エルデの王は迷宮で夢を見るか?


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作:一般通過あせんちゅ
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闘技場(コロシアム)


 白濁色の壁が聳え立つダンジョンで、武器を持つ骨とエルデの王は相対していた。死霊魔術によって動かされる骨を見慣れているミストは、特になにかを思うことなくオルドビスの大剣を振るう。骨の武器を持ってミストと相対するモンスター、スパルトイはその武器で大剣を防いだ。

 

「少しマシになってきたな……やっとまともに戦えそうだ」

 

 喜色満面の笑みを浮かべているミストに対し、オルドビスの大剣を武器で受けたスパルトイは恐怖に支配されていた。無造作に振るわれたオルドビスの大剣を受け止めたスパルトイが持つ骨の剣は、既に半ばから叩き折られている。つまり、もう一度その大剣を振るわれればスパルトイには生き残る術が存在しない。

 

『──ッ!?』

 

 苦し紛れに盾を構えたスパルトイは、その骨の盾もろとも両断された。灰となって消えていくスパルトイを尻目に、ミストは背後から近寄ってきていたリザードマン・エリートの攻撃を大盾で受けた。

 

『ゲギャァッ!?』

 

 攻撃を容易く弾かれたリザードマン・エリートにできた思考の空白時間に、ミストはオルドビスの大剣を突き出した。空白と言っても、1秒にも満たないほんの少しの動揺にしか過ぎない。だが、狭間の地で最強を証明したエルデの王にとっては、あまりにも大きすぎる隙だった。喉を貫かれて絶命したリザードマン・エリートを捨て、ミストは新たな獲物を求めて周囲に目を向けた。

 

「……まだまだいけそうだなッ!」

 

 ここは死線と呼ばれる深層の序盤、37階層白宮殿(ホワイトパレス)である。

 

 


 

 

「はぁ……」

 

 リザードマン・エリートとスパルトイの死体が山のように積み重なっている場所で、ミストは『城館のタワーシールド』を地面に置いた。彼女にとって37階層は死線(デッドライン)足りえなかったのだ。

 

 ミストは狭間の地に導かれる前、記憶も掠れてしまってよく思い出せない昔のことを考えていた。と言うのも、彼女は闘争本能が高まってくると、口調が荒々しく男のようなものに変わっていく。それは狭間の地に訪れる前まで男であったことが影響しているのか、ミスト本人にもわからない。

 

 死んだ記憶もないのに前世と呼ぶのも不思議な話だが、その前世では彼女は男であった。その記憶の弊害で闘争本能が高まると本性が飛び出してくるのとは別に、一つだけ彼女の得になっていることがあった。それは、同性であるはずのラニへの感情である。彼女はラニのことを心の底から敬愛しているが、それ以上に伴侶として恋愛対象として愛している。これは元々の性別からくる好みなのだろうと、勝手に自己完結していた。

 

 ダンジョン内でどうでもいいことを考えていたミストは、新たに生まれようとしているモンスターの音を聞き、城館のタワーシールドを拾った。

 

「確かこの先に……」

 

 ダンジョンの壁から生まれたスカル・シープは、ミストを認識した瞬間に世界が二つに割れた。オルドビスの大剣によってスカル・シープを両断したミストは、リザードマン・エリートとスパルトイの魔石を回収しながら、無限に戦える場所『闘技場(コロシアム)』へ歩を進めた。

 

 


 

 

 闘技場(コロシアム)は間隔なく一定数のモンスターが常に湧き続ける空間である。第一級冒険者でも決して足を踏み入れないと言われる場所であるが、ミストにとってはどうでもいい話であった。彼女にとってみれば、わざわざ獲物を探して歩く必要のない場所程度の認識である。

 

「……本当に沢山いるな」

 

 思わず感嘆の声を上げてしまうほどのモンスターの数に、ミストは少し呆れていた。

 冒険者が足を踏み入れるまでモンスター同士で戦い続けていると言われる闘技場に、一人の冒険者がやってきた。その存在にいち早く気が付いたスパルトイは、リザードマン・エリートに向けていた剣をすぐにミストへと向けて走り出した。

 

『ギィギャ!』

 

 スパルトイの剣を盾で受けたミストは、無造作にオルドビスの大剣を振るってその背骨を両断した。波状攻撃のようにスパルトイの後ろからやってきたリザードマン・エリートは、続くタワーシールドのシールドバッシュを受けて仰け反った所を大剣で叩き潰される。

 

 城館のタワーシールドとオルドビスの大剣を手から消したミストは、左手に竜餐の印を持つ。竜餐の祈祷を強化するその聖印によって放たれるものは、文字通り竜の心臓を食らって手に入れた絶大な力である。本能的に放たれる祈祷を脅威と感じたモンスターたちは一斉にミストに襲い掛かろうとして、空中で腐り果てた。

 

「腐り果てろモンスター」

 

 放たれた祈祷は『エグズキスの腐敗』である。朱き腐敗に侵されながらも、竜餐への憎悪を忘れなかった腐りゆくエグズキスの力を振るうミストは、モンスターよりもモンスターらしいと言える。

 朱き腐敗に侵されたモンスターたちはミストに近づく前に腐り果てて倒れていく。スカル・シープは身体を支え切れずに地に伏せ、リザードマン・エリートは鱗を溶かしながら倒れ伏し、ルー・ガルーはミストから逃げようと背を向けたまま動かなくなり、スパルトイは骨を腐らせて粉と消え、オブシディアン・ソルジャーは黒曜石の輝きを失わせる。

 

「まるでケイリッドのような地獄絵図だな」

 

 かつて朱き腐敗の女神によって腐らされた土地を思い出しながら、ミストは皮肉気に笑った。殺される度に数を合わせるように生み出されるモンスターたちは、しばらくその場にとどまり続けた朱き腐敗によって生み出された瞬間に腐り果てた。

 

 猛毒を持つペルーダが生み出された瞬間に、毒以上の腐敗によって死んでいく様を見ながら、ミストは魔石を回収するテマを考えて溜息を吐いた。

 




腐敗は延々とナーフされているイメージ


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