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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

悪者になりたくない

2009-10-16 | Weblog
「暫定選挙人名簿」が大統領に伝達された(10月6日)あと、10月10日付の「友愛朝報」は、マンベ選挙管理委員長との一問一答を掲載した。

記者:委員長、私たちは自分の名前がちゃんと名簿に掲載されているかどうか、いつになったら確かめることが出来るのですか。

(マンベ委員長)
「そのうち適当な時期に、皆さんが身分登録を行ったそれぞれの場所で、ちゃんと掲示されます。インターネットの上でも、確認できるようにします。携帯電話の簡易メールでも確認できます。その時期がいつになるかは、それは技術的な専門家と話して決めます。日付は、委員会での作業が終わるまで待ってください。」

記者:270万人の問題を解決し、暫定選挙人名簿が掲示され、異議申し立てを受け付けて、とまだまだやることが沢山ありますね。どれほどの時間がかかりますか。

(マンベ委員長)
「日程の取り方については、すでに決められているわけです。つまり、暫定選挙人名簿の掲示から1ヶ月の間、異議申し立ての期間を置かなければなりません。その1ヶ月が経過したら、異議申し立てを締め切って、その後8日間で、それらを審査します。こうして「確定」選挙人名簿が発表されてから、選挙人証が発給されることになります。私たちが村々に出かけて、選挙人証を配ります。その時に村に居なかった人は、後で選挙管理委員会に取りに来てもらいます。」

と、ここまで読んで、マンベ委員長の説明を踏まえると、こういうことだ。たとえ、今日(10月10日)に暫定選挙人名簿が公表されたとしても、異議申し立てのために1ヶ月、つまり11月10日までは待たなければならない。それから、8日間の日数を置いて、異議申し立ての審査を行う。それが終わって11月18日。それからやっと確定選挙人名簿が出来あがるわけである。

そこまで準備を終えて、11月29日まで、たった10日しか残っていない。確定選挙人名簿が出来あがったあとに、こんどは選挙人証を発給しなければならない。村々を回って、一人一人に手渡すのだという。そんな段取りで、10日の間に大統領選挙ができるわけがない。つまりは、11月29日に大統領選挙を行うことはありえない、と言っているようなものである。記者は、そこのところをちゃんと突いて質問をしている。

記者:私たちには、11月29日まで、あと1ヶ月ちょっとしか残されていないのですが。それまでに片付きますか。

(マンベ委員長)
「大事な質問をありがとう。大統領令によって、11月29日という日付が決められているので、選挙管理委員長としては、関係者すべてに対して、11月29日を尊重するようにと伝えるのが仕事です。もちろん、何か新しい事態があれば、それはこの日付に影響が出てくるということは、当然分っています。まあ、時期が来たら、きちんと決定があるでしょう。」

記者:コートジボワールの人は誰もが、11月29日に大統領選挙を行うことは、無理であると思っていますけれど。

(マンベ委員長)
「皆さんに言いたいことは、今は誰もが11月29日に向けて努力しなければならないということです。選挙管理委員会は、組織の内部では努力を続け、組織の外部つまり関係当事者に対しては、日付を守るように働きかけています。もしこれら全ての努力ではどうにもならない要素が出てくれば、それはその時にきちんと決定されます。今言えることは、11月29日を尊重しましょう、それだけです。」

なんとも歯切れの悪い言い方である。マンベ選挙管理委員長こそが、11月29日に大統領選挙を行うということは至難の業であると、判断を下すべき責任者であると思うのに、その彼でさえ、こんなのらりくらりした言い方をしている。

さて、舞台はニューヨークに飛ぶ。国連の安全保障理事会が10月13日に開催され、コートジボワール情勢について協議された。協議の中で、「国連コートジボワール活動」(UNOCI)のチョイ特別代表から、11月29日に投票を実施することは、もうほとんど非現実的である、という観測が報告された。そんな状態ならば、大統領選挙を延期するしかないじゃないか、と怒るところであるけれど、コートジボワールの当事者たちが言い出さないのに、国際社会の側からもう延期だとは言えない。結局、協議の結果出された議長声明では、コートジボワールの当事者たちが最終版の選挙人名簿を作り上げるなど、選挙準備を早く完了するように、という趣旨を述べるに留まった。

誰もが、選挙延期を言い出す悪者にはなりたくない。このように、どこからも公式に延期の提案が出ないまま、どんどん11月29日が近づいてくる。まったくもって、傍から見ていてもどかしい限りであるけれど、これがコートジボワールの政治の駆け引きだから、仕方が無い。この我慢比べがどこで破裂するのか、破裂したときに何が起こるのか、という問題である。

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