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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

みんなの学校(2)

2009-09-26 | Weblog
2004年に、JICAから初代チーフアドバイザーとして、原雅裕さんが派遣された。原さんは、専門家チームとともに「みんなの学校」計画の土台を作った。2007年までの3年間に、ニジェールの一部の州で、この住民参加方式が人々に受け入れられ、ちゃんと機能するかどうかを試していった。管理委員会が、民主的で透明性があり、資金計画を組んで案件を動かしていける、生きた組織になったことで、住民の人々は大変歓迎をした。管理委員会が、小学校がかかえる諸問題に、自主的に活動計画を立てて対応できるようになり、そして教育の質の向上という結果として現れてきた。

そして、2007年から、次の段階に移っている。原さんらの事業を引き継いで、現在は、三浦浩子さん、國枝信宏さん、影山晃子さん、近藤奈々さんの4人の専門家が、この方式をニジェール全土に広げていっている。そして、小学校ごとの管理委員会をさらに組織化して、全国の市町村に、管理委員会の「連合」をつくり、相互協力を通じた機能強化を図っている。すでに全国256市町村のうち248市町村で「連合」が設立されて、それぞれが活動を進めている。

教育行政の側では、管理委員会をどういうふうに監督・育成していくかを研修する。管理委員会の側では、共通して取り組むべき課題について、共同で検討会を開催する。女子の就学促進や、修了試験の合格率向上として、成果が現れてきている。そうして、今度は各市町村の「連合」が、定期総会を通じて相互協力を行い、管理委員会の機能強化を図っていく。そうしたかたちで、活動の次元を拡大した。

ヤンタラ第三小学校で、管理委員会の委員長が、私に言う。
「生徒の親たちの意識が変わりましたよ。以前はいわば、小学校というのは、自分の子供を預けるだけの場所、という捉え方だったのですが、管理委員会が出来てからは、小学校のかかえる問題を、より自分に身近に感じるようになった。自分たちも教育の向上に参加しようという気持ちです。とりわけ、誰もが均一に会費を払っていますからね。自分が払ったお金の使い道には、自分の問題として真面目に取り組むわけです。」

それはむしろ皆さんの、教育に対する熱意の発露でしょう、それで日本はどういう協力をしたとお考えですか、と私は委員長に聞く。
「日本は一番大事なことをしてくれました。それは、私たちに、研修をしてくれたことです。私たちは、学校を自主運営管理していこうという気持ちがあっても、そのやり方が分らなかった。物事の決め方、その実施の管理、帳簿の付け方、そうしたことを全部、日本が研修会で教えてくれました。」

傍らにいた国民教育省の人が、私に説明する。
「たいがいの場合、各国が行ってくれる経済協力は、資金をつぎ込んで改善を図ってくれるものだけれども、資金が切れたら終わり。また元に戻ってしまうことが多い。でも、この「みんなの学校」計画は、方法を多くの人々に教えてくれるものなので、計画が終わった後も、みんなで引き継いでいくことが出来ます。」

そして、さらにこう付け加えた。
「面白いことがあるのですよ。この運営方法を学んだ人たちが、この方式は使える、と。それで、小学校の管理委員会だけでなくて、いろいろな事業での運営方法に、ここで身に付けた方式を、そっくりそのまま取り入れるところが出てきているのです。」

日本の「みんなの学校」計画は、学校を変えていっている。小学校の教育水準を向上するだけでなくて、人々の意識を変え、社会生活の能力を上げていっている。先生も、親も、行政当局も、地元も、「みんな」で一緒に作り上げる学校になった。それだけでなく、小学校は、ただ生徒たちが学ぶ場だけではなくて、親たちも大人たちも、「みんな」が学ぶ場となったのである。「みんなの学校」という名前がぴったりの事業となっている。

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