「世代祭、何だそれは。」
政務担当の大使館員に聞くと、きっと世代対抗の運動会みたいなもの、つまり学生、若手、壮年に分かれて、サッカーとかをする大会でしょう、と言う。
国民議会のアモンアゴ副議長から、土曜日に自分の選挙区の村で「世代祭(fête de générations)」があるので来ないか、と誘いがあった。どうしようか、せっかくの週末に、一日ただ運動会の見物というのでは、ちょっと気が乗らない。それで、再びアモンアゴ副議長に聞いてみると、いやいや運動会ではなくて世代の成人式ですよ、とますます不可解な答えである。それで、義理半分、好奇心半分で出かけることにした。
アモンアゴ副議長の選挙区は、ベンジャビル(Bingerville)といって、アビジャンのすぐ隣にある、湖沼沿いの市である。世代祭が行われる、ベンジャビル市のアクエ・アジャメ村(Akwe-Adjame)では、祭に参加する人々や、それを見物にきた人々で、大賑わいである。色とりどりに着飾った女性たち、上半身の裸に白い粉で模様を描きこんだ男たち、さまざまな格好の人たちが往来している。
私を出迎えて、アモンアゴ副議長は説明をしてくれる。
「今回成人するのは、チャバという世代の、アスクルー組で、27歳から34歳くらいの若者たちで構成されています。」
どうも説明が分らない。ここでは、成人というのは、18歳とか20歳とかではなくて、そんなに遅いのですか。
「いや、個人の成人じゃなくて、世代の成人です。」
ますます説明が分らない。
木の柱で枠を組んで、椰子の葉で屋根を葺いただけの簡単な構造ながら、広い集会所が出来あがっていた。ここが世代祭の式典会場のようである。集会所の中央を囲んで、たくさんの人々が座っている。それぞれ最前列に、織物を体に巻いて、肩から背負ったような民族服を着た人たちが並ぶ。私は、その人々に挨拶をしてから、用意された座席に座った。
アモンアゴ副議長は、式典が始まるまでのあいだに、世代(génération)とは何か、解説をしてくれた。世代というのは、ここベンジャビル市をふくむコートジボワールの南部にひろがる湖沼地帯に住む、エブリエ族(Ebrié)に独自の部族制度であるという。エブリエ族は、王様を持たない。つまりバウレ族やアニ族のように、代々の王様がいて、亡くなるまで王様を務める、という制度がない。だから、世代という制度で、部族の長を選び、部族の統率を図るのだ、という。
村は、常に4つの世代から構成され、人々は生まれた年に応じて、必ずどこかの世代に属する。そして、村の長をはじめ、村を統率する権力は、世代から世代に引き継がれる。現在は、ドゥボ(Dougbo)という壮年世代が権力の座についている。だから、村の長はこの世代から出ている。このドゥボ世代より年長の世代が2つあり、ニャンド(Gnando)世代とブレスエ(Blessoué)世代である。ニャンド世代は、年長者の世代である。そしてブレスエ世代はもう老人、引退者の世代になっている。ドゥボ世代の下にあるのが、今回成人を迎えるチャバ(Tchagba)世代であり、これは若年層の世代。この村のチャバ世代全体で、500人を数えるという。
ブレスエ世代・・・老年世代
ニャンド世代・・・年長世代
ドゥボ世代・・・・壮年世代(←現政権)
チャバ世代・・・・若年世代(←今回成人)
さて、式典会場に集まってきている人々は、それぞれの世代ごとに座っているのだという。そして、それぞれの世代は、3人の「代弁者(porte-parole)」、統率者である複数の「戦士(guerrier)」、一人の「書記(secrétaire)」、そして一人の「盛上げ役(animateur)」を抱えている。各世代の人々が集団で座っている、その最前列には、3人の「代弁者」が座る。会場の中央に面した一列に、私やアモンアゴ副議長を含め、幾人かの賓客が並び、いつものとおり、挨拶のやりとりがあった後、いよいよ式典が始まった。
(続く)
政務担当の大使館員に聞くと、きっと世代対抗の運動会みたいなもの、つまり学生、若手、壮年に分かれて、サッカーとかをする大会でしょう、と言う。
国民議会のアモンアゴ副議長から、土曜日に自分の選挙区の村で「世代祭(fête de générations)」があるので来ないか、と誘いがあった。どうしようか、せっかくの週末に、一日ただ運動会の見物というのでは、ちょっと気が乗らない。それで、再びアモンアゴ副議長に聞いてみると、いやいや運動会ではなくて世代の成人式ですよ、とますます不可解な答えである。それで、義理半分、好奇心半分で出かけることにした。
アモンアゴ副議長の選挙区は、ベンジャビル(Bingerville)といって、アビジャンのすぐ隣にある、湖沼沿いの市である。世代祭が行われる、ベンジャビル市のアクエ・アジャメ村(Akwe-Adjame)では、祭に参加する人々や、それを見物にきた人々で、大賑わいである。色とりどりに着飾った女性たち、上半身の裸に白い粉で模様を描きこんだ男たち、さまざまな格好の人たちが往来している。
私を出迎えて、アモンアゴ副議長は説明をしてくれる。
「今回成人するのは、チャバという世代の、アスクルー組で、27歳から34歳くらいの若者たちで構成されています。」
どうも説明が分らない。ここでは、成人というのは、18歳とか20歳とかではなくて、そんなに遅いのですか。
「いや、個人の成人じゃなくて、世代の成人です。」
ますます説明が分らない。
木の柱で枠を組んで、椰子の葉で屋根を葺いただけの簡単な構造ながら、広い集会所が出来あがっていた。ここが世代祭の式典会場のようである。集会所の中央を囲んで、たくさんの人々が座っている。それぞれ最前列に、織物を体に巻いて、肩から背負ったような民族服を着た人たちが並ぶ。私は、その人々に挨拶をしてから、用意された座席に座った。
アモンアゴ副議長は、式典が始まるまでのあいだに、世代(génération)とは何か、解説をしてくれた。世代というのは、ここベンジャビル市をふくむコートジボワールの南部にひろがる湖沼地帯に住む、エブリエ族(Ebrié)に独自の部族制度であるという。エブリエ族は、王様を持たない。つまりバウレ族やアニ族のように、代々の王様がいて、亡くなるまで王様を務める、という制度がない。だから、世代という制度で、部族の長を選び、部族の統率を図るのだ、という。
村は、常に4つの世代から構成され、人々は生まれた年に応じて、必ずどこかの世代に属する。そして、村の長をはじめ、村を統率する権力は、世代から世代に引き継がれる。現在は、ドゥボ(Dougbo)という壮年世代が権力の座についている。だから、村の長はこの世代から出ている。このドゥボ世代より年長の世代が2つあり、ニャンド(Gnando)世代とブレスエ(Blessoué)世代である。ニャンド世代は、年長者の世代である。そしてブレスエ世代はもう老人、引退者の世代になっている。ドゥボ世代の下にあるのが、今回成人を迎えるチャバ(Tchagba)世代であり、これは若年層の世代。この村のチャバ世代全体で、500人を数えるという。
ブレスエ世代・・・老年世代
ニャンド世代・・・年長世代
ドゥボ世代・・・・壮年世代(←現政権)
チャバ世代・・・・若年世代(←今回成人)
さて、式典会場に集まってきている人々は、それぞれの世代ごとに座っているのだという。そして、それぞれの世代は、3人の「代弁者(porte-parole)」、統率者である複数の「戦士(guerrier)」、一人の「書記(secrétaire)」、そして一人の「盛上げ役(animateur)」を抱えている。各世代の人々が集団で座っている、その最前列には、3人の「代弁者」が座る。会場の中央に面した一列に、私やアモンアゴ副議長を含め、幾人かの賓客が並び、いつものとおり、挨拶のやりとりがあった後、いよいよ式典が始まった。
(続く)
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