さあ、いよいよ集めてきた絵の具で、絵を描くこととしよう。
まず、村の長たちから提供を受けた土地のうち、ギトリーの近くにあるバボコン(Babokon)村の周辺の、手近な湿地12ヘクタールを使うことにする。次に、日本の資金で、トラクターなどの農耕機械を購入し、稲作用地を整地する。日本の稲田と同じように、畦が付いて、水を管理できる水田を開発する。
婦人と若者たちの組合員100人ほどで、稲田を耕作し管理する。ここに「アフリカ稲センター」のディアタ博士ほかの稲作専門家に来てもらい、近代的・効率的な稲作技術の指導を受ける。ネリカ米などの、生産性の高い稲の品種を選ぶことにする。それだけでなく、耕作の方法、苗床の作り方、田植えの時期、雑草除去、肥料散布、病害虫への対策、などを教えてもらう。
日本の資金で、刈取り脱穀機、籾摺り機を購入する。これにより、収穫した米は、脱穀・乾燥など適切な商品化処理をされ、白米または籾米として袋詰めされる。これらの米は、独自に形成された販売網を通じて販売される。また、収穫した米のうち、バボコン村の小学校の給食用に、1ヶ月あたり2~3袋を割り当てる。最初の12ヘクタールでうまくいけば、徐々に各地の低湿地に拡大していく。最終的に、全部で350ヘクタールの稲田を作り上げる。
以上の構想がまとまった。収穫した米がちゃんと販売できて、その売り上げが事業を長く続けられるだけの収入を生むだろうか。綿密に計算を行った。米の売り先については、すでに販売会社からの引き合いを受けているくらいであるから、大丈夫である。売り上げの4分の1を、事業規模拡大のための農機具の追加投入費と、新規稲田の投資費用に充てる。そのための、収支計算ができている。決して皮算用ではない。
そこまで計画を詰めてから、「草の根無償資金協力」という制度に申請を出した。これは、開発途上国の地方公共団体や、教育・医療機関、NGOや組合などの団体が、現地において実施する比較的小規模な事業に対し、資金協力を行うものである。普通の援助案件だと、何度も事前調査を行ったりするので、実現まで数年かかったりするのだけれど、この「草の根無償資金協力」は、早ければ数ヶ月くらいで認可がおりるので、かなり機動的に対応できる。その代わり、それだけ大使館が責任をもって、しっかりと審査をして、実施を監督しなければならない。
ようやく東京の本省の承認が下りた。名称「生産性向上および女性自立支援による稲作農業開発計画」、資金総額4500万フラン(980万円)。10月13日、協力の合意文書の署名式典を、大使館の会議室で行った。
式典には、この夢を分かち合っている人々が、全員やってきた。まずもちろん「デオ・グラシアス」のメンバーである、若者たちや婦人たち。そして、ギトリ周辺の村から、土地を提供した村の長たちも、民族衣装で出席してくれた。「アフリカ稲センター」のディアタ博士も、わざわざブアケから来てくれた。そうした方々の前で、「デオ・グラシアス」を代表してアワさんが、日本政府を代表する私との間で、文書に署名を行った。
アワさんは言う。
「日本からの協力資金で、私たちの計画が動き出すのを知って、近隣の村々の女性たちがもう喜んで大騒ぎなのですよ。でも、その一方で全国から、どうしてバボコン村なのか、どうして自分の村や協同組合でないのか、「デオ・グラシアス」は運が良い、うまくやったもんだと、羨望と嫉妬ですよ。」
それは違う。私たちはたまたま「デオ・グラシアス」を選んだのでもなければ、選ばれた「デオ・グラシアス」は運が良かったというのでもない。この協同組合が、しっかりした夢を持って、しっかりした計画をたてて、しっかりと段階を踏んで実行に移してきた、ということなのだ。だからこそ、人は説得される。だからこそ、人は信頼する。そして、一緒に夢を分かち合おうとする。アワさんたちの夢と、多くの人々の期待がこもった計画が、いよいよ動き出す。
まず、村の長たちから提供を受けた土地のうち、ギトリーの近くにあるバボコン(Babokon)村の周辺の、手近な湿地12ヘクタールを使うことにする。次に、日本の資金で、トラクターなどの農耕機械を購入し、稲作用地を整地する。日本の稲田と同じように、畦が付いて、水を管理できる水田を開発する。
婦人と若者たちの組合員100人ほどで、稲田を耕作し管理する。ここに「アフリカ稲センター」のディアタ博士ほかの稲作専門家に来てもらい、近代的・効率的な稲作技術の指導を受ける。ネリカ米などの、生産性の高い稲の品種を選ぶことにする。それだけでなく、耕作の方法、苗床の作り方、田植えの時期、雑草除去、肥料散布、病害虫への対策、などを教えてもらう。
日本の資金で、刈取り脱穀機、籾摺り機を購入する。これにより、収穫した米は、脱穀・乾燥など適切な商品化処理をされ、白米または籾米として袋詰めされる。これらの米は、独自に形成された販売網を通じて販売される。また、収穫した米のうち、バボコン村の小学校の給食用に、1ヶ月あたり2~3袋を割り当てる。最初の12ヘクタールでうまくいけば、徐々に各地の低湿地に拡大していく。最終的に、全部で350ヘクタールの稲田を作り上げる。
以上の構想がまとまった。収穫した米がちゃんと販売できて、その売り上げが事業を長く続けられるだけの収入を生むだろうか。綿密に計算を行った。米の売り先については、すでに販売会社からの引き合いを受けているくらいであるから、大丈夫である。売り上げの4分の1を、事業規模拡大のための農機具の追加投入費と、新規稲田の投資費用に充てる。そのための、収支計算ができている。決して皮算用ではない。
そこまで計画を詰めてから、「草の根無償資金協力」という制度に申請を出した。これは、開発途上国の地方公共団体や、教育・医療機関、NGOや組合などの団体が、現地において実施する比較的小規模な事業に対し、資金協力を行うものである。普通の援助案件だと、何度も事前調査を行ったりするので、実現まで数年かかったりするのだけれど、この「草の根無償資金協力」は、早ければ数ヶ月くらいで認可がおりるので、かなり機動的に対応できる。その代わり、それだけ大使館が責任をもって、しっかりと審査をして、実施を監督しなければならない。
ようやく東京の本省の承認が下りた。名称「生産性向上および女性自立支援による稲作農業開発計画」、資金総額4500万フラン(980万円)。10月13日、協力の合意文書の署名式典を、大使館の会議室で行った。
式典には、この夢を分かち合っている人々が、全員やってきた。まずもちろん「デオ・グラシアス」のメンバーである、若者たちや婦人たち。そして、ギトリ周辺の村から、土地を提供した村の長たちも、民族衣装で出席してくれた。「アフリカ稲センター」のディアタ博士も、わざわざブアケから来てくれた。そうした方々の前で、「デオ・グラシアス」を代表してアワさんが、日本政府を代表する私との間で、文書に署名を行った。
アワさんは言う。
「日本からの協力資金で、私たちの計画が動き出すのを知って、近隣の村々の女性たちがもう喜んで大騒ぎなのですよ。でも、その一方で全国から、どうしてバボコン村なのか、どうして自分の村や協同組合でないのか、「デオ・グラシアス」は運が良い、うまくやったもんだと、羨望と嫉妬ですよ。」
それは違う。私たちはたまたま「デオ・グラシアス」を選んだのでもなければ、選ばれた「デオ・グラシアス」は運が良かったというのでもない。この協同組合が、しっかりした夢を持って、しっかりした計画をたてて、しっかりと段階を踏んで実行に移してきた、ということなのだ。だからこそ、人は説得される。だからこそ、人は信頼する。そして、一緒に夢を分かち合おうとする。アワさんたちの夢と、多くの人々の期待がこもった計画が、いよいよ動き出す。