外国人の滞在増加で治安悪化? 刑法犯は20年で大幅減
参院選2025・選択の夏
20日投開票の参院選で、国内に滞在する外国人への規制のあり方が争点として急浮上している。背景には外国人の増加が治安の悪化につながったり、日本の制度を不正に利用したりしているとの主張がある。データをみると必ずしも実態に沿った認識といえず、イメージが先行している可能性がある。
法務省は2024年3月公表の調査で外国人の増加が「地域の環境(治安、風紀等)に悪い影響があると思うか」を尋ねた。「そう思う」と「少しそう思う」の合計は45.5%にのぼった。「そう思わない」と「あまりそう思わない」の合計(40.5%)を上回った。
実際にはどうか。外国人刑法犯の検挙件数は23年に1万5541件だった。前年比で2割増えたが、4万件超だった05年に比べて大きく減った。
その間、日本国内の外国人は急増した。厚生労働省によると24年10月末の外国人労働者数は比較できる08年の4.7倍の230万人超となった。
そのうち「専門的・技術的分野」の在留資格を持つのは同8倍以上の71万9000人となった。留学の資格外活動でアルバイトなどをする外国人労働者も同4倍ほどのおよそ31万人に増えた。
24年の訪日外国人も05年比5.5倍のおよそ3687万人に達した。
出入国在留管理庁によると、外国人の不法滞在者は25年1月時点で7万4863人。1993年の4分の1で、2010年以降は10万人を下回る。不法滞在はもちろん認められないものの規模が急増しているわけではない。
国際基督教大の橋本直子准教授は政府が長年にわたり明確な外国人政策を示さず「外国人に批判的な勢力が付け入る隙があった」と話す。移民を原則受け入れないとしながら外国人就労者は増え続けた。多くの国民が政府の説明に疑問を持つだろうとみる。
SNSの浸透で外国人がからむ事件が拡散しやすくなり、実態以上に外国人へのマイナスの印象を持つ傾向が高まったと分析する。
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(更新)- 渡部恒雄笹川平和財団 上席フェロー分析・考察
この記事が示しているのは有権者が正しい事実をもとに政治家や政策を判断することの重要性です。トランプ大統領は不法入国者が米国の犯罪の温床というイメージを作り出し、不法移民を強制送還する政策を打ち出し支持を得ました。しかし米国の不法滞在者の犯罪率は米国民全体の犯罪率より低いのが事実です。昨年の大統領選挙でトランプ氏に投票した有権者の期待は、経済を良くすることに加え、不法移民への厳しい措置でした。米国の有権者は偏ったイメージをもとにトランプ氏に投票しましたが、長期的には厳しい移民政策は米国経済にはマイナスになるはずです。以下の日経の記事が米国の移民の犯罪率について客観的な数字を報道しています。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07DQV0X00C25A3000000/
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