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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

再び日本映画祭

2009-11-04 | Weblog
ふたたび日本映画祭を開催した。また、たくさんのコートジボワールの人々に来て頂いた。今回の日本映画祭は、今年3月の初回に続いて、第二回目である。今回選んだのは、次の4本の映画である。3日目の土曜日は、2本立てにした。

10月29日:
「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)山崎貴監督。出演:吉岡秀隆、薬師丸ひろ子、小雪、堀北真希

10月30日:
「花よりもなほ」(2006年)是枝裕和監督。出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太

10月31日:
「あ、春」(1998年)相米慎二監督。出演:佐藤浩市、山崎努、斉藤由貴、富司純子
「スイングガールズ」(2004年)矢口史靖監督。出演:上野樹里、貫地谷しほり、竹中直人

さて、初日に私は挨拶をする。第一回目の日本映画祭が好評だったので、さっそく第二回を開催出来て、たいへん嬉しく思います。そう挨拶してから、初日の演目、「ALWAYS 三丁目の夕日」の説明を加える。この映画は、昭和30年代の東京の下町が舞台、集団就職で上京した女生徒、母親に見捨てられた子供、うだつの上がらない作家志望の男、零細町工場の修理工兼社長、そうした人々がひしめきあって生きていくさまを描く。

「皆さん、映画の中で、建設中の東京タワーが登場します。東京タワーは、1958年に完成しました。私の生まれた年です。」
おおっ、と何故だかわからないけれど、感嘆の声が上がる。
「この映画は、1950年代を描いています。この時代、まだ日本は貧しかった。敗戦からまだ間がなく、戦後復興の時期でした。誰もが、生きていくだけで必死でしたけれど、何とか豊かになろうと、一生懸命働きました。このように、ちょうど私の親の世代にあたる、この時代の人々が勤勉に働いたおかげで、今の豊かな日本があるのです。」
ちょっとお節介かとは思ったが、この映画が描く当時の日本が、今のコートジボワールの人々に、何か参考になればいいと思います、と付け加えた。

上映時間2時間で、映画が終わった。コートジボワール人の観客の皆さんが、目を潤ませている。人情話は、国籍を越えて、ちゃんと通じている。さて、映画の後のカクテルで、コートジボワールの人に感想を聞いた。皆、良かった、良かったと、喜んでくれている。どこが良かったのですか。

「ほら、初めてテレビが来て、町内みんなが集まって見る場面があるじゃないですか。あれ、全く同じことがありましたよ。初めて入ったからといって、村じゅうで集まったのです。こっちではラジオでしたけどね。」
なるほど、アフリカでも文明の進歩を、近所の皆で一緒に体験したのだ。

別の人が言う。
「自動車工の親父が、悪いことを言ったといって、女生徒にあやまるでしょう。そしたら、女生徒のほうも、いや私も悪かったとあやまって。この姿がいい。美しい。お互いに自分を反省しあって。とても感動しました。」

側にいる人が付け加えて。
「そうそう、親父は土下座していたよねえ。あれ、こっちでもするんです。ほんとうに悪かったと思ったら、こちらでも、体を地面につけて謝らなきゃいけないんですよ。ああ、日本もコートジボワールも同じだ、と思いました。」

傍らの女性。
「ほら、金持ちの実父に連れられて行った子供が、あのどうにも駄目な貧窮した男だけれど、育ててくれた男の方が大切だと言って帰ってくるでしょ。それで男は、帰ってくるな、と子供を追い返そうとするけれど、子供も男も最後は抱き合って。良かったねえ。やっぱり愛情が大切だと、子供には分るのですよね。お金じゃない。」
また、目を潤ませている。

日本にも貧しい時代があったんですね、貧しいながら、希望を持って勤勉に働いていたんですね、というような感想が出るかな、と期待していたのだが。けれど、それはちょっと薄っぺらい解釈だったかもしれない。それぞれの人が、それぞれの人生体験を下敷きにして映画を見て、なるほどそういう見方があるのか、と思えるような感想をくれた。何はともあれ、来てくれたお客さん、それぞれに何か感動を持って帰っていった。それが一番嬉しいことである。

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