アニメ「もめんたりー・リリィ」感想 終 わ ら ん デ ス ゲ ー ム
※筆者はもめリリのことが結構好きですが、一切擁護はしないのでファンの方は了承の上でお読みください
私は「駄作」「クソアニメ」という言葉をまったく違うものとして使い分けている。
「駄作」という言葉に肯定的な気持ちは一切ない。作品の狙いやメッセージ性に理解・共感を示せない、絶対的に許容しかねる作品だ。
他方「クソアニメ」は違う。こちらは、狙いやメッセージは理解しつつも、それを補って余りある破綻を認めざるをえない作品群だ。あくまでも自分が勝手にそう使い分けているという話だが。
その点で「もめんたりー・リリィ」は確実にクソアニメの部類に入る。破綻した会話のテンポ。努力の方向性がおかしいとしか思えない作画。意味不明な単発回。上手く活用できていない割烹コーナー(??????)。私が人生で見てきた商業作品の中で、もめリリは五指に入るほどのおかしな作品だった。
反面、私はこのアニメのことが嫌いではない。間違っても良作だとは思わないが、2025冬の作品群の中では楽しみに見ていた作品の一つだ。おすすめ……ではまったくないが、見る価値はある作品だったと思っている。
今回は「もめリリ」のストーリーを軽く振り返りつつ、同作のクソさ独自性について語っていく。普段の感想記事とは少々趣向が異なるが、楽しんでいただければ幸い。
かっぽ~~!!
あらすじ
公式サイトにイントロダクションが無いんだが(絶望)
こんなの初めてだわ
各話のあらすじはあるが、絶妙に説明不足でなんとも……。仕方が無いので、私の方からあらすじを説明する。
「もめんたりー・リリィ」は、主人公・れんげが失った記憶の手がかりを探すために仲間達と旅をする物語だ。
いわゆるポストアポカリプス的な世界観の中で物語は展開される。「ワイルドハント」と呼ばれる怪物により、生物の大半が消滅した東京。数少ない生存者のれんげが、河津ゆり率いる5人の生存者チームと遭遇するところから物語は始まる。
れんげはワイルドハントを単独撃破できる戦闘力があり、それを見たゆりは生存者を探して移動することを提案する……というのが序盤の進行。
追跡と追想の旅
前進を決意した一行は、道を阻む大型ワイルドハント「ゴリアテ」と交戦。れんげとゆりの尽力で勝利するものの、チームの中核だったゆりを喪ってしまう。
ゆりの死で一行は途方に暮れる。今後の方針も決断できずにいる中、れんげは引き続き前進することを提案。生存者を探しながら、ゆりが生前やりたかったことをやろうと話す。生き残った五人による、希望を探す弔いの旅が本作のメインだ。
あらすじだけ見たらまあまあ面白そうで草
†ギルティ―†要素の数々
本作の構成は、出発を決意する第一幕・移動を続ける第二幕・世界の真相と向き合う第三幕に分けられる。
ポストアポカリプスものとしては王道の作風。荒廃した世界で生き延びた少女達の旅路、その顛末……という、普通に考えてハズれないつくりだ。というか、この大筋自体は素直に面白いと思う。このアニメをクソアニメたらしめているのは、構成ではなく毎秒のように襲いかかる無限の破綻だ。ここからは、もめリリ独特の演出や要素の話をしていく。
会話のテンポがマジヤバい
このアニメのキャラは本当によく喋る。
早口というよりはまったく黙らない。間の取り方が基本的におかしい。独特な口調で間髪入れずに話すため、視聴するだけで脳味噌がダメージを受ける。
ただでさえセリフの量が多いのに、暇さえあれば珍妙な口癖で相槌もしてくる(「ギルティー」「マジ○○○○」「いいわよいいわよ~」など)。れんげの口癖「かっぽ~」に至っては、どう考えても相槌として機能しない単語なのに鳴き声のように連呼する。
というか、会話だけがおかしいわけではなく、演出全般がおかしい。特に気になるのが、キャラ全員がいちいちワイプインしてリアクションをとる演出(2話「みんなと一緒のサバ缶のイタリア風トマト鍋」12m30sなどを参照)。ただでさえ使い古されたやり口なのに、ありえないくらい擦る。
基本的に何かが起こると全員にリアクションさせるため、セリフが詰め詰めな割にテンポが悪い。途中からワイプが入る度に笑いが込み上げてきた。
公式のボイスドラマも濃縮されたもめリリ演出を拝めるので、未視聴勢はこれを見れば私の言わんとしていることが多少分かる。
SDキャラが発作みたいにガクガク動くのも面白い。人形劇的なイメージなんだろうけど……。
廃墟! 3分簡単かっぽ~!
かっぽ~~!!
はい。
もめリリを語る上で外せないのが、毎話のように入り込んでくる「廃墟 3分簡単かっぽ~」という謎のコーナー。終盤になるとあまりやらなくなるが、7話までは皆勤賞だった(そもそもなんでアニメに「コーナー」があるんだよ、gdgd妖精sか?)。また、作中時間だと3分前後なのだろうが、基本的に1分と経たずに終わる。3分とは。
本編で手に入れたアイテムを使って割烹! などというありがちな結びつけは一切無い。どこからともなく材料が出てきて、脈絡なく出てきた飯を皆で食べて終わりという奇怪なコーナー。
保存食以外のまともな食糧が無いのに、毎回こんなに使って平気なのか? と思っていたら、特別編でれんげ本人からツッコミが入った。なんで誰もが感じる疑問の解答を特別編で!?
れんげと他キャラクターの交流が重要なストーリーのため、割烹もそのツールとして大事ではあるのが大変小癪。別に毎週擦る必要は無いだろ。
お姉ちゃんの知恵袋 戦闘シーンは使い回し
極めつけが、圧倒的な回数の使い回しだ。
OPとまったく同じカットが2,3回使われる。それ以外にも、さざんかの発砲やえりかの防御など、一度使ったカットを複数回使い倒している。敵の腕が斬られて吹き飛ぶようなカットすら使い回されることがある(まあ、こういうどうでもいいカットこそ使い回すところだとは思う)。
また、戦闘シーンに関しては露骨な省略も目指す。3話「忘れられないかに缶とサバ缶のちらし寿司」終盤などが顕著だ。れんげとゆりの武器が合体してパワーアップ! という熱い展開なのに、まさかの戦闘シーン全カット。嘘だろ、俺の感覚がおかしいのか????
7話「みんなで戦う塩むすび」なんて凄い。れんげ以外のアクションがほぼ使い回しだ(そしてこのれんげのアクションも後の回で使い回される)。また、敵に攻撃が当たる瞬間を極力描かない小細工工夫がなされており、見せ場なのに引きの爆発しか映らない瞬間も頻発する。
使い回すなとは言わないが、こう、もう少し上手くやってくんねえかな……。
使い回してなければ良い戦闘なんだがな
デバフ入ってる公式
また、メディアミックスへの適当すぎる向き合い方など、公式の対応もクソさを加速させている。
もめリリは、漫画・小説で一作ずつ外伝作品を展開している。
この二作、私は途中まで存在すら知らなかった。漫画の方は放送中も隔週で更新され続けていたのに。公式Twitterもフォローしていたのに。まったく知らなかった。
普通、公式がちゃんと告知をしていればこんなのは嫌でも知ることになるはずだ。なぜ知らなかったのか。理由は単純、公式がほとんど告知していないから。これに尽きる。
二作とも01/08に1巻が発売されているが、もめリリの公式サイトにその告知が無い。いや、告知が無いどころか、商品への導線になるグッズページすら無い。イントロダクションもグッズページも無いって逆に何があんだよ💢💢💢💢
公式Twitterでは発売日前後に告知があったが、発売から1週に満たない期間で何度かツイートした程度。以降目立った告知なし。は??
オリジナルアニメの公式アカウントは、放送開始直後~クール中盤頃まで継続的にフォロワーが増減する。別媒体で展開をしているのなら、1月頭から2月末くらいまでは粘り強く売り込むべきのはず。ていうか発売初週くらい毎日のように告知するだろ普通!? いや公式サイトに載ってないことの方が問題だけど……。
酷いのは、公式サイトとSNSがこの有り様だというのにテレビCMも一切打っていないということ。よく分からんグッズのCMは打つのに。順番がおかしい。
もめリリ公式アカウントがコミカライズの作者をフォローすらしていないのも意味不明だ。関連アカウントからコミカライズを知るという僅かな導線すら消してしまっている。コミカライズは結構面白いのがなお残念だ。
コンテンツの提供者として無責任なことは本当にやめてほしいが、もめリリに説教しても仕方がない。コミカライズは少なくとも2巻までは出すんだろうから、その時は告知をしっかりしてほしい限り。
てかさっさと公式サイトと配信サイトの誤植直せよ💢💢
配信サイトで視聴するとOPに謎の英語字幕が付いてるのも謎だ。まあ映像データのミスなんだろう。それにしても一生直らないのは……。
2025/04/12追記
OPの謎字幕は意図的な可能性が高いらしいです(余計に意味わかんねえよ!!)
どんどん褒める
変な要素が多すぎて褒めのパートに入るまでが大変長かった。
ここからはどんどん褒めるよ~!
構成は結構良い
最初にも述べたが、ストーリー構成は悪くないと思う。
もめリリは「意志の継承」を一つのテーマとしている。ゆりの遺志を継いで旅を始めたれんげ達は、その旅の中でより互いのことを知っていく。そして、最後にはれんげの意志もまた他の人々へ受け継がれていく――。この大筋自体は実に王道で、素直に好感を持てた。
れんげの記憶の真相もなかなか良かったと思う。れんげが記憶を失う前どのようにして生きていたか、なぜ記憶を失ったのか。それが明かされた時、れんげ・ゆり・ねりねの三者が綺麗に繋がる。この流れは好きだ。れんげに収束した三人の因果が、れんげを通してチーム全員に継がれていく流れも良い。
細かい脚本の粗は目立つものの、大きく捉える分には良い作品だった。
特別編は絶対に見ろ
特別編(14話)は絶対に見ろ。完走した人間ならファンじゃなくても見た方が良い、作品評価に影響が出る(そもそもそんな大事なエピソードを配信・円盤限定にするな!)。
もめリリがやってきたこと・やりたかったことがダイレクトに表現されている。しとろん・すずらんなどのゲストキャラのその後も描かれており、作品全体を上手くまとめたエピソードだと感じた。あと本編のガバが多少補完されている。個人的には14話と13話を入れ替えてもいいんじゃないかと思えるくらい良い回。
……まあ、案の定ろくに告知してないのが唯一の欠点かな!!
公式のおそらく唯一の告知ツイートでも貼っておく。
▶︎▶︎#もめリリ 配信中◀︎◀︎
— 「もめんたりー・リリィ」アニメ公式 (@MML_animePR) April 2, 2025
TVアニメ『#もめんたりー・リリィ』
特別編「続いていく割烹、割烹!」が配信中💠
特別編のメニューは「割烹フルコース」
力を合わせてみんなでかっぽう〜✊
各配信サイトにてぜひ、ご覧ください!https://t.co/f0zyF0QOlE pic.twitter.com/krSY3FR3oe
すずらんが良いキャラ過ぎる。もめリリに必要なのはお前だった。
総括
改めて、もめリリはクソアニメだった。
明らかにおかしな演出プランの数々が障壁となり、ほとんどの視聴者がそもそも最後まで見れなかった。少なくとも、私の周囲でもめリリを完走した人間は0名だ。
アマプラでのレビューは、2025/04/06現在で☆2.5というごく稀な低さ(以前は2.3辺りまで落ちていたが、最終話放映後に多少持ち直した)。過度な作画崩壊・炎上レベルのストーリー等の客避け要素は無かったというのにコレだ。途中切りして☆1を投げ捨てていく視聴態度は感心しないが、もめリリの制作陣も反省は必要だと言える。
とはいえ、私はもめリリのことがそんなに嫌いではない。むしろ作品としては好きなくらいだ。やりたかったことは十分に伝わったし、最後にはある程度の愛着と感慨もあった。
私は完成度だとか商業的優位性だとかより、その作品のオリジンにある理念で作品を評価する。技術軽視では断じてない。ただ、エンタメの根幹にある作り手の魂こそ最も味のする部位と信じている。
私は、もめリリの魂がそこそこ気に入った。だからこそ切らずに最後まで見たし、石を投げたいのか庇いたいのかよく分からない個別記事に時間を費やした。もめリリを見たことと、もめリリに対して使った時間に後悔は無い。
きっと、多分、おそらく。
「おすすめの作品です」なんて口が裂けても言えないが、私にとっては価値を見出せる作品だった。この記事を読んで興味がわいてきた新規視聴者・途中脱落組が居たなら、思い出した時にでも視聴してみてほしい。推薦というより、単なる願望として。
今後IP展開が続くかは微妙なところだが、私は今後ももめリリの動向を追っていこうと思う。
かっぽ~~!!!!
以上
余談
最後に、どこかに入れたかったけど上手く入らなかった話を。
腹に穴開けられて死んだキャラの水着が「コレ」はダメだろ!!!!!!!!!!!!!!
サムネイル・本文画像
「もめんたりー・リリィ」公式サイトより
https://sh-anime.shochiku.co.jp/momentary-lily/story/index_07.html




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