約4万人の投資家が参加する不動産投資ファンド「みんなで大家さん」に関する新たなトラブルが明らかになった。7月31日、主力商品「シリーズ成田」の投資家に対して、共生バンク(東京・千代田)グループの都市綜研インベストファンド(大阪市)が、分配金(配当)の支払い遅延を告げる文書をメールや郵便で送付。当日に入金を待ち望んでいた投資家も多く、突然の知らせに動揺が広がっている。
シリーズ成田は、成田空港近くで進む複合開発「共生日本ゲートウェイ成田プロジェクト(GATEWAY NARITA)」の用地を投資対象にしたファンド。2021年2月以来18本のファンドを組成。25年3月末時点での投資家の出資残高は1557億円にのぼる。グループ内の別会社に貸し付けた土地の賃料収入を配当原資としており、申込単位は100万円、利回りは年利7%だ。
日経不動産マーケット情報が入手した文書によれば、対象ファンドの資金不足により配当の支払い遅延が避けられないこと、今後、物件の売却やリファイナンスによって配当再開を図る意図があることなどを伝えている。7月末に配当を予定していたのは「シリーズ成田 1号」など9本。残り9本については直近で8月末の配当を計画していたが、いずれも実現が不透明な状況となっている。
共生バンクは本誌の問い合わせに対し、今回支払いを延期した分配金について早ければ8月に再開をめざすと回答。グループ内で保有する不動産の換金のほか、成田プロジェクトに関連した大規模な資金調達を並行して進めるとした。代表の栁瀨健一氏は投資家への文書の中で、8月初旬をめどに、今回の事態と今後の具体的な見通しについての動画を配信すると述べている。
現在運用中の「大家さん」ファンドは、上述のシリーズ成田を含め全部で40本。投資家数は約4万人、出資残高は約2100億円にのぼる。「成田」以外のファンド商品の投資家を含む、多様な利害関係者を対象にした説明が求められる。