サイバーコネクトツーより2025年5月29日に発売されたドラマティックシミュレーションRPG「戦場のフーガ3」。本作をもってシリーズ三部作が完結したことを記念した開発スタッフインタビューをお届け。

目次
  1. 「戦場のフーガ」三部作を作り切った、いまの気持ちは?
  2. 常に全力でゲームを作ってもらうため、続編の構想は「あえて誰にも話さなかった」。無茶振りの突破口は「未来の自分へのキラーパス」
  3. 「フーガ3」の新要素にして「1、2」にもアップデートで追加された脅威のお手軽機能“ファストモード”
  4. 子どもたちは過酷な戦いのなかで大きく成長した。だからゲームの難度は過去作より低くていい
  5. 「フラムだけは特別やから!」
  6. “リトルテイルブロンクス”の今後は、シークレットエンドにヒントが!“復讐三部作”の残り2作は発売順が入れ替わるかも?

2021年発売の「戦場のフーガ」、2023年発売の「戦場のフーガ2」、そして2025年発売の「戦場のフーガ3」。もともとはサイバーコネクトツーによる“復讐三部作”の第1作目として情報公開されながら、のちにこのタイトル自体、三部作としてのシリーズ化が発表されたゲームだ。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

ケモノの姿をした人々、イヌヒト、ネコヒトが登場する“リトルテイルブロンクス”構想の流れを組みつつも、少年少女たちが過酷な運命を背負いながら異形の戦車で戦乱の世界を旅するコンセプトと骨太なゲームデザインが、世界中のユーザーに支持されている。なお、本シリーズは3作ともPS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam、Epic Games Store)と、さまざまな現行プラットフォームでプレイ可能となっている。

本稿では、そんな「戦場のフーガ」シリーズ三部作の完結を記念したインタビューをお届け。いまだから話せる三部作構想の舞台裏や、シリーズ完結作「戦場のフーガ3」に込めた想い、そして“リトルテイルブロンクス”や“復讐三部作”の今後についてなどなど、たっぷり伺うことができた。

なお、インタビューではシリーズのメインストーリーの直接的なネタバレは避けているものの、読み進めるにつれて「戦場のフーガ3」のストーリー展開についての意図や、サブエピソードに関して踏み込んでいく構成になっている。未クリアの人は、「これ以上はまだ知りたくない」と思ったタイミングで読むのをやめ、ゲームのクリア後に続きを読んでいただくのがおすすめだ。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

松山洋氏(写真中央)
博多にある元気なゲーム制作会社サイバーコネクトツーの代表兼ディレクター。開発の傍らで毎月、60冊のマンガ誌を読んでいる大のマンガ好き。アクションと映像演出に特別なこだわりを持つ作品づくりが特徴。

渡邉慎吾氏(写真左)
2021年、サイバーコネクトツーにゲームプログラマーとして入社。「戦場のフーガ」ではDLC、体験版の制作、「戦場のフーガ2」ではメインプログラマーを担当、「戦場のフーガ3」では制作プロデューサーに就任。

野口泰弘氏(写真右)
1996年 有限会社サイバーコネクトに入社した古参スタッフ。「テイルコンチェルト」から「.hack//G.U.」まではアーティストとして、「Solatorobo それからCODAへ」以降はシナリオデザイナーとして主にオリジナルIPタイトル系のシナリオを担当。「戦場のフーガ」シリーズでは子どもたちに過酷な目に遭わせる度に血涙を流す。

「戦場のフーガ」三部作を作り切った、いまの気持ちは?

――「戦場のフーガ」三部作がすべてリリースされて、しばらく経ちました。いまのお気持ちをお聞かせいただけますか?

松山:率直に、いまやれることをすべて出し切ったと感じています。「戦場のフーガ」に関しては「もうこれ以上やれることはない」と言い切れます。おかげさまで、シリーズの世界累計販売本数は50万本を突破して、いまは52万本くらいです。

シリーズ完結作が出たことで、引っ張られるように1作目から売れて行ってるんですね。「完結したならイチからやってみようかな」と思ってくれた方が多いようで、本当にありがたい限りです。

とくに熱心に支持してくれているのがアメリカで、その次が日本、さらにその次が中国、そしてフランスと続きます。2位以降の国にダブルスコア、トリプルスコアくらいの差をつけて、アメリカでの売上が圧倒的ですね。

シリーズ全作を走り切った人たちからは、「本当にずっといっしょに走ってきて良かった」とか「こんなに感動したゲームはほかにない」といった感想もいただいています。我々が狙ったところをちゃんと受け取ってくれて良かったなぁと、嬉しく感じています。

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――渡邉さんと野口さんは、いかがでしょう?

渡邉:僕も走り切れて良かったなと、ホッとしている気持ちが強いです。1作目、2作目ではプログラマーとして、「戦場のフーガ3」ではプロデューサーとして、立場の変化もありつつ、シリーズを通してすごく思い入れがある作品なので、達成感でいっぱいです。

松山と重なる部分もありますが、エゴサーチするたびに「作ってくれてありがとう」ですとか「なんだこの人の心がないゲームは!?」みたいなお声を見つけてニヤニヤしています。本当に作り続けてきたのが報われた想いです。

野口:「よく3作目まで書き上げることができたな」と感じます。まず「フーガ1」では「この暗いおはなしが受け入れられるのだろうか?」と心配しつつ世に出したのですが、ありがたい反応をたくさんいただきました。そこで「この調子ならずっと駆け抜けられるかもしれない」という手応えが得られて、それでも1作1作が毎回勝負でしたが、駆け抜け切れて安心しました。

常に全力でゲームを作ってもらうため、続編の構想は「あえて誰にも話さなかった」。無茶振りの突破口は「未来の自分へのキラーパス」

――「戦場のフーガ3」の物語や最後の結末は、1作目のころからある程度のところまで決まっていたのでしょうか?

松山:私の頭のなかには三部作での大枠のあらましは最初からありました。ただ、三部作として作ることであるとか、「フーガ1」のあとに「フーガ2」がこうなって、「フーガ3」ではこうなる……といった構想は、しばらく社内でも誰にも言っていませんでした。すみません!

1作目の開発終盤になってストーリーに伏線を盛り込み始めたのと、2作目の予告になっているシークレットムービーを実装するときに、「えっ、フーガ2作るの!?」と開発チームがザワつく、みたいな。

続編の構想をずっと伏せていたのは、開発を束ねるトップとして意図的にやったことです。最初から「三部作にします!」と言っていると、「このシステムは2にまわす?」とか「このネタ取っておく?」みたいなことになりかねないんですよ。

――出し惜しみをしてしまう可能性があると。

松山:はい。「全力ですべてを出し尽くして1本作る」という意識で取り組んでもらうためにやりました。で、やっぱり「フーガ2」を作るときは「社長、まさか3は作らないですよね? 作るなら先に知っておきたいんですけど……」と質問されたんですけど、「3があるなんて思うな!」と。

「これで終わりなんだって気持ちで、後悔しないように全力で取り組め!」と伝えつつ、また開発終盤で「フーガ3」の予告を作り始めるっていう。1回騙されているので、みんな薄々「これ多分3もあるよな」とは感じていたと思いますけどね。予告を作り始める前に「どうせ3もやるんでしょ?」みたいな態度でディレクターや野口たちがやってきたので、「もう2の開発も終盤だし教えてやるよ」「3はこういう話になるから」って。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

――なんとまぁ(笑)。

野口:ぶっちゃけ私がいちばんの被害者だと思っています(苦笑)。

――いったん伏線とかも考慮せず1作で完結する物語として脚本を書いたわけですから、頭を抱えますよね……。

野口:なんであんなに過酷な戦いを終えて平穏を手にした子どもたちをまた戦わせなきゃいけないんだと。

――そこも確かに……。2作目を作ると聞いて「どうしよう?」と思ったあとに、どのように切り替えて「フーガ2」の脚本を練っていったのですか?

野口:まず、戦いを終えた子どもたちがまた戦わなきゃいけなくなる理由が必要でした。子どもたちの親は1作目で助けに行ったので、2作目でも同じくらい大切な何かを取り戻すための戦いにするべきだろうと。

であれば「前回いっしょに戦った仲間たちが奪われた」というのが復讐の切っ掛けとして相応しいと考えました。それを成立させるためには、どんなギミックを使い、どんな話運びが必要なのか? というふうに組み立てていきました。

――なるほど。それで、1作目、2作目ではマルトが割と主人公ポジションでしたけど、「戦場のフーガ3」における動機付けとして「まだ開けていない引き出し」を考えたとき「囚われたマルトを今度はほかの子どもたちが助けに行く」という話になったのも納得です。

野口:そうですね。ひとつひとつスライドしていった感じです。

――「フーガ3」ではメイがキーパーソンになるというのも、そのときあわせて考えたんですか?

野口:はい。マルトの妹ですから、メイにもきっと何かあるんだろうと考えて、膨らませていきました。あの家族の「フーガ3」での顛末も、松山の頭の中では最初から「想定済み」だったのかもしれませんけど。

松山:みんな、あの兄弟の長男は本当にマルトだと思っていたでしょ? アッシュを勝手に作ったのは私です。

野口:身内まで騙すのは勘弁していただきたい(苦笑)。

松山:いやぁ、まずは身内からやらなきゃ、それは。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

野口:アッシュを自然に落とし込むのにはかなり苦労しましたね。

――「無から“真の長男”が生えてきた」みたいな違和感を極力感じさせないようにしなきゃいけなかったはずですよね。そのためにとくに工夫したことはありますか?

野口:「未来の自分がなんとかしてくれることに期待して、とりあえず出そう」と。いったん受け入れて先に進めることが大事です。

松山:もともとサイバーコネクトツーって「週刊少年ジャンプ」の方法論によるゲーム制作を実践している会社ですからね。今回、野口は「未来の自分へのキラーパス」を使う状況を死ぬほど味わったんじゃないかと思います。

「フーガ」を三部作として開発するにあたっては、サイバーコネクトツーだから出来た開発体制や考え方がかなり良い方向に働いたと思っています。普通はゲーム開発ってひとつのプロジェクトが終わるとチームが解散して、また新しいチームを作るっていう繰り返しなんですけど、「フーガ」チームは1作目から3作目まで解散せずに作り続けているんですね。

それによってなにが出来たかというと、「戦場のフーガ2」を作りながら前作のアップデートが出来たんです。「2」のビルドと「1」のビルドを両方走らせたんですよ。これは「.hack(ドットハック)」シリーズの経験が活きました。

1作目のときもすべてを出し尽くして「これ以上のものはない」くらいの想いで開発しているんですけど、いざ2作目を作り始めると「ここはもっとこうしたほうがいいよね」という部分が出てくるんですよ。もちろん新作は新機能が入ってより便利になって、より快適な仕様になるべきなんですけど、「それって2作目にだけあればいいの?」と。

「どちらに入っていてもより良くなるんだったら、1作目にも入れたほうがいいに決まってるよね」、「だから1のデータもクローズさせないからね。2を作りながら1もアップデートするから」と言って、スタッフを騙しだましやってきたのがこのプロジェクトでした。「フーガ3」のときなんかもっと大変だったと思います。

――段階的に並列で作るタイトルが増えていますからね……。まさに現場でこれらの作業に関わっていた渡邉さんは、いかがでしたか?

渡邉:やっぱりとくに「フーガ3」の走り始めがいちばんキツかったですね。「どうすれば最終作に相応しいおもしろさになる?」という話をしているなかで「1と2の利便性をさらに上げるにはどうしたらいいのか?」も考えて、あわせてDLCの制作もしていたので、頭の切り替えや社内リソースの配分にはかなり気を付けました。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

――「フーガ3」にあわせて「1」と「2」にも実装されたものでいちばん大きかったのはファストモードだったかなと思うのですが、それ以外だとどういった要素が実装されたのでしょう?

松山:めちゃくちゃ細かくやっているんですよ、実は。たとえば連絡ノートの仕様から上書きされていたり。“砂釣り”で部品を釣っているとき、工房でタラニスを改造させられるようになったことのアナウンスも出るようにしています。「必要な部品が揃いましたって教えてくれたほうがいいに決まってるよね」というのは、ある程度の回数を繰り返すことによって出てくる要望じゃないですか。こういった細かい部分まで「1」「2」もアップデートしています。

――凄いことであると同時に、発売後のアップデートが一般化したいまのゲームなら決して不可能ではありませんし、ユーザーからしてみれば「これがスタンダードになったら絶対にうれしい」ことですよね。

松山:そうですよね。「最新作だけ改善されればそれでいいんですか?」という話ですから。連作を作るなら全部まとめて面倒を見るつもりでやらないと、開発者の愛が疑われます。漫画の単行本だって「3巻から読む人なんかいない」じゃないですか。

3巻まで読んでもらうためにすべきことはまず「1巻を手に取ってくれる人を増やす」ことですので、そのためのアップデートはやり続けようと。なんなら今後まだアップデートする予定がありますからね。「フーガ3への要望を受けて改善すべきと判断した箇所で、1、2にもまだ対応できていないものは合わせて直す」というチェックは日々やっています。

――その姿勢が「フーガ3」にあわせて過去作も売れているという数字に出ているのかなと感じます。

松山:「フーガ1、2」のプレイを途中で辞めていて「3が出たなら最後までクリアするか」と久々にプレイするような方には、「あれっ? こんなに心地良いゲームだったっけ」と思っていただけるかなと思います。加えて、「3をプレイするために1と2のおはなしだけでも見ておこう」という人のためにも、ファストモードは1、2、3すべてに入れています。

「フーガ3」の新要素にして「1、2」にもアップデートで追加された脅威のお手軽機能“ファストモード”

――「フーガ3」はファストモードで1周クリアしてみましたが、本当に簡単にエンディングまで到達できて驚きました。ここまで思い切った仕様にするのはチーム内でも賛否両論あったそうですね。

松山:開発チームでも議論しましたが、社内の「戦場のフーガ」以外のゲームの開発チームにいるプロデューサーやディレクターからも批判が来ました。「ファストモードみたいなのが入るって聞いたんですけど、自分たちで作っているRPGを否定するんですか?」「バトルシステムやゲームバランスを一生懸命考えてきたことを否定する行為なんじゃないですか?」みたいな、なかなか辛辣な、クレームに近い言われようでした(苦笑)。ちゃんと狙いを説明したら納得してくれましたけどね。

ファストモードは、「こういうことをやりたいからシステムを考えてほしい」と宿題を出していたものに、ディレクターの新里が理想的な形で応えてくれたものなんです。

「物語だけ知りたい」ということなら、単純にスキップする機能を付けることもできますよね。でもそうじゃなくて「敵を一撃で倒せる」コマンドを1つ追加することで、ちゃんと経験値も報酬も手に入るっていうのが“ちゃんと戦っている”感覚になるんですよね。戦っている手応えは感じつつ、サクサク進めてプレイ時間は5分の1に出来るっていうのは、我が部下ながらパーフェクトな回答だったと思っています。「お前天才だよ!」と褒めました。

――1作目から物語を追いかけたい人にとっても、攻略の手応えを感じながら短時間でそれが可能になったのは、シリーズに触れるハードルを大きく下げたように思います。

松山:けどねぇ、実は思っていたよりも使われていないんですよ。周りにも言われたんですけど「1と2をサクッとクリアしようと思ってファストモードで始めたけど、やっぱり途中から自分で攻略したくなった」という方が多かったようで。

意外とみなさん、安易な道を進むのには抵抗が生じるみたいなんです。それで「フーガ2」の途中で詰まっている人なんかを見かけると「ファストモード使えよ! せっかく入れたんだから!」って。

――(笑)。渡邉さんはファストモードに対する所感はどんな感じだったんでしょう?

渡邉:僕も最初は「えっ、本当にやるんですか?」と思いました。「(戦闘システムを)一生懸命作ったんですけど」と(笑)。でもいまのユーザーさんに「20時間掛かるRPGを2本遊んでから最新作をプレイしてください」というのは厳しいだろうと、開発者じゃなくいち個人としては理解できました。じゃあ選択肢として作るだけ作って、あとはユーザーさんがどちらを選択するかを決めればいいんだと考えたんです。

その上でファストモードを使わずに遊んでくれた方が多かった結果については、なんだかんだで嬉しかったですね。当初は「うわぁ、すげぇ便利!」と言いながら使っていた方が、気付けば「ここの敵が倒せない!」とか言いながら、結局ふつうにプレイしてくれているっていう。

小ネタを言うと、デバッグはすごく楽になりましたね(笑)。「ここをプレイしたいんだ」というときに、製品版にちょっとしたズルが仕様として入ったおかげで、わざわざ戦ったりせず、楽にそこまでたどり着けるようになったので。

子どもたちは過酷な戦いのなかで大きく成長した。だからゲームの難度は過去作より低くていい

――前2作を踏まえた「戦場のフーガ3」のゲームデザイン面でのコンセプトもお聞きしてみたいです。“弱点コンボ”や“全員分のリーダースキル”など、かなりアグレッシブなデザインを意図して取り入れているように感じたのですが。

松山:方向性として伝えたのは、「1」は“王道”、「2」は“応用”。これらを経て「3」を作るときは、「もう過去作と同じことはやらなくていいから」と。「今回はプレイヤーにズルをさせたっていいんだ」という話もしました。

いままで作ってきたものを破壊する行為になるかもしれないけれど、プレイヤーが「気持ちいい」と思えるならそれで構わんから、そういうシステムを提案してほしいと伝えたところからいろいろなものが生まれていきました。

渡邉:「1」と「2」の“弱点を突いて敵の行動を遅らせる”システムは踏襲しつつ、なにか異なる駆け引きを取り入れたいと考えて、チーム内でもアイデアを出し合って生まれたのが“弱点コンボ”です。

とくにいま改めて「1」を遊ぶと感じるんですけど、かなりシビアなバランスになっているんですよね。手応えはあるけれど、1戦1戦けっこう疲れるようなバトルになっているんです。「3」はシリーズ最終作だからちょっとハジけた内容にして、ダメージ倍率がどんどんインフレしていく爽快感を楽しんでもらおうと。バランス調整への不安はあったんですけど、そこは優秀なスタッフが絶妙なものにしてくれました。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

――いまのおはなしを総合すると、すべてのシステムを理解して使いこなしたときの難易度って、「1」、「2」、「3」と徐々に下がっているという認識でいいのでしょうか?

渡邉:そうなりますね。

松山:そこも少年漫画の理屈ですよね。前作、前々作で厳しい戦いと旅を繰り返してきた子どもたちですから。「間違いなく人間的に成長してるはずだから、きっともうそんなに苦戦しないんだ」と。

「昔はあたふたしてたびたび死にかけていた子たちがめっちゃ強くなってる!」「ソウルキャノンを使いましょうと言われて絶望していたあの頃からすごく成長したんだね」と思えるように、バトルは楽勝くらいでいいんです。それが少年漫画とゲームの融合を目指しているサイバーコネクトツーらしい作品性だから、意識して作ろう、とチーム内でも話していました。

――今回は子どもたちが自主的にソウルキャノンの犠牲になろうとするシステムがありましたけど、そこもとくに難易度を高める意図で取り入れたわけではなかったんですね?

松山:子どもたちが自ら犠牲になろうとするアイデアは私なんですけど、そこも「勇敢になったいまの子どもたちなら、仲間のために自分から行動するはず」だと。

その上で、難易度が上がりすぎないように調整しています。開発当初はかなり頑固な仕様で、1度“ソウルキャノンに向かう”となったら無情にカウントダウンが始まって、どれだけHPが回復しようが止められなかったんです。それは「フーガ3」のコンセプトからもズレるので、やり過ぎだと伝えました。危機的状況を脱したら心変わりしたっていい、それをコントロールする術はプレイヤーに与えるべきだよと。

難易度的には抑え気味にしつつ、ソウルキャノンはプレイヤーの感情を揺さぶるギミックであるべきです。なので、犠牲として名乗り出る子は“プレイヤーがいちばん愛着を持っていない子ども”にしました。信頼度が上がっていない、戦闘でも使っていない子が名乗り出るので、「うわぁ、ゴメン! お前に愛情を注げてなかったわ……」と心の中で謝りたくなるようなデザインになっています。

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「フラムだけは特別やから!」

――「戦場のフーガ3」では、アシストキャラクターとの通信や“アカシャパネル”が世界観への理解を深めるのにとても有用だったと感じます。この世界をもっと知りたいプレイヤーに、とくに観てほしい必見の会話などがあったら教えていただきたいです。

渡邉:メインストーリーに関わる設定を深堀りしたいならバトルシミュレーターで観れる“アッシュ外伝”一択です。「メインストーリーで表に出すことなくこんな話をよく作ったな」と、開発チームに対して凄いなと感じたエピソードです。

あとは開発チームみんな推しているのはジンとフラムですよね。個人的に大好きなのは“色恋に興味を持ち始めたチックと、ジンのことを聞かれて困るフラム”という関係性が描かれる通信イベントです。ニヤニヤしながら何度も観ております。

野口:私も松山も、なんだかんだあってフラムのことが好きになってしまったので、ちょっとえこひいきしてしまったところは否定できません。松山からのチェック及び手直しも、ジンとフラムに関わるところはとくに厳しく入りました。

松山:「フラムだけは特別やから!」って何回言うたか分からんからね。

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――ジンとフラムに対するとくに厳しい監修というのは、どのような方向性でこだわったのでしょう?

松山:まず、フラムの再登場ってほかの誰よりもタメにタメているんですよ。現場からも「生きているんだったらなんで2で出さないんですか?」とは言われていたんですけど、「いや、ダメ!」と。「フーガ3」で活かすために「2」では登場させないことに決めていて、それで“ジンが寝ている誰かに挨拶して家を出ていく”、そしてラストでは“「ただいま」を言って帰ってくる”というシーンを描いていたんです。

「2」で我慢に我慢を重ねた想いが「フーガ3」では爆発していますから。通信にも力を入れましたけど、シークレットエンドでもジンとフラムに関するところだけ明らかにボリュームが大きくなっちゃってます。スタッフみんなで話し合って、私も開発終盤で何度もチェックしているんですけど、それでもディレクターの新里がすぐ隣の席で仕事をしているなか、何度目かわからないジンとフラムのエンディングのチェックで私、泣いていましたからね。

――何度も観たはずのシーンで、しかもすぐ傍にスタッフがいるのに、人目もはばからず(笑)。

松山:それくらい自分のツボに入る、“大好物の塊”みたいなエピソードになりましたね。

――もともとは憎しみ合う同士だったふたりが最終的に手と手を取り合うことになるというのは、プレイヤーにもグッと来る人は多かろうと思います。

野口:あとは各章の間で描かれる過去のシーンに、現代とリンクする仕掛けを入れているのは、脚本担当として注目してほしいポイントのひとつです。辻褄が合うようにかなり気を使って描きましたので。とくにアッシュやシャティ、それからタラニスの秘密に関してちょっとしたリンクがあったりするので。

それから地味なところだと、漫画新聞で「フーガ1」から張っていた伏線が「フーガ3」に繋がっていたという……これも“未来の自分へのキラーパス”なんですけど(苦笑)。

――三部作になるとは聞かされていない時点で描いたんですから、そうなりますよね。

野口:まさか最終作の重要な伏線になるとは、当時の自分は思いもしませんでしたから。「過去の自分はなんて恐ろしいキラーパスを出していたんだ!」と。

漫画新聞自体が、絆イベントの会話を考える中で生まれたものなんですよ。「漫画新聞っておもしろいよね」という他愛のない話から、松山が「なるほど、漫画新聞か。それ、作ってよ」と言い出して。「じゃあ、せっかく作るなら意味深なシーンも入れておくか」と用意しておいたものが「フーガ3」まで関わってくる謎のひとつになったんです。

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――文字通りキラーパスだったんですね。松山さんはそのときのことを覚えていますか?

松山:もちろんです。漫画新聞って、プロットとテキストは野口が書いていますけど、キャラデザと作画はゲーム本編のメインキャラクターとは別のスタッフが担当しているんですよ。

最初に私と彼らスタッフで設定やロケーションなどの打ち合わせをしたんですけど、その段階で“ロケット”であるとか、“月”といったものを取り入れるように、「フーガ3」のことは伏せながら匂わせたりはしていました。「どうせ3作目で月に行くんだから」と。野口は勘が良いので、「この漫画新聞に本編の物語の布石を込めたいんだろうな」というのは気付いて、途中から自分で仕込んでいましたけどね。

野口:長い付き合いですから(苦笑)。同じ“リトルテイルブロンクス”作品の「Solatorobo それからCODAへ」で作った設定を流用して仕込んだのが功を奏しました。

――「戦場のフーガ」シリーズでは、ベルマン帝国においてイヌヒトからネコヒトへの差別があるということでした。通信での会話で、これは「ネコヒトがイヌヒトにはない力を持っていることに対する恐怖心」から始まったという話があったのが、現実でも人間が差別を正当化してしまう理由として本質を突いているように感じて、印象に残っています。何か参考にしたものはあったのでしょうか?

野口:明確に「これを置き換えました」というものではないのですが、人間が他人とどういうところで違いを感じて、自分を良く見せようとしたり、他人を貶めようとするんだろう、というところは、もともと「Solatorobo それからCODAへ」からあった設定を下敷きにしつつ、現実に即したものを意識しました。

ガスコでは表面化していませんが、ベルマン帝国でそれが明確に差別として現れているのは、皇帝として権力を持ったカイザーの選民思想の影響が大きいです。国を導く人間の思想次第で国民の価値観も塗り替えられてしまうという恐ろしさは、ベルマン帝国を描く上でのテーマのひとつになっています。

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“リトルテイルブロンクス”の今後は、シークレットエンドにヒントが!“復讐三部作”の残り2作は発売順が入れ替わるかも?

――「フーガ3」の全員生存エンドのクライマックスは、ド直球の王道展開でした。捻りを加えることもできたと思うのですが、この展開を選択した理由などを伺ってみてもいいでしょうか?

野口:王道以外の展開は思い浮かばなかったというのが正直なところです。「1」、「2」、「3」すべて“トゥルーエンドは王道で終わる”というのは僕のなかではずっと決まっていました。

松山:少年漫画なんだから、王道じゃないと駄目だよね。

野口:その上で「フーガ3」に関しては、全滅エンドや子どもたちのうち何人かが命を失ったエンディングでも、ただのバッドエンドじゃなくて、そこに意味を持たせたいと思って、少し特殊な終わり方をします。シリーズ全作をプレイしてくださった方には刺さる内容になったんじゃないかと思っています。ソウルキャノンの謎にも関連したものになっていますので、これからプレイする方にはぜひご自身の目で確かめてみてほしいです。

「戦場のフーガ3」シリーズ完結インタビュー:漫画を3巻から読む人はいない――だから最新作に追加した便利機能は前作、前々作にもアップデートで追加し続けたの画像

――「フーガ3」はメインストーリー自体が“世界の秘密”に関連したものだったので、「これでこの世界に残った謎は無くなったのかな?」と思いきや、トゥルーエンドを見てもスタートメニューの歯車がぜんぜん埋まっていなくて驚きました。本作の隠し要素では、ジンとフラム以外ではどんなことが描かれているのでしょう?

野口:もちろんそれは「未来の自分に対するキラーパス」です。「頼むぞ俺!」と(笑)。過去作と違うのは、ものすごいロングボールになるかもしれないということです。

――ロングボールということは、来年、再来年の話ではなく、5年後~10年後になる可能性も……?

野口:わかりません。風のいたずらで突然目の前にポトッと落ちてくるかもしれませんから。松山という風のいたずらで。

――なるほど(笑)。松山さんの心境的にはいかがでしょう。「早くいたずらしたくてウズウズしている」とか?

松山:それはもう。表に出していないだけで、すでに次に向けて動いてはいるので。「フーガ」ではないですよ。「フーガ」とはまた異なる“リトルテイルブロンクス”の新たなプロジェクトはすでに動いています。続編ではなく、ゲームシステムもまったく別のものを考えていますので。

ぼちぼち、「戦場のフーガ3」を熱心にプレイしてくださっている方のなかにはコンプリート……つまり19個のシークレットエンドすべてにたどり着いている人も少しずつ出てきています。すべて見るのはけっこう大変なので、お叱りを受けるかもなぁと思っていました。でも、いまのところそういったことは無く、むしろ「凄いものを見せてくれた!」と喜んでくださっている方が多かったので、期待に応えられるものにしなければという気持ちです。

――今後の展開に関連して改めて確認しておきたのですが、当初「戦場のフーガ」に連なる“復讐三部作”として発表していた「刀凶百鬼門」と「CECILE(セシル)」は、リトルテイルブロンクスの新作とは無関係なんですよね?

松山:まったく関係ないです。それぞれ独立した新作ですね。

――いずれも引き続き開発を進めているのですか?

松山:もちろんです。おそらく、詳細のお披露目もリリースも「CECILE(セシル)」のほうが先になると思います。「刀凶百鬼門」は作り直している最中なので、しばらく時間が掛かりそうです。

――なんとなく、「戦場のフーガ」がシリーズ三部作になったことで、「CECILE(セシル)」と「刀凶百鬼門」で描こうとしていたテーマも部分的に「フーガ」シリーズに吸収されたのかなと推測していたのですけど、そのあたりはいかがですか?

松山:そういったことはまったくありません。それぞれで描きたい“復讐”はまったく別物ですから。開発チームもそれぞれ別なので、ここにいるふたりは「CECILE(セシル)」と「刀凶百鬼門」がいまどうなっているのかよくわかってないと思います。慎吾(渡邉氏)はちょっと知ってるかもしれないけど。

渡邉:そうですね。プロデューサー、ディレクターはお互いのプロジェクトについて確認できるようになっていて「そっちのプロジェクト忙しそうだけど大丈夫?」とか声を掛け合って連携しているので。「また社長が無茶なこと言ってるんだけど」「じゃあうちも言われるだろうから準備しておくわ、ありがとう」とか(笑)。

――それはなんというか、必要な連携ですよね。

松山:いつも話が早くて助かってます!

全員:(笑)。

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――最後になりますが、「戦場のフーガ」シリーズ三部作をすべてプレイした人と、これからプレイする人、それぞれにメッセージをお願いします。

渡邉:ここまで全作プレイしてくださった方には、「応援してくれて、いっしょにここまで走ってきてくれて、ありがとうございます」とお伝えしたいです。皆さんのおかげで、我々も納得が行く結末まで走り切ることが出来ました。

これからプレイする方には「ようこそ、戦場のフーガの沼へ!」と。「1」、「2」、「3」すべておもしろいので、ワクワクしながら、心を上下に激しく揺さぶられながら、楽しんでいただければと思っています。

野口:なかなかハードなストーリーだったかと思いますが、ここまでいっしょに駆け抜けてくださった方は本当にありがとうございます。これからプレイしていただく方には、入り口としては、可愛らしいケモノの子どもたちのワチャワチャした心温まる交流もありますので、安心して入ってきてくださいと、お伝えさせてください(笑)。落とし穴もたくさん掘ってありますが、それも含めて楽しんでいただけたら嬉しいです。

松山:先程の質問と重なりますが、私の中での「戦場のフーガ」の参考文献は「からくりサーカス」です。あぁいった少年漫画に夢中になれる方なら、誰もが楽しめるゲームになっています。“子どもたちが戦車で旅をする”というと、昭和のロボットアニメを連想する方もいるかもしれませんが、遊んだ人なら「これ、からくりサーカスや!」と分かってもらえるはずです。

“復讐”のための旅路が、数奇な運命を経て、その果てでどこにたどり着くのか? 子どもたちの運命に関わっていくことを選んだプレイヤー自身の手で、その過程と行く末を、楽しんでいただければと思います。

深淵なるゲームのおもしろさを探求しながら「アイカツ!」シリーズや「プリキュア」シリーズ、「プリティーシリーズ」などの女児アニメの魅力を広める活動にも力を入れている。

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