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梨さんの『まかりくがい』に思いを馳せる

梨さんのオモコロ記事『まかりくがい』について考察してみました。

不条理な気味の悪い話として終わらせるべきなのかもしれないですけど、思いついたことを書いていきます。
ネタバレしてます。

どうしても「つじつまをあわせたく」なっちゃうよねぇ……

◉あらすじを整理

主に3つの体験談から成る。

①レポートを書く男性の体験談

・話者の一人称は『
8月終わり頃の夏休み前の出来事
(レポート提出直前のようだから、時系列としては、肝試し後か)

・期末レポートを作成してるときに起こった奇妙な話。

ワードパッドで「元に戻す」キーを余分に押したら、全く見覚えのない画像と文章が出てきた、というもの。

「それぐらいぐちゃぐちゃの、おそらくは人ってことしか分からないような誰かが、お昼の道路を背景にして、ただこっちを見て笑ってるっていう画像で。」

(本文より)


この変な画像が挿入される前の状態にしようとして、さらに「元に戻す」キー押す。

すると、先程の画像に加え、「あとでまた撮りに行く」という覚えのない文が、追加で出てくる。

そして、知らない人の嬉しそうな声で「つづけなきゃやってらんないよねえ」と右耳に囁かれた。
その後は特に異常は起きてないという。

〈疑問点〉

・話者本人は画像について「心霊写真」とは違うと思ってる様子。
パーツをくっつけて「人」を作ったコラージュ画像のようなものか。
→強いて言うならば “人工的な「心霊写真」”?

・本文の最後にある、交差点の画像の人物は「笑ってる」ようには見えないから、『僕』さんが見たものとは別の画像か?
言葉の勢いで「手足も挿げ替えられてる」と言ったのかもしれないが、載ってる画像には足は無いしなぁ……

・冒頭の、人が立っていない交差点の画像は「また後で撮りに行った」ときのものか?


②肝試しに行った女性の体験談

・一人称『
・期末レポートを残すのみというくらいの、夏休み前の出来事
(この体験談を話しているのは地元の大学を離れて、社会人とかになった頃とかの口振りに感じるな〜)

心霊スポットなどの曰くは全くない、人気がなくて車で行きやすい、放置された造成地に車で行った。

男女5人メンバーで、立ち入り禁止の立て札を目印かわりにして、肝試し。
ひとりずつ出発して、目印の看板を撮影して帰ってくる。

話者の次に行ったのは、先程 “これから行く造成地は何故、工事が中止になったのか?” と疑問を口にしていた男子。

なかなか帰ってこないと心配したが、程なく帰ってきた。
が、変なことを言い出す。

「なあ、あそこにある立て札ってさ。
立ち入り禁止って書いてあるあれ、あれって。
あれって、仕方なく書いたんじゃないかな。」

(本文より)


男子学生は、立て札の写真がうまく撮れなくてもたついてるときに、セロテープで裏に何か貼られていることに気づいた。

そこには油性ペンか何かで
「ここにいてくださいますか」
と書かれた貼り紙が貼ってあった。

山に放置されてる看板のはずなのに、わりかしきれいな状態の貼り紙に違和感を持ったとき、うしろから「あのね」と話しかけられた。

振り返ると人みたいなのが真後ろに立っていて、「どうしてもつじつまをあわせたいんだって」と、笑いを堪えながら言ったという。

いきなり怖いこと言い出すので、みんなで慌てて山から降りて帰った。


〈疑問点〉

・「ここにいてくださいますか」とは誰に対しての言葉?
→怪異or貼り紙を見た人?

・途中にあった「真っ暗な写真」は男子学生が撮ったもの……?
女子学生は「だいぶぶれた状態の写真を一枚」と言ってるので、ぶれてるのがわかる何かが写ってた写真だと推測される。
なので、女子学生以外の誰かのものと推測される。

→あと、記事上の画像では一見分からないが、加工してみると左側に見切れた白い顔が写っている。

男子「だから何回写真撮っても顔しか映らないんだなあって」の言葉は、この顔のこと?


③肝試しの後日談

・一人称『自分
・②の話者とは違う人物っぽい。
・肝試しで怪異に話しかけられてしまった男子学生のその後がわかる。
“その時の話さえ振らなければ” いつも通りで、普通に過ごしている様子。(→“その時の話” を振るとどうなっちゃうんだろう……)
・肝試しの翌日の自身の奇妙な体験も語る。

肝試しの日は、疲れもあってシャワーも浴びずに寝た。

翌朝起きると、昨日一緒に肝試しに行った女子学生から「何かLINEに送ってきたか?」という内容の連絡が来ていた。

確認してみると、話者は記憶にないが「自分がLINEを女子学生宛に送信して、それを取り消した表示」がびっしり並んでいたという。

・この話者の想像の話もしてくれた。

あの造成地に誰かが家を建てようとしていたのは、おそらく “建物にこわいものがいる” というように理由付けをしたかったのだろうと。

「多分そうしないと耐えられないと思うんですよ、何の脈絡も因縁もなく、誰かもわかんないやつがただそこにいるなんてことって。」

(本文より)

〈疑問点〉

「はい、曰く付きの場所ではないんですよ。元々どこ行こうかって話をしてたときにそういう場所はやめようって話になってて、それこそあいつが馬鹿みたいにそればっか言ってましたけど。

(本文より)

→「あいつ」とは誰?
曰く付きの場所を頑なに拒否していたということか。

「それはいやですよ。
いやですよね。
【ざまあみろ】←反転隠し
だから肝試しの後、
あいつもあそこで首吊ったんですよ。」

(本文より)

→怪異に会ってしまった男子学生のことは「彼」と呼んでいるので、「あいつ」は別の人だと思われる。


◉考察

◆男女5人の内訳

この物語に出てくる人たちは全て繋がりがあると仮定して考察していきます。
肝試しに行った男女5人の内訳を考えてみる。

※口振りから考慮して性別を判断
男……♠ 女……♡

1、①の話者→『僕』♠
2、②の怪異に会った男子
  →『俺』♠=②③で言う「彼」
3、②の話者→『私』♡
4、③の話者→『自分』♠
5、③で首を吊った「あいつ」→♠♡どちらとも取れる。

◆時系列

・③の「だから肝試しの後、あいつもあそこで首吊ったんですよ。」
という言葉からは、肝試しの直後に首吊りをしてるニュアンスを感じられる。
②はレポート作成し始める頃合で、①はそこから日数が経ってレポート提出期限直前。

よって一連の流れを時系列にすると②→③→①の順だと思われる。
(話の取材時期は別として)

・また、「その時の話さえ振らなければ彼はいつも通り」とのことなので、怪異に会った男子学生以外の生存者全員から体験談を取材したのだろう。

◆「あいつ」が首吊りをした場所は?

たぶんニュアンス的に、肝試しをした造成地だと思うんだけど……
周りには木がいっぱい生えてるようだし。

すると、車でないと行くのが難しい場所だから、「運転手』=「あいつ」なのかな?
口調的にたぶん男だよね。



◆「記憶にない」ことの意味

「起きたのはお昼の十一時頃で。なんか感覚として眠りが浅いというか、疲れが微妙に残ってるような感じがしてたんですけど」

(本文より)

→①のレポート作成してた大学生。
朝方に寝て昼に起きたが「疲れが微妙に残っている」のは、寝ていると思っていた時間に実は起きて、あの画像を貼り付けたりする作業をしていたのでは?
覚えてないだけで。

◈寝てる間に無意識に体を操り、写真と文章をレポートに挿し込んで、それを消させた何者かがいる?

◈③の話でも、無意識のうちにLINEで何かを送信して、それを取り消す動作をしている。


◆反転隠し文字について

・【ざまあみろ】と反転隠し文字があるが、これは『自分』さんから「あいつ」へのの言葉か?
(あるいは、「つじつま合わせ」をしてる読者への呪詛?)

→『自分』さんの言葉の端々から「あいつ」への刺々しさが感じられるんですよね……

・このへんは妄想ですけど、あの造成地を肝試し場所として選んだのは『自分』さんでは?
最初から「曰くは無いけれど怪異の出る造成地」だと知っていたのでは?

そんで「曰くがない」場所にこだわって肝試しをしようとしていた、気に入らない「あいつ」は、「曰くがない」ゆえに怪異が出ることにつじつまをあわせられなくなり、耐えられなくなって、自分があそこで死ぬことで「怪異が出る理由」になろうとしたってこと?

◆造成地を作った人について

・あの造成地に家を建てようとした人は、『自分』さんの推測通りの理由で家を建てようとしたのならば。
あそこに近寄らなければ怪異に出くわさないだろうに、わざわざ家を建てて “理由付け” をしようとしたのは何故?

→逆に、かつては身のまわりに出没していた「曰くの無い怪異」に辟易して、怪異にお願いして、あそこに居てもらってるとか?

・本来は建物を作って、それを “怪異が出る理由” にするはずだったろうに、造成地の状態で終わっているのは何故?

→途中で死亡するなどして、家を建てるまで至らなかった?
『自分』さんが、その家族の生き残りだったりして……貼り紙を定期的に替えてたりして……(妄想)




◆怪異は2ついる?

妄想を語っていきますよ!

・なんとなくだけど。
①で「つづけなきゃやってらんないよねえ」と話しかけてきた怪異は、②の「つじつまを合わせたいんだって」の怪異とは別物な気がする。

・「つづけなきゃやってらんないよねえ」とは何を「続ける」のか?

→「つじつまを合わせ続ける」とか?
首吊った「あいつ」が、死後もつじつまを合わせ続けようとして怪異に変質してしまった……と妄想。

・①と③で、話者が寝てる間に奇妙な痕跡を残していたのは「続ける」怪異の仕業かな。

たとえば、「あいつ」以外が生き残ったのは “怪異からの干渉”を”取り消していた” から……とかいう理論で理由付けをして回ったとか。

①の人工的な心霊写真を挿入(怪異からの干渉)→消す
③の大量のLINE送信(怪異からの干渉)→取り消し

・②の話者は③のLINEを受信した側で変な体験の当事者としてカウントされた。
・看板の怪異に会った「彼」は、自分なりに落とし所をつけていた。

◈あとは、肝試しで看板の写真を撮ったことも大事な気がする。

看板の写真(ブレたり、真っ黒だったり)を一度撮って、その後にたぶん消去なりしてるだろうから。
これが「取り消し」の動作にあたるのでは?

怪異に会った「彼」の言い分だと、顔が写っちゃうみたいだったし、看板の写真を撮ることが「怪異への干渉」になっていたのでは?(気づくか気づかないかは別として)
そんで、失敗したいらない画像は大体の人は捨てるでしょ?

肝試し、最後のひとりだけ写真撮ってないんだよね。
それが運転手の「あいつ」だとしたら……?

◆記事の画像について

・一番最後の、交差点とコラージュ人間が写ってる画像。
あそこに書いてある「覚えがない」って一文は、もしかして梨さんの身に覚えのない画像がいつの間にか、このオモコロ記事に挿入されてたということ……?

◆冒頭の文の意味

・そういえば、タイトル「まかりくがい」の意味は、“苦界”(苦しみの絶えない、人間界)から “まかる”(退去する)でいいんですかね……

・あとこの文章ね。

めったなものだすなここはよつかどひとがきくおもしろやわかまつさまのえだのさかえるはもしげるおもしろや

(本文より)

・検索すると、一部分が博多の『祝いめでた』の歌詞にヒットする。
めでたそうな雰囲気に感じるけど……
「めったなものだすな」って不穏だよね。

「おもしろや」ってのは、この作品が梨さんのオモコロでの初連載になるから、その祝いの歌も兼ねてたりする?


・あとは「よつかど」が”交差点”ではなく “造成地の四角い形” を指しているとすれば、「えだのさかえるはもしげる」は敷地が草ボーボーで周りは林っていう状況にマッチしてる気もする。

そこで人間が引き起こす「つじつま合わせ」を見て笑って面白がってる、看板の怪異の気持ちを歌ったとか?

______

など、考えて力尽きましたー
わからん……つじつまを合わせきれなかった〜😅

前に他の方がツイートで、「真っ黒の画像を(ダウンロードして加工して、人の顔を確認後、)消去する一連の作業が、作中の行動をなぞってるようだ」と言っていてヒェッとなったな……
まんまとやっちまったですよ……😖

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梨さんの『まかりくがい』に思いを馳せる|はづき
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