健康

2024.12.16 09:15

まずは富裕層向け。銀座から世界一を目指す「長寿クリニック」

「THE HUNDRED ロンジェビティハウス」は銀座駅から徒歩2分のビルの5フロアで展開。写真は会員向けのVIPフロア

そうした治療の領域から、予防医療の領域へ。ことの始まりは、23年春。再生医療のクリニックを構想していた井上が、知人を介して出会った澤に“培養上清液”について尋ねたという。「直感というか、嗅覚が鋭い人だなと思いましたよ」と澤は振り返る。
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「我々の目的はiPS細胞由来心筋細胞シートの製造ですが、その過程で得られる培養上清液に分泌される活性成分をを検証した結果、かなり高い細胞の活性があることが確認できたのです」

これをもともとの知人であり、この領域の専門である日比野にシェアすると、それに非常に価値のあることがわかり、澤、井上、日比野という二人三脚でプロジェクトが動き出した。
(左から)THE HUNDRED CTO 澤芳樹、THE HUNDRED統括院長 日比野佐和子、ソルトグループ代表の井上盛夫

(左から)THE HUNDRED CTO 澤芳樹、THE HUNDRED統括院長 日比野佐和子、ソルトグループ代表の井上盛夫

5F、6Fのクリニックでは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞研究の知見を強みとして、長期的な健康管理をサポートしていくという。

また、体を構成する細胞は37兆~60兆個あるが、それらがどう動いて、どう統合されるかなどはまだまだ解明されていない。THE HUNDREDクリニックと連携しながらデータをとっていくことで、澤は「予防医学や未病をサイエンスとして解明していけるのではないか」とも考えている。

再生医療だけ、西洋医学だけでなく

では、アーユルヴェーダや発酵料理まで取り入れているのはなぜか。
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「お金があっても健康でなければ」というのは富裕層の悩みで、健康への投資を惜しまない彼ら/彼女ら向けに、食事や運動といった生活習慣指導から検診、治療までをカバーするクリニックが誕生している。しかし、先端医療とアーユルヴェーダ(伝統医学)や発酵料理(医食同源)を融合させているのは世界的に見ても稀であると日比野はいう。
ネパール出身の医師資格を持つ専門家が常駐し、個別カウンセリングによる施術やセルフケアのアドバイスを行う

ネパール出身の医師資格を持つ専門家が常駐し、個別カウンセリングによる施術やセルフケアのアドバイスを行う


アーユルヴェーダに関しては、日本では特に“リラクゼーション”として認知されがちだが、実はインドやネパールでは西洋医学と同等に頼られる公的な医療。THE HUNDRED 8階のサロンでは、その医療資格を持つ専門家が常駐し、個別カウンセリングに基づく施術を行う。発酵料理に関しては、世界の食通も通う「徳山鮓」の徳山浩明が9階のレストラン「百薬」を監修をする。
次ページ > 目指すべき“長寿”とは

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経営・戦略

2024.12.03 14:15

ゲストを街に放つ 京都に誕生した富裕層向け「分散型ホテル」とは

高台寺と八坂神社の間に位置する一棟貸し切りのホテル「HOTEL VMG VILLA KYOTO」

高台寺と八坂神社の間に位置する一棟貸し切りのホテル「HOTEL VMG VILLA KYOTO」

日本には歴史ある伝統建築が多くあるが、細かい修理などで、毎年相当の維持費がかかるという。受け継ぐにあたっては相続税なども加わるため、やむなく手放したり、周囲に惜しまれつつも取り壊したり、というケースも少なくない。

そうした名建築をオーナーとともに修復し、現代に蘇らせているのが、文化の継承や地域経済の活性化に取り組むバリューマネジメントだ。現在、日本全国に12のホテルと、「ユニークベニュー」と呼ぶ結婚式場やレストランなどの10の建物をもつ。GINZA SIX内にある1カ所を除き、すべてが歴史的な建造物となっている。

同社が力を入れているのが「分散型ホテル」というスタイル。もともとあった文化財や歴史的建造物などを修復・再生し、客室、レストランなどの機能を街に分散配置することで、周辺一帯を一つのホテルとして見立てるというものだ。

大型ホテルを建築する敷地がない京都のような場所にも、スモールラグジュアリーなホテルをつくれるアプローチであり、あえて「ホテル内で完結させない」でゲストを街に導くことは、他の場所では感じられない「その土地らしさ」を感じたいという旅慣れた富裕層旅行客のニーズにもマッチする。

京都・東山で料理旅館だった建物を改修、3つの客室をとラウンジを設けた「HOTEL VMG RESORT KYOTO」

京都・東山で料理旅館だった建物を改修、3つの客室をとラウンジを設けた「HOTEL VMG RESORT KYOTO」

11月15日、バリューマネジメント京都の6つ目の施設として、東山八坂の高台寺のそばに「HOTEL VMG VILLA KYOTO(ホテル・ヴイエムジー・ヴィラ・京都)」がオープンした。

今から約120年前、遠州流の茶人、鵜野吾一が茶会を催すためにつくった私邸を、最大8人が宿泊可能な一棟貸切のホテルに改装。本格的な茶室や大正ガラスをはめ込んだリビングの広い窓からは近くの寺院や見事な紅葉が眺められる。低めのベッドを配した寝室が4室、浴室が2つあり、家族や友人とのステイにも向いている。
次ページ > 「文化のデザイン」ともいうべき過程

取材・文=仲山今日子

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ラグジュアリーにおける「わかりやすさ」と「複雑性」とは

大阪府和泉市に拠点を置く堀田カーペットの工場

大阪府和泉市に拠点を置く堀田カーペットの工場

「外国人が欲しがる日本のラグジュアリーとは」
「日本が育んだ本物とは」
「世界で評価される日本的要素とは」

これらが今、「日本 ラグジュアリー」と検索すると上位に表示されるヘッドラインです。多くの団体やメディアが、外国人が何を日本らしさとして期待しているのかを語り、それを戦略的に、相手が分かるようにプレゼンテーションしていく必要性を訴えています。

たしかに、異文化間のビジネスでは、相手の文脈に沿ったシンプルで明確なコミュニケーションが不可欠です。「自分のデザインを5歳児にも分かるように説明しなさい」とは、私自身がここ欧州で、耳が痛いほど教わってきたことでもあります。

常に生産的であるためには、表現の曖昧さや抽象性は、技術不足や配慮のなさと取られます。しかし、物差しに多様性がなく、円滑で摩擦が起きない安全地帯で、果たしてこれまでの枠組みを問うことはできるのでしょうか。

これからのラグジュアリーにとって、「わかりやすさ」は敵ではないか──。それを強く実感したのが、先月最終回を迎えた今シーズンの新ラグジュアリーの講座でした。

今回、参加者には、ゲスト講師のレクチャーや他の参加者とのディスカッションを重ねながら、2つのワークに取り組んでいただきました。1つは「各自の持つ素材(事業やアイデア)を欧州に発信する想定で深めること」。そしてもう1つは「そのためのコラボレーターを国外から3人ピックアップし、コンタクトすること」。

本記事では、参加者2人の最終発表の模様を紹介しながら、新ラグジュアリーにおける「わかりやすさ」との向き合い方について、考えてみたいと思います。

一眼で捉えられない複雑性

参加者の1人、堀田将矢さんは、大阪府和泉市に拠点を置く、1962年創業のカーペットメーカー「堀田カーペット」の3代目です。「カーペットを日本の文化にする!」をビジョンに掲げながら、カーペットのある暮らしの価値を普及する活動に取り組んでいます。


最終発表では、ご自身の考えるラグジュアリーを「『哲学』と『学び』の一貫性」と「『文化』と『デザイン』の複雑性」という言葉で表現していました。

「自分がこれまで魅了されてきたモノや場所を振り返ると、そこにはいつも、一眼で捉えられない複雑性があった。講座を経て、これがラグジュアリーではないかと思うようになった」

現在施工中の施設「CARPETLIFE BASE」

そう語る堀田さんは、現在施工中の施設「CARPETLIFE BASE」で、この“複雑性”を表現していくといいます。
次ページ > 複雑を「複雑なまま」受けとめる

文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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ポストラグジュアリー -360度の風景-

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