「え……ライブ、ですか?」
ある日のトレーニング終わり、トレーナーさんが冊子になったパンフレットを一冊僕にくれた。
「うん。シュヴァルには確か言ったことなかったかもしれないけど、大学時代はそこそこ名の売れてるバンドを組んでたんだ。それで、今度学園で開かれるファン感謝祭で久しぶりにライブをすることになったんだけど、せっかだからシュヴァルにも見に来て欲しいなって」
知りもしなかったトレーナーさんの過去。僕はトレーナーさんのことをまた新しく一つ知れたことの喜びを感じるのと同時に、まだまだ僕はトレーナーさんのことを知らないのだと落ち込む僕が居た。
「え、えっと……」
そんな複雑な気持ちで、すぐに返事を返せずにいると、トレーナーさんは
「人混みが怖いなら無理しなくていいんだぞ?」
と心配そうに付け足した。確かに人混みは怖いけど、トレーナーさんが活躍すると聞いて、喜ばずにいられるウマ娘は一体どれだけいるんだろう。
「行きます、行きます……!」
つい勢いよく答えてしまい、トレーナーさんに少し笑われちゃったけど、それでも僕が嫌がっているという誤解は解けたみたいで一安心できた。
「よし、分かった。一応冊子にも書いてあるけどライブは来週で、その日はトレーニングもオフにしておくから覚えておいてくれよ」
この時期は僕の出るレースもないし、この日は思い切り楽しめそうだな。……とはいってもステージ上のトレーナーさんを眺めるだけで終わっちゃいそうだけど。
「はい、分かりました。因みに……さっき人混みが怖いならって言ってましたけど、どのくらいの人が来る予定なんですか?」
パンフレットを捲って中を確認してみると、ファン感謝祭の時に僕達ウマ娘がライブするステージをそのまま使うと書いてある。となると数百人くらいかなと思ったけど。
「そうだな……少なく見積もって二千ってとこか?」
「にっ、二千ですか……!?」
予想していた数倍の数字が訪れるということに驚いて、思わず声をあげてしまった。二千ということは、丁度この学園に所属するウマ娘と同じ数くらいってことなのかな……?
「ああでも安心してくれ、シュヴァルはちゃんと最前列にしてあげるからさ」
トレーナーさんは良かれと思って僕に甘くしてくれるんだろうけど、順番待ちもしていない僕なんかが割り込んで一番前なんて二千人のファンになんて言われるか……。
「そうですか……ありがとうございます、トレーナーさん」
でも、そんなことを僕が言える訳もなく。仕方なく僕はトレーナーさんに甘えることにした。
「じゃ、そういうことだからよろしくな。」
トレーナーさんは僕にそれだけを伝えると、この後打ち合わせがあるからと言ってトレーナー室から出ていった。
「……ライブ、か。いつもは僕がする側だったけど、今度は僕がトレーナーさんのを見る番か……」
少し、楽しみだな。
僕はパンフレットを胸に抱えてトレーナー室を後にした。
こんなSSばかり書いているからか、どうやら私は重度のメンヘラであることが発覚しました。ので、今回は実際に私の体験や感情を元にして書きました。