エルデの王は迷宮で夢を見るか?


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作:一般通過あせんちゅ
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褪せ人


勢いで書いた

当方、続きなど全く思いついておりませんのでご了承を


「うわっ!?」

 

 彼にとってその出会いは唐突なものだった。【ヘスティア・ファミリア】に所属する唯一の眷属であるベル・クラネルは、ダンジョンの曲がり角の先に突っ立っていた存在に腰を抜かして尻餅をついた。ぶつかる直前に踏みとどまっていたため、当該の人物との接触はなかったが、主神からも認められる善性を持つ彼はすぐに相手に謝った。

 

「ご、ごめんなさい!」

「……貴公、神の気配を感じるぞ」

 

 銅色の全身装備の中から聞こえてきたくぐもった声に、ベル・クラネルは困惑した。神の気配と言われても、彼にはなんの心当たりもなかったが、彼の背中に刻まれた恩恵は、目の前の人物に反応して僅かな熱を発していた。

 

「いや、貴公は神の祝福を受けているのか……ならばなにも言うまい。貴公にも祝福が見えているのだろう?」

「しゅ、祝福?」

「言葉にする必要はない。貴公は英雄となるべき存在である……私の様にはなるな」

 

 ベル・クラネルにとってその言葉は殆ど理解できるものではなかった。しかし、最後の言葉が悲しみから生み出されているものなのは理解できた。それは天性の優しさから来るものなのかはわからなかったが、横を通り過ぎる騎士をただ見送ることしかできなかったベル・クラネルは、英雄となるべき存在という言葉だけが心のうちに渦巻いていた。

 その後、唐突にして突拍子もない出会いを経て悩みながら迷宮を歩くベル・クラネルは、風を纏う金色の少女と出会い、運命が加速していく。

 

 


 

 

「……威厳のある王様ロールプレイやめようかな」

「辞めておけ。身の丈以上の役割など背負う意味もあるまい」

 

 決して治安がいいとは言い切れない街、オラリオの路地裏に佇む銅色の騎士然とした()は、ため息と共に弱音を吐いた。独り言として呟いた言葉に反応したのは、虚空から現れた雪の様な魔女であった。

 

「私の王よ。以前にも言ったはずだ……お前に王の真似事は無理だ」

「……」

「そう恨みがましい目を向けるな。楽観主義で刹那主義であるお前に、王など勤まらない」

 

 雪の魔女『ラニ』の言葉を受けて、騎士は明らかに落ち込んでいた。伴侶であるはずの魔女にすらロールプレイを否定された彼女は、強大な力を持つはずの坩堝の騎士の姿のままいじけたようにその場に座り込んだ。最初の王、ゴッドフレイに仕え、原初の黄金樹が持つ生命の坩堝の力を宿した強力な騎士が着込む鎧を身に着けながら、力ない人間のように路地裏に座り込む姿に、ラニは呆れたようなため息を吐いた。

 

 ラニの目の前に座り込む坩堝の騎士オルドビス(のコスプレをした変人)は、狭間の地を駆け抜けたエルデの王である。ルーンを求めて彷徨う怪物、黄金樹の化身とも言える精霊、生物の枠を超えた力を持つ竜、力を振りかざすデミゴッド、同朋であるはずの狂った褪せ人、その全てを例外なく屠ったエルデの王は、ただ人だった。狂人と呼ぶには理性があり、強者と呼ぶには余裕がなく、武人と呼ぶには卑劣であり、騎士と呼ぶには志がなく、悪逆と呼ぶには純真である。故に、彼女は王と呼ぶにはあまりにも器が足りなかった。しかし、彼女と戦ったエルデの王は言った。力こそ王の故、と。ならばこそ、彼女は器でなくともエルデの王であり、冷たき律の時代を導く、魔女の伴侶なのだ。

 

「宿は探しておけ私の王よ……伴侶とのひと時が外では風情もなかろう」

「……探しとく」

 

 世界を敵に回しても守り抜くと決めた伴侶の言葉に頷きながら、エルデの王は立ち上がった。坩堝の鎧がルーンとして分解されて彼女の身体の内へと溶け込んでいくのと同時に、顔を隠すように黒き刃のマントを羽織った。粒子として消え行くラニは、その装束に微妙な表情を残していたが、何も言うことなく虚空へと消えていった。

 

「腹は減らないなぁ……エルデンリングもないから導きもないし……どうしよっかなぁ……」

 

 王と呼ぶにはあまりにも俗的な言葉を吐きながらオラリオの裏路地を進む彼女は、力ない足取りのまま闇の中へと消えていった。

 

 


 

 

 彼女は褪せ人と呼ぶには余りにもただ人だった。何故ならば、そもそも彼女は正確には褪せ人ではないのだから。褪せ人とは本来、破砕戦争前に瞳が褪せたと言われて狭間の地から追放された者たちであり、彼女が狭間の地を駆け巡っていた時にいた褪せ人はその子孫たちが基本である。しかし、彼女は追放された本人でもなければ、子孫でもない。彼女は全く違う世界から連れてこられた平和を享受していた()である。何故、褪せ人でもない彼が導きによって狭間の地を訪れたのかは誰も知らない。

 

 結果的に彼は彼女になって褪せ人として修羅の世界に放り込まれても、その地に溢れていた者たちを屠り続けた。褪せ人を導く二本指、その上に存在するとされる大いなる意志の求めた最高の人材と言えるだろう。欠点を上げるとすれば、惚れた女の為に大いなる意志すらも裏切って黄金の律を消し去ったことだけである。

 

 狭間の地を駆け抜け、幾度も訪れた死によって薄れてしまった平和な世界に生きていた記憶を思い起こしながらも、彼女は伴侶であるラニがゆっくりと休める場所を探してオラリオを歩き続けるのであった。




平和な世界→狭間の地(何故かTS)→オラリオ(伴侶付き)のあせんちゅ(なお、既に平和な世界の記憶など殆ど消し飛んだ模様)

(転生タグってやっぱり、いりますかね?)
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