ジュネーブから友人がやってきた。アビジャン空港に迎えに行った私に、彼女が言う。
「あら、ずいぶん涼しいわね。」
ジュネーブは今猛暑で、ここ1週間ほど、日中の気温が35度に上がるという。8月といえば、東京だって焦げ付くような暑さで、今頃は蝉がうるさく鳴いているだろう。ところが、この赤道直下の熱帯にあるコートジボワールで、毎日秋のような涼しさである。気温は20度から25度が続く。
実際のところ、6月ころから雨季にはいり、空が雲に覆われるようになってから、こういう快適な毎日が続いている。昨年の9月にこちらに着任したとき、押し寄せるような暑さにさすが熱帯であると思った。この気温と1年中つきあわなければならないのだ、と覚悟した。ところがほぼ1年を過ごしてみて分かったのは、ここ3ヶ月、つまり一年のうち4分の1は涼しいというのが、こちらの天候なのである。8月にはいって、朝夕など肌寒いほどだ。フランス人たちは、かつてバカンスの休みにコートジボワールにやって来たのはいいけれど、その涼しさに海岸にも出られず、がっかりしたものだという。
月別の平均気温を比較してみると、8月は日本(東京、大阪)よりアビジャンの方が低い。「熱帯夜」という言い方など、この時期については熱帯に失礼である。こちらの夜の方が、日本の夜よりよほど快適だ。日本の夏には、ぜひコートジボワールに避暑に来られればよろしい。
6月:アビジャン25.9度、東京20.8度、大阪22.2度
7月:アビジャン25.0度、東京24.7度、大阪26.5度
8月:アビジャン24.2度、東京26.1度、大阪27.6度
9月:アビジャン24.8度、東京22.4度、大阪23.7度
この涼しさを作っているのは、やはり雨である。雨は6月、7月にずいぶん降った。土砂降りになって、大量の水が押し寄せて、そこかしこで洪水になっている。公邸でも隣宅との壁を越えて水が溢れ、調理場からサロンまで水浸しになった。また、雨雲からの雷が落ちると、電話や内線などの通信は不通になる。コンピューターなどを繋いでおくと、電圧の乱高下で壊れることがあるので、豪雨の日には電源を切らないといけない。
そういう迷惑な雨だけれど、農家の人々には恵みである。種を蒔き、苗を植えて、農家の人々は雨を待つ。雨が降って、その後に太陽が戻ってくると、大いに収穫がある。それにこのように涼しくなる前は、ほんとうに暑かった。雨どころか雲さえ見かけない日々が続いていた。だから、雨季になり雲が出て雨が降り始めると、一息つく。
たしかに暑い地域では、太陽より雨の方が嬉しい。インドでもそうであった。インドでも日本と同じで、「人生には、晴れの日もあれば、雨の日もある」という言い方があった。ただし、日本と違って、晴れの日はつらい日々、雨の日は幸運な日々を意味していた。
ところで、熱帯で仕事をしているというと、おそらくいつも、半袖でノーネクタイの涼しい格好なのだろう、と思われるだろう。ところが、そういういわゆるクール・ビズで仕事をする人はあまり見かけない。こちらのオフィスで働く男性は、皆背広にネクタイ。シャツは長袖で、カフスボタンをしていたりする。それでは汗だくになるだろう、と思うとそうではない。建物には大方冷房が入っているので、背広でも大丈夫。むしろ上着を着ていないと寒いことさえある。
そしてこちらのエリートたちが着ている背広は、上等の羊毛生地の仕立てである。それが一つの風格なのだ。アビジャンから近隣国に出張に出るとき、飛行機に乗り込むと、周りの座席の人々は、みな背広姿である。私も、大使として体面があるから仕方がない、背広で座席に座る。たくさん買ってきたのだけれど、こちらでの仕事には半袖シャツは不要だった。一方で、長袖シャツと背広がたくさん必要なのであった。
そういうことも、こちらに来てから知った。熱帯だからこうだろう、という先入観をもって臨むと、裏切られることがいろいろあって、面白いものである。
「あら、ずいぶん涼しいわね。」
ジュネーブは今猛暑で、ここ1週間ほど、日中の気温が35度に上がるという。8月といえば、東京だって焦げ付くような暑さで、今頃は蝉がうるさく鳴いているだろう。ところが、この赤道直下の熱帯にあるコートジボワールで、毎日秋のような涼しさである。気温は20度から25度が続く。
実際のところ、6月ころから雨季にはいり、空が雲に覆われるようになってから、こういう快適な毎日が続いている。昨年の9月にこちらに着任したとき、押し寄せるような暑さにさすが熱帯であると思った。この気温と1年中つきあわなければならないのだ、と覚悟した。ところがほぼ1年を過ごしてみて分かったのは、ここ3ヶ月、つまり一年のうち4分の1は涼しいというのが、こちらの天候なのである。8月にはいって、朝夕など肌寒いほどだ。フランス人たちは、かつてバカンスの休みにコートジボワールにやって来たのはいいけれど、その涼しさに海岸にも出られず、がっかりしたものだという。
月別の平均気温を比較してみると、8月は日本(東京、大阪)よりアビジャンの方が低い。「熱帯夜」という言い方など、この時期については熱帯に失礼である。こちらの夜の方が、日本の夜よりよほど快適だ。日本の夏には、ぜひコートジボワールに避暑に来られればよろしい。
6月:アビジャン25.9度、東京20.8度、大阪22.2度
7月:アビジャン25.0度、東京24.7度、大阪26.5度
8月:アビジャン24.2度、東京26.1度、大阪27.6度
9月:アビジャン24.8度、東京22.4度、大阪23.7度
この涼しさを作っているのは、やはり雨である。雨は6月、7月にずいぶん降った。土砂降りになって、大量の水が押し寄せて、そこかしこで洪水になっている。公邸でも隣宅との壁を越えて水が溢れ、調理場からサロンまで水浸しになった。また、雨雲からの雷が落ちると、電話や内線などの通信は不通になる。コンピューターなどを繋いでおくと、電圧の乱高下で壊れることがあるので、豪雨の日には電源を切らないといけない。
そういう迷惑な雨だけれど、農家の人々には恵みである。種を蒔き、苗を植えて、農家の人々は雨を待つ。雨が降って、その後に太陽が戻ってくると、大いに収穫がある。それにこのように涼しくなる前は、ほんとうに暑かった。雨どころか雲さえ見かけない日々が続いていた。だから、雨季になり雲が出て雨が降り始めると、一息つく。
たしかに暑い地域では、太陽より雨の方が嬉しい。インドでもそうであった。インドでも日本と同じで、「人生には、晴れの日もあれば、雨の日もある」という言い方があった。ただし、日本と違って、晴れの日はつらい日々、雨の日は幸運な日々を意味していた。
ところで、熱帯で仕事をしているというと、おそらくいつも、半袖でノーネクタイの涼しい格好なのだろう、と思われるだろう。ところが、そういういわゆるクール・ビズで仕事をする人はあまり見かけない。こちらのオフィスで働く男性は、皆背広にネクタイ。シャツは長袖で、カフスボタンをしていたりする。それでは汗だくになるだろう、と思うとそうではない。建物には大方冷房が入っているので、背広でも大丈夫。むしろ上着を着ていないと寒いことさえある。
そしてこちらのエリートたちが着ている背広は、上等の羊毛生地の仕立てである。それが一つの風格なのだ。アビジャンから近隣国に出張に出るとき、飛行機に乗り込むと、周りの座席の人々は、みな背広姿である。私も、大使として体面があるから仕方がない、背広で座席に座る。たくさん買ってきたのだけれど、こちらでの仕事には半袖シャツは不要だった。一方で、長袖シャツと背広がたくさん必要なのであった。
そういうことも、こちらに来てから知った。熱帯だからこうだろう、という先入観をもって臨むと、裏切られることがいろいろあって、面白いものである。
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