新幹線は「無法地帯」なのか? 多国籍トラブル急増の現実、不正占拠・特大荷物と性善説の壁――解決策はあるのか
新幹線現場力の再構築
制度を再構築するには、現場対応力を高めるふたつのアプローチがカギとなる。 まず、車掌と警備員の連携強化を前提としたタッグ体制の制度化が急務だ。現行では、委託された警備員と車掌の役割が分離しており、現場での即応力が弱い。対応基準と連携プロトコルを共通化し、トラブル発生時の初動対応を明確にする必要がある。一定の判断権や誘導・移動に関する権限を、車掌と警備員の双方に付与すべきだろう。車掌・パーサー・警備員の連携を可視化し、治安維持における抑止力として制度に組み込む。スタッフの連携体制を広報し、ブランド価値として伝える姿勢も問われている。 次に、車内トラブルへの即時通報・記録システムの導入が求められる。車内カメラやAIによる自動通報、乗客のスマートフォンからの通報機能などを活用し、トラブル検知から対応までの時間を圧縮する仕組みが必要だ。これはDX時代に即した対応であり、思い切った投資で全JRにおける標準化を図る好機でもある。映像記録やリアルタイム通報の仕組みを前提にすることで、対応の正当性や、後追い検証の信頼性も飛躍的に高まる。さらに、トラブル事例をビッグデータとして蓄積すれば、AIを活用した予兆検知や事故予測も実現可能になる。 欧州の高速鉄道では、複数のセキュリティ要員が常時乗車しており、対応マニュアルに基づいた行動と、一定の拘束権限を持つ体制が確立されている。米国のアムトラックでは、アテンダントが即時に警察と連携できる仕組みを運用している。一方で、日本の新幹線は、乗客の自律に依存した「自己責任型モデル」が前提であり、制度設計と運用が諸外国と乖離している。 インバウンドの増加、高齢者・障がい者の利用拡大といったモビリティニーズの変化に対応するには、日本も欧米のような治安維持システムを視野に入れるべき時期に来ている。便数の増加、乗客の多様化が進む一方で、日本の鉄道サービスデザインは追いついていない。車掌やパーサーに教育と責任を集中させる運用体制も、限界に達していることは明白だ。必要なのは、少人数でも秩序を維持できる制度設計であり、その一歩として、上述のふたつのアプローチは有効な選択肢となりうる。