成田ゲートウェイプロジェクトの開発予定地の一部(2024年2月、編集部撮影)
不動産小口化商品「みんなで大家さん」シリーズを展開する都市綜研インベストファンド(大阪府)が、7月31日に予定していた「シリーズ成田」の分配金支払いを期日通りに行えない事態になっていることが分かった。同日、出資者宛てに通知が送付された。
みんなで大家さんの主力商品である「シリーズ成田」は、成田空港周辺の土地を活用した大規模開発プロジェクト。当初は2024年中の開業が予定されていたが、計画の大幅な遅れが指摘されていた。
大幅な計画変更があったにもかかわらず出資者への事前説明が不十分だったなどとして、昨年6月には都市綜研インベストファンドとグループ会社の「みんなで大家さん販売」が大阪府と東京都からそれぞれ、不動産特定共同事業法に基づく行政処分(30日間の一部業務停止命令)を受けていた。
みんなで大家さんをめぐって、いま何が起きているのか―。楽待新聞編集部では、みんなで大家さんに出資中の投資家から話を聞くことができた。
累計2000億円超を集めた「みんなで大家さん」
「みんなで大家さん」は、2007年9月にスタートした不動産小口化商品。想定利回り7%ほどで1口100万円から出資を募り、これまでに約3万8000人の出資者から、累計で2000億円程度の資金を集めてきたとされている。
シリーズを展開しているのは、「共生バンク株式会社」およびそのグループ会社で、ファンドの組成や不動産の取得、運営、管理などの核となる事業を担っているのが都市綜研インベストファンドだ。
「みんなで大家さん」のパンフレット
今回、分配金の支払い遅延が発生した「シリーズ成田」は主力商品。成田空港の周辺にある土地を開発し、ショッピングモールや劇場、スタジアム、ホテル、国際展示場、レストランやバーを整備し、資産評価2兆円を超える「街」を目指す、としてスタートした。
2021年からこれまで18回に分けて出資者を募っていた。
分配金支払い予定日に突然の通知
出資者によると、直近で7月31日に「シリーズ成田」の分配金支払いが予定されていたが、同日朝になって突然、分配金の支払いが遅延となる旨の通知が届いた。
みんなで大家さんの出資者宛てに7月31日付で送付されたメールの文書(出資者提供)
出資者宛てに送られた文書では、以下のように記載されていた。
「7月31日にお支払い予定でございました分配金より、テナントからの賃料入金が再開されるまでの間、そのお支払いが一時的に遅延することとなります。また、テナントからの賃料入金がされ次第、早急に分配を行います」
分配金の支払い遅延の原因として、テナントからの賃料が今年4月以降支払われていないことが挙げられており、みんなで大家さん成田1号~18号までのすべてで今後も分配金の支払いが遅延する可能性があるという。
7月分として発行された分配金明細と運用レポートでは、分配金が支払われる旨が記載されていた。それにもかかわらず、支払い予定日当日に突然、出資者に遅延の通知が送られた。
出資者に送付された文書では、「シリーズ成田」の分配金支払い遅延とその理由などが説明されていた(出資者提供)
この理由について、文書では以下のように釈明している。
「当該レポート等の作成時点におきましては、弊社はテナントからの期日までの賃料入金を信じ、その実現に向けて本日まで交渉を続けておりましたが、力及ばず、最終的に入金がなされず、このような報告となりました結果、ご報告が本日まで遅れました」
「シリーズ成田」以外の商品の分配金の支払いは、期日通り行われているとの説明も添えられている。
出資者の受け止めは
突然の知らせを受け、出資者には動揺が広がった。
「シリーズ成田」に総額700万円を出資しているという60代の男性は、「今朝メールで通知が届き、確認のためグループ各社に電話したがつながらない。分配金がいつになったら支払われるのかだけでも知りたい」と不安を口にした。
男性は、昨年の行政処分をきっかけに1年ほど前から解約手続きを進めていた。「解約には半年から1年かかる」と言われ、待ち続けたが1年が経った今も返金がされていない状況だという。
総額200万円を出資しているという40代女性は、今回の件がSNS等で騒がれているを見て「ちょっとやばいのかな」と思ったと話す。
「これまでの3年間で30万円程度の分配金を受け取っていました。今後もし元本が戻ってこない事態となってしまったら、170万円損をするということですから、そう考えると悲しいですよね」
一方で、今後については「いま私が何かしたところで、きっと結果は変わらない。どうなるのかな、とは思うけど待っているしかないのかな、と思う」と語った。
「資金確保の計画に重要な支障」と説明
分配金支払い遅延の要因とされているのは、テナントからの賃料の支払い遅延。このテナントは、資本関係のあるグループ会社である「共生日本ゲートウェイ成田プロジェクト」を推進する事業法人だ。
このテナントによる賃料支払いが滞っている理由について、文書では「当該テナントの資金確保の計画に重要な支障が生じました」と説明。その背景として、行政処分の影響を挙げている。
「昨年6月に公表されました行政処分により、グループ全体の事業環境に予測しなかった影響が生じ、テナントにおいて事業遂行に必要な資金確保が計画通りに進まず、弊社への賃料支払いを一時的に遅延するという事態に至りました」
今後の見通しは
今回支払いが「一時的に遅延」とされている「シリーズ成田」の分配金は、今後支払われる見込みがあるのだろうか。
この点について文書では、「賃料支払いの資金を確保するため、グループ会社の資産売却活動」を行っている説明。「テナント側からは引き続き支払いの意思は示されている」としている。
その上で「事業継続と出資金の保全に向けた方針について」と題した項目で、以下のように出資金の償還と未払い分配金の全額支払いに向けて最善を尽くす姿勢を示している。
「弊社は事業参加者の皆様に対する責務を最後まで全うする所存です。皆様の出資金は客観的な価値をもつ不動産(固定資産)として確かに存在しております。(中略)各対象不動産の資産価値を保全した上での売却等、あらゆる選択肢を検討し、全ての事業参加者の皆様の出資金償還と、未払い分配金の全額支払いを実現すべく、全社を挙げて取り組んでまいります」
8月初旬に都市綜研インベストファンドの代表が動画配信で、出資者向けに今回の事態の経緯と今後の見通しなどについて説明する方針も示された。
文書は、以下のように締めくくられている。
「末筆となりますが、先般の行政処分以降、長きにわたりご不安な思いをさせておりますこと、そして、そのような中にありましても、本日まで弊社を信じ、事業の行く末を見守ってくださっている事業参加者の皆様に対し、改めて心からの感謝とお詫びを申し上げます。この状況を乗り越え、事業参加者の皆様からの信頼にお応えするため、どうか私どもに事業を推進するための時間をお与えいただけますよう、伏してお願い申し上げる次第でございます」
出資者がとるべき対応は
このような状況で、万が一の事態に備え、出資者にはどのような対応が求められるのだろうか。
「かぼちゃの馬車集団訴訟」などを担当し、投資トラブルに詳しい加藤博太郎弁護士(加藤・轟木法律事務所)は次のように説明する。
「まずは、契約書面やメールでのやりとり、電話の音声録音など、資料やデータをしっかりと保全しておくことです。それらに加えて、なるべく早期に法的措置を取ることが重要です」
一方で加藤弁護士は「一般論として、事業者側の資金繰りが悪化している場合、返還請求訴訟による回収は困難なケースが多い」とも話す。
「上記のようなケースでは、1つの方法として『債権者破産』という選択肢もあります。債権者が裁判所に申し立てて、債務者を破産させる手続きのことです。債務者自らが破産を申し立てる「債務者破産」とは異なり、第三者(=債権者)が主導する破産手続きです。事業者側が自ら破産を選ばない場合に有効な方法です」(加藤弁護士)
破産手続きが開始されれば、「破産管財人のもとで公平な債権回収を図りやすくなる」という。
ただし、債権者破産には800万~2000万円程度の「予納金」(破産手続に必要な費用をまかなうため、あらかじめ裁判所に納める金銭)が必要となる。
「債務者が横のつながりをもち、100人、200人の単位で結束すれば、1人あたりの負担額は10万円程度に抑えることができます。また、裁判所が債権者破産を認める可能性も高まるでしょう」(加藤弁護士)
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成田ゲートウェイプロジェクトの大幅な遅れや行政処分で、その動向が長らく注目されてきた「みんなで大家さん」。今後、どのような進展をみせるのか、引き続き注視したい。
(楽待新聞編集部)