エルデの王は迷宮で夢を見るか?


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作:一般通過あせんちゅ
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強者と弱者


感想で聞かれましたが、ミストちゃんはベル君が英雄になるのを見たいだけです
単純に英雄と呼ばれる存在を見たことがないから見てみたいという知的好奇心に突き動かされているだけです
ミストちゃんはオラリオの神様と同じ、知的好奇心を満たせればなんでもいいのです
ただ、ラニ様という自分の命よりも大事なものがあるだけです



「なんで……俺は消されるんだ?」

「君、私の勧誘以外にも最近は仕事を任せられているんじゃない? 情報漏洩の観点からいって簡単に消されそうだなって」

「……そんな、こと」

「心当たり、あるみたいだね」

 

 闇派閥の男、スコット・スキアーはミストの言葉を聞いて顔を青褪めていた。今まで雑用程度しか任されていなかったのに、急に仕事を割り振られたのは事実だった。しかも彼は24階層に存在する食料庫(パントリー)で悪巧みを続けているある集団との架け橋の役割をさせられている。その仕事もそろそろ終わりが近いこともあり、今から消される可能性はミストのでたらめではない。

 

 自分で納得して青褪めていくスコットを見ながら、ミストの意識は店の外に向いていた。闇商人、ネブラが店として使っているこの建物は、実際はただの廃屋でしかない。足が付かないように数多もの仮店舗を持っているネブラが用意した1つだが、ミストは既にその店の外から感じる気配に意識が向いていた。

 

(……ただの冒険者じゃない。まるで迷宮のモンスターのような気配、というか生命力?)

 

 近くにある生命力の力をルーンによって把握していたミストは、店の前にはダンジョンで出現するモンスターと似たような気配を感じ取っていた。これにはミストも首を傾げざるを得ない。自分のことは索敵があまり得意な方ではないと自覚しているミストだが、殺気や敵意には人一倍敏感である。故に、店の外にいるのであろう闇派閥の刺客に気が付ける。しかし、いくら治安の悪い迷宮都市オラリオと言えども、ダンジョンからモンスターが街に出てきたら大騒ぎになることは間違いない。つまり、店の外にいる敵は必然的にモンスターではないのだが、ミストの本能はその敵がモンスターであると囁くのだ。

 

「得体が知れない奴が外に、もういる。最悪この店の商人ごと消し飛ばすつもりだろう」

「私もですか……厄介なことに巻き込まれましたねぇ」

「後で頼みぐらいなら聞いてあげるから我慢してください」

「それなりの依頼をさせていただきますよ」

「いいね。商売根性に命をかける姿勢、嫌いじゃないよ」

 

 ネブラの言葉に対してにっこりと笑みを浮かべたミストは、そのままなにかの対策をする訳でもなく店の扉を開けた。同時に、数人の人影がミストへと向かって襲い掛かってくる。それぞれ顔を隠していたが、全員が明らかに店から出てきた人間を殺す為に動いてた。

 

「ほい」

 

 最初にミストへと刃を向けた相手を適当に片手でいなし、奥からやってきた敵に向かってミストはヒビ壺を投げた。暗闇の中、正確に何を投げられたのかを視認できなかった暗殺者は、ヒビ壺を手に持っていた刃で叩き割る。元々ひび割れている壺のため、少しでも攻撃を加えれば簡単に割れてしまうが、その衝撃は中に入っていた火炎石が反応するには充分だった。

 

「おー……思ったより……」

 

 呆気なく身体の上半身を吹き飛ばされて死んだ仲間を見て、ミストを囲うように展開していた暗殺者たちの間に動揺が走った。その隙を見逃さず、ミストは再びヒビ壺を敵に向かって投げつける。先ほどの光景が頭にこびりついていた敵は、大袈裟にヒビ壺を避けて距離を取った。

 

「誰が差し向けた暗殺者なのか聞きたいところだが……2人いれば情報は聞き出せるか?」

「拷問用のアイテムも存在しますからね。2人で充分ですよ」

 

 大袈裟にヒビ壺を避けた暗殺者は、背後から近寄っていたミストによって急所を貫かれ、既に絶命していた。避けたヒビ壺には何も入っておらず、ただ避けさせるためだけに投擲した空き壺である。

 ミストが手に持っている短剣は『慈悲の短剣』と呼ばれる武器である。白衣の従軍医師が用いる短剣であり、人体に致命的な損傷を与えることに優れていた。戦場における慈悲とは、即ち介錯のことである。

 

 簡単に殺せると思い込んでいた暗殺者たちは、一瞬にして2人を殺されたことで暗殺の機を逸していることを察していた。依頼が失敗という形で終わってしまえば、暗殺者という存在は生かしてもらえるのかすらも危うくなってしまう職業である。故に、暗殺者たちに残された選択肢は、このまま逃げ帰って処理されるか、怪物の前で自害して情報を渡さないかである。そして、ミストを襲った敵は練達の暗殺者たちであった。素早く自らの武器で首を貫き、そのまま横に掻っ捌いて自害する様をミストはつまらなさそうに見ていた。

 

「……くだらん矜持だ」

「おや? 潔さを認めると思っていましたが、違いましたか?」

 

 自害した暗殺者の頭を足蹴にしながら、ミストは失望の言葉を呟いた。闇商人として色々な人間を見てきたネブラは、戦士であるのならばミストも潔さを褒めるぐらいはするのだろうと思っていたが、彼女の持っていた感情は明らかな失望だった。

 

「私は強者が好きだ」

「自らの死によって情報を相手に与えないことは強者ではない、と?」

「そんな複雑な話じゃない。生きてるやつが強者で、死んだやつは弱者だ……それ以外は存在しない」

 

 狭間の地で何回も死にながら戦い続けたが故の、ミストが持つ持論。極端に生に縋りついた者が苦し紛れに吐くようなセリフを、強者であるミストが口にする可笑しさに、ネブラとスコットは反応できなかった。

 

「無様でも這いつくばっても、諦めずに立ち上がり続けた奴が強者で、自らに諦めを見つけて座り込んで死んだやつが弱者。わかりやすくていいだろう」

「諦めない者が強者、ですか。成程、とてもいい持論だと思いますよ」

「心にもないことを……」

 

 胡散臭い笑みを浮かべたまま頷く闇商人に対して、ミストは呆れたような溜息を吐いた。

 

 


 

 

『取リ逃ガシタカ』

 

 暗殺者たちの死体を眺めながら、ローブを纏った影は静かにミストが歩いて行った方向へと視線を向けた。ミストが助けたスコット・スキアーという男は、24階層の食料庫で行われている悪事の目的を知らなくとも、その詳細を知っている。消せる時に消しておけとの命令を受けていたが、まさか保護する者が現れるとは思いもしなかった。

 

 一瞬だけ見せた戦闘能力だけで、既に他を圧倒する力を感じ取っていた仮面の人物は、自らに命令した上の存在にその力を報告する必要性を感じていた。

 

 都市に根付いた悪には、未だ誰も気が付かない。





50回死のうが100回死のうが、最終的に相手を殺せれば自分の勝ち
エルデンリングを攻略するのに最も必要な精神だと思います

レベル上げすれば一周目なんてなんとでもなりますけどね

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