(社説)参政の会見排除 知る権利に応える責任

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 公党が恣意(しい)的に記者を会見から排除した。市民の「知る権利」に資するため、権力を監視するのがメディアの責務だ。その機会を狭める事態を黙認してはならない。

 参政党が大きく議席を伸ばした参院選の投開票日直後の定例記者会見で、神奈川新聞記者の参加を拒否した。当初は事前登録をしていないことを理由に挙げたが、後に、その記者が街頭で「誹謗(ひぼう)中傷などの妨害行為に関与」しており、会見を混乱させかねないと判断したと説明を変えた。

 神奈川新聞は、記者は取材の一環として、外国人差別につながる候補者の主張に対する指摘や反論を行っていたのであって、党の対応は「メディアの選別を正当化する」もので許されないと批判した。

 党側は、会見は動画配信しており、誰でも視聴できるので、知る権利をないがしろにしてはいないという。しかし会見は主張をただ聞く場ではない。読者や視聴者に代わり疑問をぶつけ、答えを引き出さねばならない。

 身内の集会ではなく、公党としての正式な会見だ。記者の批判的な質問の背後には、公党が説明責任を負っている市民がいる。意に沿わないメディアを排除しては、その責任は果たせない。参院に法案を単独で提出できる議席を確保し、より大きな役割を担うことを自覚して欲しい。

 報道の自由を重んじてきた米国でも、トランプ大統領の意に反して、メキシコ湾を「アメリカ湾」と表記しないことを理由に、AP通信が大統領執務室などでの取材を禁じられた。権力者による記者の選別は、容易に民主主義の後退につながる。

 SNS投票行動への影響が強まり、報道各社は参院選の運動期間中であっても、根拠不明の情報に対するファクトチェックなど従来よりも踏み込んだ報道をした。その中でTBSは、参政の外国人政策を批判的に取り上げた。同党は「著しく公平性・中立性を欠く」とし、「訂正等の措置」を申し入れた。

 人権侵害や差別につながる言説に対しては、選挙中でも、取材をつくした上で指摘するのが報道機関の役割だ。それを黙認し、形式的に「中立」の立場を取ることが「公正」ではない。

 参政党の憲法構想案には、思想、信条や表現の自由は明記されていない。一方で、報道機関に対しては「偏ることなく、国の政策につき、公正に報道する義務を負う」と書く。記者を排除したり、規制をにおわせたりするのではなく、開かれた会見の場で堂々とやりとりすればいい。

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