新幹線は「無法地帯」なのか? 多国籍トラブル急増の現実、不正占拠・特大荷物と性善説の壁――解決策はあるのか
車掌減員と治安維持問題
東海道新幹線の16両編成では、東京~名古屋間の「のぞみ」「ひかり」において、基本的に車掌ふたり・パーサーふたりの計四人体制で案内業務を行っている。 一方、「こだま」はパーサーがひとり減員され、三人体制となる。ただし、こだまは各駅に停車し本数も少ないため、意外に混雑する。この減員には現場から賛否がある。 実際に乗車すると、車掌の減員を補うかたちで、パーサーが積極的に巡回する姿が目立つ。さらに、外注された警備員の巡回も加わる。現場での一次対応は車掌とパーサーが担い、パーサーは案内や巡回に加え、避難誘導や脱出用装備の操作にも対応するようになった。 2018年3月以降、車掌の減員にあわせてパーサーの役割が拡大している。車掌は ・放送 ・ドア管理 ・緊急時の対応 ・他列車との連携 ・時刻管理 など、多岐にわたる業務を担う。以前は東京~名古屋間の「のぞみ」で車掌三人・パーサーふたりの五人体制だったが、現在は四人体制となっている。 また、2025年2月24日付のWedge ONLINEによれば、東海道新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」全列車・全区間に警乗警備員が乗務している。担当は警備業界大手の全日警で、1列車あたり最大ふたり。しかし、16両編成の車内で実効的な治安維持を行うには、人員として十分とはいいがたい。 その結果、乗客同士のトラブルが発生した際には、 ・個人の言語能力 ・その場の交渉力 に委ねられる場面が少なくない。制度設計と運用体制の再考が求められている。
新幹線治安設計の綻び
新幹線の現行制度には、構造的な限界がいくつも存在する。 まず、人員配置の最適化には制度的・経済的な壁がある。定時運行を最優先とする編成ダイヤの下で、人件費や労務管理の観点から現場への増員は困難だ。とくにJRの車掌は正規雇用が前提であり、一定の給与水準を維持する必要がある。「のぞみ」での車掌減員も、コスト負担と人手不足が背景にあるのは明らかで、現場では慢性的なリソース不足が常態化している。 さらに、制度上の対応権限がきわめて希薄であることも見逃せない。車掌も警備員も、乗客に対して注意や要請はできるが、強制力や拘束力を持たない。万が一、指示に従わない乗客がいたとしても、それを是正する手段が実質的に存在しない。 制度設計そのものが過去の前提に依存している点も深刻だ。現在も日本人利用者を中心とした「性善説」的な思想を前提に運用されており、治安維持やトラブル抑止を制度的に担保する枠組みが極めて脆弱である。価値観の前提自体が、現場対応力の限界を生み出しているともいえる。 例えば、東海道・山陽・九州・西九州新幹線では、予約制の「特大荷物スペース」が導入された。一定の抑止効果はあったが、無断使用や制度への誤解は依然として後を絶たない。ポスターやウェブサイト、多言語対応の案内が強化されているとはいえ、車掌による頻繁な注意放送を聞けば、利用者への制度周知やルール遵守が進んでいるとはいいがたい。 座席トラブルへの対応も限定的で、他の空席や予備席への案内で済まされているのが現状だ。正規の利用者が被る不利益を、制度的に補償できているとは到底いえない。