福井市で1986年に女子中学生を殺害したとして、殺人罪で服役した前川彰司さん(60)を無罪とした名古屋高裁金沢支部のやり直し裁判(再審)の判決について、検察側が上告を断念する方針を固めた。証拠の扱いに不公正な点があったことなどを踏まえ、上告しないと判断したとみられる。
8月1日の上告期限を過ぎれば、前川さんの無罪が確定する。
7月18日の判決は「事件の夜、血の付いた前川さんを見た」と証言した知人男性について、覚醒剤事件で逮捕されていて自身の罪を軽くするために情報提供を始めた疑いがあると指摘。捜査に行き詰まった捜査機関がそれにすがりつき、周辺者の証言を誘導した疑いが拭えず、計6人の「主要関係者」の目撃証言は信用できないと判断した。
周辺者の証言と矛盾する客観的な証拠があり、検察はそれを一審の段階で認識しながら公判を続けたとも指摘。その証拠の存在を明かしていれば「一審の無罪判決が確定していた可能性も十分に考えられる」と述べ、公益の代表者であるべき検察官の対応に「失望を禁じ得ない」と批判した。
検察側はこれを踏まえ、前川さんに有利になる証拠を裁判で提出しなかったことは公正ではなかったと判断した模様だ。
事件は86年3月19日の夜…
- 【視点】
検察側が上告を断念する方針というのは朗報です。そもそも、一審段階で有罪の根拠となる関係者の目撃証言と矛盾をする証拠の存在を明らかにせず公判を維持した検察が、冤罪を作り出し、前川さんが長期収監されることになったわけですから、当然のことでもあり
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