なんか一人だけ世界観が違う   作:志生野柱

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 「止まれ」

 

 ランナゲートに着いた一行は、高く重厚な外壁に設えられた大きな門から、堂々と街に入ろうとした。

 

 馬と長距離移動用の旅装は先の集落に置いてきたし、情報をくれた吸血鬼たちは全部殺した。

 荷物も最小限で極めて身軽な、吸血鬼と魔物二匹に人間一人のおかしな集団──そんな状態のフィリップたちは、城門の傍で立哨をしていた兵士に、当然ながら呼び止められた。

 

 フルフェイスヘルムに、衛兵かランナゲート侯爵家のものと思しき紋章の入ったプレートメイルを身に付け、長柄の槍を持った──吸血鬼。

 フィリップの目には人間に見えるが、冷たい目を向けたミナの反応からして彼女の同族だ。

 

 吸血鬼と人間はともかく、明らかに魔物のカノンと、見た目には人間なのに魔力の質がまるで違うというアンテノーラは異質だ。呼び止められるのも無理はない。

 そう考えるフィリップの隣を、肩を怒らせたカノンが通り過ぎた。

 

 「……止まれ、だぁ? こちらの方をどなたと心得てるんですか! 最上最高最強の吸血鬼、ウィルヘへぶっ」

 

 チンピラのようにガンを飛ばしながら兵士に詰め寄ったカノンは、大仰な紹介を最後まで言い切れなかった。

 メキョ、といやに湿った音を立てて、眉間あたりにミナの裏拳が突き刺さったからだ。

 

 「残飯相手に名乗り上げるのは馬鹿か道化よ。……あぁ、そういえば貴様は後者なのだったかしら」

 「──、誰がポンコツピエロですか!」

 

 コキコキと嫌な音を立てて、カノンは100度以上後傾していた頭部を元の位置に戻した。

 

 頭蓋の破砕ではなく頚椎への衝撃を意図した打撃だったとはいえ、フィリップの動体視力を容易に振り切った一撃を受けて平然としている辺り、彼女もやはり化け物だ。

 

 二人の化け物ぶりを目にしてか、胡乱な様子だった兵士の背筋が伸びる。

 いや、上半身が骨盤の上に乗り、前後左右どちらにでも動けるように足を開いた戦闘準備姿勢になる。

 

 槍は構えず、こちらに戦意を悟らせない──威嚇もしないが侮りもしない、兵士として本来あるべき態度を取り戻した。

 

 「……失礼いたしました。こちらの魔物たちは貴女の麾下という認識で間違いないでしょうか」

 「そうに決まってるじゃないですか! 他にどう見えるって言うんですか! どこからどう見てもスーパーハイスペックでエレガントな従者でしょう! ぶっ飛ばしますよ!」

 

 吸血鬼の町を訪れるのは吸血鬼だからか、或いはミナがボスだということを本能的に察してか、兵士はミナに真っ直ぐ視線を向けて外さない。

 

 対応としては──間違いだ。

 ミナが幼少期から叩き込まれた女帝としての価値観は、跪きもせず、剰え自らを直視する無作法な下民に対し、強い不快感を示す。

 

 とはいえ、彼女はもう吸血鬼の頂点に君臨する統治者ではない。

 それに自分で言った通り、物を知らない田舎者の残飯モドキに権威を示し、礼節を強いるほど不毛なことはしない。

 

 ……まあ、フィリップが今回の仕事に対して真面目でなければ──いつもの依頼程度のテンションであれば、無作法な兵士は血の杭に刺し貫かれているのだけれど。

 ペットが真剣に取り組んでいることを邪魔せず見守り、必要と乞われれば手を貸す良い飼い主だから、彼は死んでいない。

 

 キャンキャンと五月蠅いカノンも同じく。

 

 『……これは、面倒臭い相手だと思わせることで、兵士に「さっさと行かせよう」と思わせる演技(テクニック)なのでしょうか』

 「……さあ、どうかな」

 

 音情報の欠落した意思が届き、フィリップは苦い笑みを浮かべた。

 

 交渉術として無くはないだろうが、カノンにそんな技術や機微を読む頭があるだろうかという疑問を抱いてしまう。

 人心に明るいナイアーラトテップのチューニングを受けたわけだし、有り得ないとまでは言えないが。

 

 カノンの策──そういうことにしておく──が上手く行ったのか、兵士はミナだけを見て話を進めた。

 

 「ペットには所有者を示すための首輪を着用していただく決まりとなっておりますので、一度お預かり致します」

 

 兵士はそう言って、城壁の外に設えられた簡素な小屋を示した。

 フィリップがとことこと進み出ると、兵士たちはその出で立ちに目を留めた。

 

 「あー……ペットに武装させていらっしゃるのですか? それにそのチェーン、懐中時計では?」

 

 よく見るまでも無く分かる上物の直剣と、ジャケットの内で輝く白金のチェーン。

 よく見てみれば、着衣もジャケットから靴まで上等な代物だ。こんな状況でなければ、高名な貴族の嫡子と言われても容易に信じられる。

 

 彼らがこれまでに見てきた「吸血鬼のペット」の悲惨な様子とは一致しない。

 

 「私がペットにどんな格好をさせようと、私の勝手でしょう」

 

 疑念というよりは疑問の色が濃い声に、ミナは冷たい声と視線を返した。

 

 実際、フィリップは偽りなく彼女のペットだ。この町に潜入するにあたって関係性を欺瞞している、カノンやアンテノーラとは違う。

 

 兵士にもそれが分かったのか、或いはカノンよりミナの方が厄介そうだと感じたのか、彼は素直に頭を下げた。

 

 「はい、仰る通りです。ですが貴重なものを持たせているとトラブルに巻き込まれる可能性が増えますので、その点にはくれぐれもご留意ください」

 

 小屋に通されたフィリップは、なんとなく内装を見回す。

 外見通り簡素な木造で、待機所かと思ったが倉庫に近い。何が入っているのか分からない木箱が積まれている他には、壁際に置かれたベンチくらいしか物が無かった。

 

 フィリップが顎で示されたベンチに座ると、兵士は箱の中を漁り始める。ガチャガチャと硬質な音がしており、中身は金属製の何かだと察しがついた。

 

 「……話には聞いていたけど、まさか本当に衛兵がまだ存在してるとはね」

 

 呆れたようなフィリップの声に、探し物の音が一瞬止まる。

 しかし、またすぐに兵士の動きは再開した。

 

 「なんで?」

 「……吸血鬼だろうと人間だろうと、自意識を持ったヤツが集まって暮らす社会には問題が生まれる。そして社会は、その問題解決を任せられる治安維持組織を求めた。それだけさ」

 

 続けて問うと、嘆息と共に答えが返る。

 溜息は「静かに待て」と言いたげに鬱陶しそうなものだった。

 

 普段なら仕事の邪魔はすまいと空気を読みそうなフィリップだが、今回は違った。不愉快そうに眉根を寄せ、足を組んで背後の壁に凭れかかる。

 そのぞんざいな仕草は、ミナの所作によく似ていた。

 

 「おじさんたち、元から兵士なんでしょ? なんでまだ生きてるの? って聞いたんだよ」

 

 まあアンデッドは生きてはいないけれど、といつもなら言いそうなフィリップだったが、やはり今回は違う。そんな言葉遊びをするだけの気持ちの余裕が、今は嫌悪と怒りによって奪われている。

 

 「犯罪、魔物、災害、あらゆる脅威から人々を守るのが兵士の役割だ。なんで吸血鬼に抵抗して全滅してないの?」

 

 戦って負けて全滅していた、なら、分かる。

 人間と吸血鬼が戦って人間が負けたという、想像の容易な過程と結末だ。

 

 だがそういう風ではない。

 治安維持機関として正常に機能する程度の人数が、少なくとも残っている。

 

 「衛兵の中に吸血鬼が紛れ込んで、一夜にして壊滅でもしたのかな。だとしたら、まあ、無能故の死だ。僕から言うことは何もない」

 

 フィリップ程度の魔術適性では、人間と吸血鬼の魔力の差異を感じ取れない。

 虹彩の赤化や犬歯の発達といった細部の変化に気付かなければ、家族や仲間が吸血鬼化していることを知らず、無防備なまま襲われる。

 

 そもそもフィジカル性能で負けている以上、不意討ちされたら勝率は限りなくゼロに近い。

 

 だから、最終的に負けたことに、驚きも文句もない。

 

 だが──。

 

 「……何が言いたい?」

 「不死や力を求めて自ら吸血鬼になったのなら、「そうだ」と認めて欲しいな」

 

 ──殺すから。

 言葉にしなかった内心は、どろりとした敵意となって滲み出る。

 

 今すぐどうこうするつもりはない。

 フィリップの任務は町の何処かに必ずいる人間の救出だ。感情に任せて邪神を呼び、出来損ないの残飯モドキを吊るして街を大混乱に陥れることではない。

 

 だが仕事が終わって趣味の時間になったら、ヘレナや衛士団を呼ぶ前に惨殺してやる。フィリップはそう決めた。尤も、彼らが本当に“そう”だった場合だが。

 

 その敵意に気付いたのか、それとも気付かなかったのか。小さく肩を竦めた兵士の様子からは、どちらとも判別できなかった。

 

 「……まあ、そういう奴もいる。仲間や家族が先に吸血鬼になってて、不意を突かれた奴もいる。大した差はねえがな。どっちにしろ吸血鬼になった瞬間、“親”の命令には逆らえなくなるし、考え方もコロっと変わる。俺も──血を吸われてる最中は、吸血鬼になった瞬間に自殺しようと思ってた。生きるために誰かを傷つけなきゃいけない化け物になんか、なりたくはなかったからな」

 

 兵士は箱の中から金属の首枷を取り出すと、背後からの「それは重そうだからヤダ」という声に嘆息し、また箱の中に仕舞った。

 

 次に取り出したのは革の首輪で、ディアボリカに似たようなものを付けられた経験のあるフィリップは何も言わなかった。

 

 それから兵士は「お前の名前は」「飼い主の名前は」と続けて訊き、首輪のプレートに刻んだ。

 

 「そんで目が覚めたら、このザマさ。自己否定も自己肯定もない、ただの化け物の出来上がりだ。今のお前の言葉は、まあ良いとこ「生前だったら効いたかもな」ぐらいのもんさ」

 

 兵士は首輪をフィリップに放り、フィリップが素直にそれを付けるのを見ながら語る。

 流石に普通は自分ではさせないだろうが、それほど従順と思われたのだろう。

 

 首輪には名入りのプレートの他に、輪っか状の金具も付いていた。恐らくはリードを繋ぐためのものだろう。

 肌に当たって違和感のあるそれを弄ぶフィリップに、兵士は箱を片付けながら言った。

 

 「知った風に言われて怒る、なんて感情もない。お前がブタの鳴き声に感化されないようにな」

 

 豚と同列に語られて、フィリップは特に気分を害されることは無かった。

 口元などはむしろ、穏やかな笑みの形に綻んでいる。

 

 「……なんだ、思ったよりちゃんと化け物じゃないか」

 

 小さな独り言は吸血鬼の鋭敏な感覚に届いていたが、兵士は何も言わない。

 

 フィリップも答えや反応を期待してはおらず、空気を切り替えるように朗らかな笑みを浮かべた。

 

 「この町には観光で来たんだけど、人間の町とはっきり違うところは何かある?」

 

 「もういいぞ」と言おうとしていたところを遮られて、兵士は開けた口を閉じる。

 ヘルムに遮られて顔は見えなかったが、少しだけ沈黙があった。

 

 外からこの町を訪れる観光客は、今でも居ないわけではない。

 耳聡い吸血鬼や高い知性を持った魔物は珍しく、一番多いのは何も知らない一般人だ。カモが葱を背負って来たみたいなもので、食料として有難く利用している。

 

 だから以前同様──吸血鬼化する前のような観光案内の定型文は、まだ錆び付いてはいない。

 お城が見どころですよ、とか。○○の料理はおいしいですよ、とか。適当に流して街の中に入れてしまえば、後は流れで食卓に上る。

 

 しかし「人間の町との違いは?」なんて聞かれるのは初めての経験で、流石に文章を用意してはいない。

 あまりにも安穏としたペットに驚き、賞賛の念すら覚えつつ、彼は頭の中で話すべき内容を整理した。

 

 「……基本、街中を普通に歩いてる奴は全員吸血鬼だ。ペット以外の人間は見つけ次第管理場にぶち込まれる。お前も迂闊に首輪を外すとそうなるし、主人と離れた時点でアウトだと思っておけ」

 

 かなり緩めに付けたせいで小さめのネックレスのように垂れている首輪を、兵士は顎で示す。

 フィリップは「了解」と、重要性を分かっているのか今一つ判然としない相槌を打った。

 

 「昼間に寝る奴と夜に寝る奴の二パターンいるが、基本的には昼間に寝てる奴が多い。だから日が出ているうちは騒がしくしないことだ」

 

 ふむ、とフィリップはミナの城で過ごした時間を思い出す。

 

 ミナは「昼間に来客が多いから昼夜逆転の生活をしている」と言っていたし、メイドたちも昼型が多かった。

 しかし吸血鬼は日光下で各種能力が半減し、月光下で倍増する。つまり月のない夜が平常だ。となると、基本的には夜行性になるのだろう。

 

 生まれつき(ナチュラルボーン)のミナはともかく、人間から変化した以上は昼間に活動する習慣があったはずだが、種族特性に合わせて修正したのか。

 

 そんなことを考えている間に、兵士の言葉は続く。

 

 「食堂は基本的に「回し飲み」になってる。飢餓衝動を抑える程度に飲むだけで、吸い殺したらデカい罰金があるから注意……ってのはお前には必要ないか。あぁ、人間用の食事を出す店は看板にその旨が書いてある」

 

 ほう、と、フィリップは今度は感心したように眉を上げた。

 街の人間を食い尽くし、近隣住民を収穫し、さらに足を延ばさなければいけないような状態ではあるが、食料に関して工夫する程度の知能はあるらしい。

 

 或いは、そんな状態だから工夫を始めたのかもしれないが。

 

 「あと、城には近づかないことだ。俺たちなんかより余程強い吸血鬼が住んでるからな」

 「へぇ。ちなみに誰? 名前とか外見は?」

 

 きっと大元──感染源だと判断したフィリップは、観光名所を聞くような調子を装って尋ねる。

 

 しかし、期待した答えは得られなかった。

 

 「知らん。ある日突然やってきて、気付いたときには街を支配してた化け物さ。下々に顔を見せることなんかねえよ」

 

 投げやりな兵士の言葉に、フィリップは眉根を寄せつつ「おじさんたちの“親”じゃないの?」と食い下がる。

 

 対して兵士の答えは「俺ら一般人からすると“祖父”か“曾祖父”ってところか? まあ、おばあちゃんかもしれねぇが、吸血鬼に性別なんか関係ないだろ」というものだった。

 

 もし本当に感染源から二世代、三世代離れているとなると、上位吸血鬼の存在が真実味を帯びてくる。

 碌に力を持たない下位吸血鬼(第三世代)から第五世代まで派生したと考えるよりは、強い力を持つ始祖の眷属(第二世代)から第四世代まで派生したと考える方が、まだ現実味がある。

 

 仮想敵はミナのメイド。

 Aクラス冒険者をオヤツ感覚で狩り殺せる化け物だ。

 

 正直に言って、すごく嫌だった。

 

 今は城との間に分厚い城壁があるが、街に入った瞬間に血の槍が飛来し、知覚する間もなく頭が吹き飛んだって不思議はない。

 

 「あぁ、娼館は全部潰れたし、食用やペット用の交配場も今のところ無い。ペット可の宿と飯屋以外は便所汲みも無いから気を付けな」

 

 性別の話をしたからか、兵士は思い出したように言った。

 フィリップは「ヤだなぁ」と顔を顰めていて、半分くらいしか聞いていない。

 

 そんなことをしていると、外から小屋の扉が開かれた。

 入ってきたのは別な兵士だ。

 

 「──おい、何してんだ? おっかねえレディがお待ちかねだぞ」

 

 確かに首輪を付けるだけにしては、フィリップたちは長々と話し過ぎていた。

 

 なんでだ? と兵士も首を傾げている。

 

 「あ? あー……観光案内だよ」

 「ほーん。ランナゲートは昔、独立した一つの国だったんだ。と言っても、何か特産品があったり、土地が肥沃だったりはしない。帝国と王国に挟まれて、どっちもの文化を取り入れてる。昔はゆるめの奴隷制みたいなのがあって、便所汲みとか動物の解体とか墓守とか、ヤな仕事を割り振られてたんだよ。お前の付けてる首輪はその名残だ」

 

 「早く出ていけ」と言われるかと思ったが、新しく来た兵士は意外と親切だった。

 二人とも「他に何かあるか? なに喋った?」「基本的な説明はしたぞ」なんて顔を見合わせている。

 

 ついさっきフィリップに敵意を向けられた方の兵士でさえ、観光客に対応するような感じだ。

 豚の鳴き声。そういうことだろう。

 

 「あとはそうだな……最近は涼しいからアレだが、こまめに水分を取っておけ。他人のペットでも「味見ぐらいなら」ってマナーのない奴も偶にいるし、それのせいで貧血になって、いざ主人が血を吸う時に味が落ちてたり、運が悪いとぶっ倒れたり死んだりするケースがある」

 

 頷いて相槌を打ちながら、フィリップは少し面白くなりはじめていた。

 

 吸血鬼の町。ペットの人間。価値観の違う異種文明を目にしているかのようだ。

 犬猫以上に高度な知性を持つペットを飼う種族は、体調管理や自己防衛をペット自身にさせる。どころか、自分で首輪を付けさせて観光案内や注意喚起までしてくれる。

 

 「じゃ、気を付けて。くれぐれもご主人様から離れないようにな」

 「良い旅を」

 

 小屋を出ると、二人の兵士は手を振って見送ってくれた。

 

 フィリップも笑いながら手を振り返し、ミナたちの所に戻る。

 ミナはかなり不機嫌になっていて周りの兵士たちが戦々恐々としていたが、フィリップが戻ってくると、抱きしめて機嫌を戻した。

 

 「……思ったより親切で興が削がれましたか?」

 

 ニヤニヤと目元だけでも分かる揶揄に満ちた笑みを浮かべて、カノンがすり寄ってくる。

 詰め所の外に居ても、中の話は聞こえていたようだ。

 

 「……まあ、多少。でもいい人だったからこそ、ちゃんと殺してあげるべきなんじゃないかな」

 

 いい人だから、ではなく、だったから。

 その言葉の意味するところは一つ。フィリップはもう、彼らを人間として認識していない。

 

 しかしそれ故に、別種の存在として一定の尊重を抱くようになっていた。

 

 人間ならこうあるべき。兵士ならこうあるべき。

 そんな思いを、「まあ化け物だから仕方ない」と飲み下す。人間だったら殺していたが、人間でないなら許してやってもいいい。

 

 ……まあ、許すことと、生かすことはまた別の話だが。

 

 「吸血鬼になると価値観が変わる。力に酔うとか痛みに鈍感になるなんてのは副次的なもので、一番大きな影響は「人間が同族でなくなる」ことだ。彼らが守ってきた、守るべきだった存在への価値認識が暴落する。……可哀そうじゃん、そんなの」

 「うーん、でも、今の彼らは幸せそうじゃないですか?」

 

 試すような、ナイ神父を彷彿とさせるようなカノンの物言いに、フィリップは僅かに眉根を寄せる。

 

 しかし不快感を払拭するように、すぐに小さく声を上げて笑った。

 

 「さあね。まあ僕がどんな選択をしようと、最後には町ごと“浄化”されるわけだし、「機会があれば」程度の話だよ」

 

 

 

 




 読者の皆様には1年間大変お世話になり、心より感謝しております。お陰様で今年も大変楽しんで執筆することが出来ました。

 また来年もご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。作者が書いていて楽しいものを書くので、趣味が合う限り、一緒に楽しみましょう。

 いつも感想・高評価ありがとうございます! よいお年を!
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