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梨さんの『瘤報』について考えたこと

『瘤シリーズ』の3作目、『瘤報』についての考察記事です。

2021年4月9日から16日まで、期間限定で「どっとうpろだ」にて公開された作品。

ネタバレしつつ、色々考えたことを述べてますので、未読の方はまずBOOTHでダウンロードして読んできてください☺️

『瘤話』にも『瘤報』は入ってますが、
オススメは『瘤報[relive]』の方です。
PCお持ちの方は是非こちらで。
当事者感が強く感じられて、無二の体験ができます💻😉


◆情報の整理

◈『瘤報[relive]』の中身

・フォルダ「6」内に[フォルダ「5」]と[will.txt]
・フォルダ「5」内に[フォルダ「4」]と[20210408.txt]と[業報.pdf]
・フォルダ「4」内に[フォルダ「3」]と[20000507.txt]
・フォルダ「3」内に[フォルダ「2」]と[20000505.txt]
・フォルダ「2」内に[フォルダ「1」]と[20000503.txt]
・フォルダ「1」内に[瘤報.wav]

ダウンロードした読者が最初に目にするのはフォルダ「6」です。
[瘤報.wav]に辿り着くまで、入れ子になったような、いくつものファイルを経由します。


◈[業報.pdf]

内容は、「瘤報」を手に入れたとある男性の昔語り。

・20代後半に地元の福岡県に戻り、家電屋でパソコンの出張メンテナンスのような仕事をしていた。
・仕事の経験上、パソコンにも詳しく、アングラ系の画像動画を集める趣味を持っていた。
・男性はある日、ネット上で「瘤報」というファイルの噂を聞く。

〈瘤報についての噂〉
90年代終わりごろ自殺した日本人女性の、自殺に関わるあれこれが記録されているという。
死の直前に残した遺書、自殺している様子、などではないかと囁かれているが……
詳細は不明で、噂ばかりが駆け巡っていたという。

・男性も勿論興味を持ち、「瘤報」を手に入れようと、よりディープな掲示板に常駐するようになった。
そこで運良く「瘤報」を譲ってくれるという人に出会い、取引が成立。

・届いたMOディスクの中には、これまで譲渡をしてきた先人たちの書いた申し送り的なテキストと、「瘤報」という音声ファイルが入っていた。

テキストを読むのもそこそこに、まずは「瘤報」を再生した男性。

〈瘤報の内容〉
時計っぽい音とパソコンのブート音といった部屋の中の環境音。
続いて、籠ったところでマジックテープを剥がしてるみたいな音がしたと思ったら、おかしく聞こえ始めたという。

貧血のように力が入らないような、吐き気が込み上げてくるような、とにかく気分が悪くなり、シークバーの終わりまで耐えようとしたところ、最後のあたりで「ぐぷっ」と何かを吐くような音がして終わった。

音声が終わった途端、気分の悪さは急に治り、再び聞いたときには何も起こらなかったという。

・フォルダに残っていたテキストファイルを読んでいくうちに、男性は違和感を覚える。
明言されてないものの、これは先人たちが残した「遺書」にあたる文章だと気づく。

・その後、男性は普段通りに生活をしようとするが、職場にかかってきた電話により、それは叶わなくなる。

若い女性からのパソコン修理依頼の電話を受け、女性宅へ向かう。
一見するとおかしなところはなさそうだったが……
男性はパソコンの中に「瘤報」という音声ファイルがあることに気づく
そこに先人たちの遺書は見当たらなく、まるでそれは「瘤報」のオリジナル音声……

・「パソコンが変なんです」「何回も削除したのに削除されてなくて」などと言っていた依頼主の女性の様子も段々とおかしくなり、彼女は包丁を口に含み椅子から倒れ込んで自殺をしてしまう

・それ以来、彼女は度々男性の前に現れては「パソコンが変なんです」と訴え、口に包丁を含んで倒れ込むことを繰り返しているのだという。


・読んでいる途中で、語り手の男性は”この場にいるもう一人の誰か”に話しかけているシーンが度々ある。

「何回もやってみようとはするんですけど、全然うまくいかなくて」や「キーボード打とうにも手なんてとっくにありませんから」というセリフから、男性は自殺に失敗するか何かして、不具の身になってる模様。

そのまま「瘤報」を引き継げずに20年以上経過。
今回新たに「瘤報」を譲った相手に、後の引き継ぎや自殺の手伝いをお願いした……ってとこですかね。

・女性が何度も現れるという話で「いえ、私は夢の中の話ではありませんよ」と言っていることから、“この場にいるもう一人の誰か” は夢の中で女性に会ったことのある人物……おそらく梨氏だと思われる。


◈[20210408.txt]

・中身は「彼は床に落とされて死にました。」の一文のみ。

・[業報.pdf]の語り手である男性の最期を説明してる。
手が無い男性の代わりに梨氏が作成してあげた「遺書」代わりの文。

「遺書」を残した4人目。
2021年4月8日に亡くなる。

◈[20000507.txt]

・[業報.pdf]の語り手男性と取引をした人。
・丁寧な口調で「瘤報」を受け取ってくれたことへの感謝が述べられている。
・「パスワードはその日の8にしておいてください」と残している。

・一人称が「僕」と「私」の2つあるんだけど何で?
女の「私も手伝います」を聞きすぎてつられた?😅

「遺書」を残した3人目。
2000年5月7日に亡くなる。

◈[20000505.txt]

・「残念ですが、しょうがないとも思います」「あなたも頑張ってください」と自死への諦念が見られる。
・パスワードについての言及はない。

「遺書」を残した2人目。
2000年5月5日に亡くなる。

◈[20000503.txt]

・「あいつはずっと死に続けてるのでどうやら失敗したみたいなのが唯一の救いですさようならざまあみろ死ね」という、呪詛のような文のみ。
・パスワードについての言及はない。

「遺書」を残した1人目。
2000年5月3日に亡くなる。

◈[will.txt]

・この作品の導入的な文章。
2021年4月9日に書かれている。
(→リアルタイム当時の『瘤報』公開日と同日)

・おそらく書いたのは梨氏。
「それでは、どうかお元気で」は、辞世の一文にも見えるし、呪いを振り撒かれた読者たちへの言葉にも見える……

・パスワードのことを男性に託されていたはずだが、ここには記載されていない。

・あと、この部分ね。

「このフォルダには、幾つかの文章・テキストファイルと、音声ファイルなどが格納されています」

([will.txt]より)

色んな方のツイート漁った人ならわかると思うんですが、おそらく[瘤報.wav]の中に隠されてる画像ファイル[escaped.jpg](特別な方法で抽出)を指して「音声ファイルなど」って書いてあるんだろうなぁ~

隠し画像、頑張って出してみたけど……
あれ、何なんですかね?
最初に気付いた人、すごいなあ。

サムネと開いた画像が違うのが不気味。
サムネは木目?人の肌にも見えるような……?
開いた方は、女性の顔?成人してそうだよね。

◆感想

・『かわいそ笑』を読んだ時も、昔のインターネット界隈の描写がすごいな〜、とは思ってましたけど。
より具体的にアングラ世界の出来事(データの取引のあれこれ)を垣間見てしまった気がしてドキドキした。

・今作は「パソコンでのファイル閲覧」という形を取ることで、作中人物の追体験どころか、当事者に仕立て上げられてるのが最高でしたね!

・『瘤報[relive]』を開くと「6」というフォルダが最初に出てくるんですけど、これ読者は「6番目」だよって意味合いですよね?😇

・『瘤報』という字面と、あの時計の針の音から「時報みたいだな〜」って連想してしまう。

・これリアルタイムで追ってた人は、怖くて面白くて最高だったんでしょうね。

人は「期間限定」という言葉に弱いもの……興味をそそられて、入手して、パスワードで開いて……
まんま、作中で語られた “自分から「見たい」と思って躍起になる人” になってますやん。

・公開期間が終わってから『瘤報』を知って、「見たい」となった人はダウンロードした人に「譲ってもらう」しかないのも、当事者感あって良い☺️

◆疑問点・考察など

今作、特に分からないことだらけなので、疑問点を羅列したり、憶測に憶測を重ねて色々こじつけながら考えていきますよー

◉「瘤報」の噂について

・この噂、どういう経路でネット上に流れたんでしょうね?

現実的に考えるなら、女性の遺体の第一発見者、家族や友人などを経由?

非現実的に考えるなら、自殺した女性自身が死後に噂をばら撒いた?

・女が言う「他をあたろうと思ったんです」の先が、インターネットで興味を持ってくれた人間ってことになるのかな……

女の目的としては、まずはパソコンのファイルを削除してくれる人物を求めてた感じだよね。
ある程度パソコンに精通してる人?

「業報」の男性と、その前の所有者はおそらく同じ福岡県内に住んでいた、という話も “選定” で選ばれる要素だったりするのかな。
その前の人たちも、2日おきくらいの短いスパンで亡くなってるから、近くに住んでいた可能性高いのでは?

→茶髪の女性が、直接コンタクトをとれる範囲が福岡県内だとか?

◉「瘤報」の中身について想像

・カチカチ鳴ってるのは「時計の針の音」
べりっ、べりっ、とマジックテープを剥がすみたいな音って何なんだろう……?
『瘤談』女性が着けてたお面(仮)と同じものを剥がす音?かとも思ったけど、そしたら紙のガサガサ音も入りそうだよね。

「ぐぷっ」という吐くような音は、包丁を口に含んで、血を吐いてるイメージだけど、どうなんだろな。
椅子から倒れ込んでたら、その音も入りそうだから、単純に刺しただけかな。

・あと、男性が描写した「瘤報」の音声と、私達が聞いた[瘤報.wav]って違くない?
ベリベリ音が聞こえない気がするんだけど……

・ファイルを受け取って「瘤報」を初めて聞いたときの男性の様子。
もしかしてODの追体験みたいになってる……?(『かわいそ笑』でも似たようなシーンあるのよね)

ざっと調べたところレスタミンのODの副作用として「吐き気」「身体が重く感じる」とか出てきたので、まあまあ合致するのでは?

◉女は何者?

・パソコンの修理依頼で訪れた女性宅の場所、『瘤談』の地蔵尊のあたりですよね……やっぱり関連あるのかな。

女性の見た目も「茶色の短髪で、手入れをしてなくて跳ねてる感じ」だというので、『瘤談』『瘤報』両方の作品で共通している。

・男性の目の前で何度も何度も包丁を口に含んで飛び降りて死んでいるので、生者ではないでしょう。

遺書のテキストファイルにも「あいつはずっと死に続けてる」って書かれてるから、きっと「瘤報」を聞いた人のところに現れては死に続けてるんでしょうね……

業報の男性は「幽霊じゃないですよ」とは言ってるけど……
何人もの命を取って、もはや「呪い」とか、そういうものになっているのかもね。

◉女は何をしたいのか?

軽く書き出してみると……

ダウンロードした覚えもないのに、いつの間にか勝手に新しいファイルが入っていた。

何度も削除したのに消えない。

聞いてみたらそれは娘が自殺して死んだときの音声。
あいつが録音していた。

あいつは中途半端で駄目だから他をあたろうと思った。
他をあたる前にこれをやり直さないといけないから、早く削除したい。

しかし、それも難しいと思っているので「私も手伝うことにします」

う~ん、わからん……何を指してるのか曖昧すぎる😞

〈疑問点〉
・「娘」とは女性の子供か?
→当時20歳前後の女が早くに産んだ子供だとして、大きくても幼稚園児くらいの子供?
そのくらいなら『瘤告』の結依とも年齢は合うのよね……

・娘が死んだ理由は?
→女が言うには自殺っぽいよね……
でも未就学児が自殺しようとする?
ネット記事では海外の6歳の子の例はあるようだけど……

・「あいつ」とは誰か?
→娘の死に無頓着な父親……ってイメージ。
『瘤談』で探されている男のイメージと被る。

・何故「あいつ」は自殺音声を録音したのか?
→なんでなんだろ……
自殺に追い込んだ相手への当て付けとか、娘が生きた最期の記録として?

・女は他の人をあたって「あいつ」が出来なかったことをさせようとしている?
→「誰がどういう風になるのかどういう風になったのかをちゃんと書かないといけない」という部分かな。
→自殺の前後の様子を詳しく書き起こすということ?
それを怠って「あいつ」は音声だけで済ませようとしたから、女に怒られている?

・「私も手伝う」とは?
→おそらく自殺がその手段なんだろうけど……

____

・あいつが「これでもういいだろうって勝手なことを言ってた」から、女はそれをいつも否定して正そうとしていたみたい。
女の言い分としては「録音だけじゃだめなんです、誰がどういう風になるのかどういう風になったのかをちゃんと書かないといけない」らしい。

→なのに、あいつは何度言っても、手本を見せても中途半端だから見放した?

・業報の男性のセリフもわからない。
「だってね、瘤報が消えるわけないじゃないですか」
→そう断言する理由は?

「もうとっくに全部が、そう全部が台無しになってしまっていて、だから始められるわけないんです」
→女はもう死んでいるから、やり直しようがないということ?
それとも「全部が台無し」になってるからリカバリーしようがないということ?


◆こじつけてみたもの

ここまで、重要そうなこと、気になったことを書き連ねてみましたけど、話が見えてこないので、あとは妄想するしかない。

今作、パソコンのフォルダやらファイルやらが重要なお話でした。
なので、それを念頭にして考察し直してみる。

💻💻💻💻💻💻

・「だってね、瘤報が消えるわけないじゃないですか」というのは、ネット上で噂として “「瘤報」というファイル” が多くの人に認知されてしまったから?

業報の男性が行った女性宅、そもそも現実には存在しない空間だと思うのね。
もう女は何度も死んでるし。
そんで、そこにあるパソコンも現実世界のものではない。
削除しても削除しても残り続ける「瘤報」のファイルは、もうそういう【概念】なんじゃないかしら?

・あとは、今回梨氏が手に入れた「瘤報」のフォルダとは別に、他の人たちが「瘤報」の譲渡を繰り返してる場合も考えた。

たぶん、この女は福岡県内しか動き回れないのではないか?
フォルダに遺書を残した人たちの死亡日が近すぎるのよね……
県内で近場だから、データを郵便なりで送ってもすぐ届く。女が現れる。
そして直後に自殺する。の繰り返し。

で、県外の人のところは女がやって来ない(干渉できない)ので自殺せずにすみ、欲しいと言う人がいれば譲渡する。

「噂の瘤報」として、もうちょっと話題になりそうなもんだけど、あの音声だけ聞かされても、背景が分からなければ「気味が悪いけど、よくわからないな」で終わりそうなのよね。拍子抜けというか。(あの気分が悪くなる初回仕様も県外は影響から免れるとする。)

そんな感じで細々とでも譲渡され続けていれば、拡散された全部のデータを完全に消すのなんて無理じゃないですかねぇ。

・「ファイルを消せない理由」を検索してみた中で、当てはめてみると面白いな〜と思ったのが……

「別のプログラムがファイルを開いてるから操作を完了できない」パターン。

「県外の人=別のプログラム」として見立てる。

・あと、今回の自殺の連鎖の理由をパソコン関連でこじつけてみると……

「ファイルを削除できないのなら、別のデータで上書きして保存!」という方法なのかな〜、と。

削除できない「瘤報」の自殺音声を、他の人がどうにかしようとして取った苦肉の策が「自分の自殺で上書き」
だから女は「お手本」として何度も目の前で死んでみせてる。とか?

・そういえば、遺書のテキストの中に「そろそろ落ちます」って文言があるんですけど、初見時は普通にネット上での「退出の言い回し」としての「落ちる」だと思ってたんだけど……
たぶん、本当に「落下する」ほうの「落ちる」だったんだな〜、って……
気づいた時、とても嫌な気持ちになった😵

たぶん、みんな女の「お手本」通りに「落ちて」死んでるんだろうね……

◆その他に考えたこと

・そういえば、[will.txt]にはパスワードについて書かれてなかったけど……

『瘤談』での、夢の中の女さんは「もうだれでもよくなってる」から、その意を汲んで、梨氏も「だれでも見られるように」拡散することを選んだんですかね?

・それとも、自分が助かるために拡散したパターンか?

業報の語り手さんが「あの子の声で聞こえにくくなってますか」と言ってたけど、語り手さんには「あの子の声」は聞こえてなくて、梨氏の様子を見て気づいた風だよね。

つまり、『瘤報』を聞いてしまった人間が、同時期に生きていると、新しく聞いた方に取り憑くのか?

男性の話を聞き取りしてるときも、後ろで「パソコンが変なんです」ってずっと言ってたのか?

だから、新しく誰かに聞かせて、女を擦り付けようとした……?

📁📁📁📁📁📁

これで、思いついたことは大体書き終えました。
でも、そもそも何で娘は死んだのか、とか何故「瘤報」の音声を録音したのか、とかは全くわからない……
なんで?🥲

3話まとめて考えないと難しいのかな〜

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コメント

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ホラー作品の考察が大好きです。
梨さんの『瘤報』について考えたこと|はづき
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