なんで強気?辞職撤回の田久保真紀・伊東市長 「改革者」アピール、議論すりかえ…兵庫の騒動とそっくりで

2025年8月2日 06時00分 有料会員限定記事
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 静岡県伊東市の田久保真紀市長(55)が東洋大を除籍されたのに「卒業」と詐称したとされる問題は、新たな局面に入った。辞意を表明していた田久保氏が、7月31日夜の記者会見で一転して続投を表明したのだ。「強気」な言動の背景に何があるのか。(岩崎加奈、今坂直暉、佐藤大、森本智之)

◆続投し「全身全霊を傾けて実現したい」ことは

 「改革すべき事柄、それから実に多く山積する問題、その改革への道はまだ本当に始まったばかりであるということを改めて市民の皆さまの声で強く思い出させていただきました」。会見した田久保氏は、自らは「改革者」だと強調した。そして「全身全霊を傾けて実現したい」こととして、伊豆高原メガソーラー(大規模太陽光発電所)計画の白紙撤回と新図書館建設計画の中止を掲げた。

7月31日、記者会見で続投を表明した田久保真紀市長=静岡県伊東市で(鈴木弘人撮影)

 メガソーラー計画は、伊豆高原の伊東市八幡野地区に100万平方メートル余のメガソーラーを建設しようという計画。2016年に持ち上がった。訴訟などを経て現在表面的な動きはない。市民らの反対運動の先頭に立ったのが、中高時代を伊東で過ごし、上京後にUターンした田久保氏だった。施工業者と対峙(たいじ)したり、行政への要請行動をしたり、積極的な活動で「頭角」を現した。2019年、田久保氏は市議に初当選する。
 新図書館建設計画中止は、今年5月25日投開票の市長選で、田久保氏が公約として掲げた。現図書館の老朽化のため42億円かけて新図書館を建設する計画を中止するという訴えは、物価高に苦しむ市民に響く。現職で3期目を目指した小野達也氏(62)との一騎打ちを約1800票差で制した。市議2期目の選挙では最下位当選だった田久保氏が、下馬評を覆した。

◆学歴詐称疑惑にはきちんと答えず

 会見では、辞職を撤回して続投するのは、これらの公約を実現するためだと時に涙ぐみながら語った。ただ、今回の騒動の発端となった学歴詐称疑惑のことになると、疑問の残る答えばかりだった。
 市議会調査特別委員会(百条委員会)で7月29日、田久保氏の知人が、2017〜2018年に田久保氏本人から「大学は卒業していない」と聞いたと証言した。田久保氏は今年6月に初めて「除籍」だったことを知ったと説明しているが、実は昔から分かっていたのではないかという疑惑が深まったが、「そのような発言をしたという覚え、記憶の方は一切ございません」。

東洋大卒とする経歴が掲載された「広報いとう」7月号

 百条委への出頭要請を拒否していることには「(出頭請求書に)どんなことを証言しなければいけないかという内容が一切記載がございませんでした」とこじつけのような答えをした。
 当選後に発行された市の広報誌「広報いとう」7月号に「東洋大学法学部卒業」と記載されていたことには、事前に市秘書広報課長から学歴の確認を受けていたのに「私の方の決裁で制作するといった形にはなっておりませんので」と責任を部下に押しつけた。

◆市議会は不信任決議案提出も検討

 市長職にとどまり続ける田久保氏に対し、市議会は不信任決議案の提出を視野に入れている。
 不信任決議案の可決には、全議員の3分の2以上が出席し、出席議員の4分の3以上の賛成が必要となる。全会一致で辞職勧告決議案が可決されている市議会の現状では可決は確実。田久保氏は10日以内に議会を解散するか、解散せずに失職するかを選ぶことになる。
 議会解散を選べば市議選となる。新しい議会で不信任決議案が全議員の3分の2以上が出席、その過半数の賛成で再可決されれば、田久保氏は失職する。

◆地元には「岩盤支持層」が存在?

 会見で、不信任決議案が出された場合の対応について田久保氏は「答えを私の中ではまだ持ち合わせておりません」と述べるにとどめた。地元では、田久保氏が議会解散を選択し、「田久保派」の市議を送り込もうとするとの見方が強い。
 「メガソーラーの事業を今、ストップしている状況をつくっているのは、紛れもなく田久保市長です」。7月7日に辞職を表明した後の10日、八幡野地区で開催された「市長と語る会」。出席した女性が、感極まったような声を上げた。

静岡県伊東市八幡野地区に掲げられた「メガソーラー建設反対!」の看板

 「次の選挙」でもメガソーラーを止めることを約束するよう求めた女性に、田久保氏は「私がどのような立場になろうとも、この場で皆さんとしっかりとお約束したい」と力を込めた。
 伊東市在住のジャーナリストの清義明氏は、田久保氏の市議時代からその政治活動を批判...

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    みんなのコメント2件

  • ユーザー
    チョン太 2 時間前

    経歴の虚偽記載自体が公民権停止を伴う選挙違反に該当しかねない問題ですが,その際に有印文書偽造・行使という刑法上の犯罪を犯しているとなると,ソーラー利権等を持ち出して合理化できる話ではないですね。

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  • ユーザー
    アリサン 5 時間前

    大学を卒業していれば卒業式にも出席していたはずだし、当然卒業証書などを受け取っていたはずだから、卒業していたはずだったなどと言うのは虚偽であることは間違いない。そのことをうやむやにしたまま市長を続けるというのはどういうことだろう。まったくわからない。

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