力が欠かせない。市は新大学の理念を丁寧に説明し、機運を高めてほしい。
少子化による受験者数の減少により、大学の生き残り競争は年々激しさを増している。学生に選ばれる大学づくりの成否は、「そこでしか学べない」という価値を示せるかどうかにかかっている。
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