全国学力調査で初の男女別結果 理数の学力差はないのに「得意」は…
毎年、全国の小学6年生と中学3年生が受ける全国学力調査の今年の結果が公表された。
今回は、各教科の男女別結果を文部科学省が初めて明らかにした。算数・数学や理科は、正答率は男女差がほぼないのに、教科を「得意」「好き」と思う女子は男子より目立って少なかった。
文科省の担当者は、社会にある「刷り込み」が影響した可能性を挙げる。識者は、女子への支援が必要だと話す。
全国学力調査は4月に実施された。教科は、国語と算数・数学と理科。中3理科だけはオンラインで出題・解答するCBT方式だった。
小6の結果(平均正答率)は、国語=男子63.1%、女子70.9%▽算数=男子59.0%、女子57.3%▽理科=男子55.8%、女子58.8%。
中3の結果は、国語=男子52.0%、女子57.4%▽数学=男子49.1%、女子48.6%。理科は500を基準とするスコアで示され、男子503、女子508だった。
男女合わせた結果は、小6=国語67.0%▽算数58.2%▽理科57.3%。中3=国語54.6%▽数学48.8%▽理科505。
小中ともに国語は女子が5.4~7.8ポイント高い。算数・数学と理科は男女差は小さかった。
好き、得意が低く 成績上位層でも
学力調査と同時実施のアンケート結果も公表された。算数・数学と理科が「好きか」「得意か」「授業がよく分かるか」と尋ねた質問は、回答に男女差があった。「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と答えた割合が、どれも女子の方が少なかった。
特に、算数・数学が「好き」「得意」と答えた女子は、小中ともに男子より20ポイント程度少なかった。
理科が「好き」「得意」と答えた女子も、中3は男子より15ポイント程度少なかった。
また、成績上位層に限って見ると、それぞれ「得意でない」と答えた女子は、小中とも男子のほぼ2倍に上った。
理数の成績は違わないのに、なぜ男女で意識が違うのか。文科省の担当者は「男子は理数系、女子は文系という社会の刷り込みが影響しているのでは」と分析する。「イメージから解放する必要がある」とも話した。
専門家「さらに詳しい男女別結果を」
男女の意識差は、2023年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)でも明らかになった。「算数の勉強は楽しい」「数学を使うことが含まれる職業につきたい」などの質問では、前向きな回答は小中ともに男子の方が多かった。
こうした動きで世間の関心が高まったため、文科省は今回、男女別結果を公表したという。
教育現場のジェンダー問題に詳しい九州大学の河野銀子教授(教育社会学)は「国際調査と同様の傾向が、学校現場への影響が大きい全国学力調査で明らかになったのは大きい」とみる。
理数で表れた男女差について、「理数は男子に向いている」という社会にある無意識な思い込みにより「女子が自信を持てない環境があると考えられる」とし、「自信を持たせる支援が必要だ」という。
また、問題ごとの正答率など、さらに詳しい男女別結果の公表も必要だと指摘する。今回、男子の国語の平均正答率は女子を下回り、「男子が困難さを抱えていると思われる」と言う。問題ごとに男女それぞれの課題が分かれば「ジェンダー平等に寄与する学習指導要領の作成や授業改善につながるだろう」と話す。
数直線、電気回路に課題
各教科の課題もみられた。
国語は、小6が文章と図表などを結びつけて必要な情報をみつけること、中3が自分の考えが伝わるように根拠を明確にして書くことに課題があった。
小6算数では、数直線の読みとり問題の正答率が35.4%と低かった。0~2を6等分した数直線の2カ所を分数で表す問題だが、無回答率も7.8%と高かった。中3数学では、1~9から素数を選ぶ問題の正答率が32.2%だった。
理科は、小6が電気回路の理解をみる問題で、中3が化学変化を原子や分子のモデルで表す問題などで正答率が低かった。
CBT方式、指導の個別化に
オンラインで出題・解答するCBT方式だった中学理科は、五つの学力層に分けて特徴を分析できるようになった。
例えば、水中の4種の生物から「呼吸する生物」を答える問題。正解は「4種すべて」だが、低学力層の6割以上が「ミカヅキモ」を選ばなかったことが分かった。
「動かない生物=呼吸しない」という誤った理解がうかがえるという。
問題を作成・分析した国立教育政策研究所の担当者は「学力層に応じたつまずきポイントが見え、指導に生かせるようになる」と説明する。文科省の担当者は「指導の個別化が進む」と話した。
CBT方式は他教科にも広がる。2026年度は中3英語、27年度からは小中全教科の予定。従来と違い、結果を経年比較できるようになる。
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