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【感想】『穢れた聖地巡礼について』【考察】

やっと読みましたよ〜。
『近畿地方のある場所について』で鮮烈なデビューを果たした背筋さんの新作長編!

今回もカバーデザインが良いよね……!
スタイリッシュさと怖さが両立してて好き。
あと、よく見ると怪異の姿もちゃんと写ってるという……😱

今回は、主に感想や思いついたアレコレを書き散らしていきます。
ネタバレしてます。

あと、物語をより深く理解するためにこちらの掌編小説も参考にしています。

◎ざっくり感想

・『近畿地方の〜』は、手記や記事といった短い文章を断片的に提示する形のモキュメンタリー作品でしたが、本作は一般的な小説らしい形式でしたね。

冒頭カラーページは、作中で言及していたファンブックの一部……というテイで面白いつくりです!

・主な登場人物である小林、池田、宝条のキャラ立ちがとても良い!
作中、会話文だけで進むことがちょいちょいあるんですけど、キャラが立ってるお陰で誰が喋ってるのか、ちゃんと分かるんですよね。

あと、会話だけで進むがゆえのテンポの良さが、雰囲気作りに活かされてる点もあって、私は好きでした。
なんかこの「3人での打ち合わせ」のテープ起こし文章を読んでる気分になるというか……

・企画を面白くするために怪談でっち上げようぜ!っていう罰当たりスタイルが、まず面白い。

・人間の嫉妬心、被害妄想、逆恨み、悪意の描写がリアルで、実際にそこらにありふれてそうなのが嫌だった。
他人事じゃないというか……程度は違えど誰しもが持つ感情だよな〜。

・2回目読むと、小林と宝条の2人が意図的に池田の不安を煽るように喋ってるのが分かって嫌ですね……

あとは宝条が、さらりと言っていた「ヤラセのほうが実害なくて済む」ってセリフも、あとから効いてきた。

小林と宝条の2人で「害をなす霊の話を脚色して怪談記事として公表してる」ことが提示されますからね。
これ、読んだ人に害が出る記事だよ!ってことでしょ。
本物の「自己責任系」作ってるじゃん〜

・本作は、「怖いお化けに目をつけられて酷い目に遭います」っていうよりかは「これはあなたがた人間が引き起こしてる自業自得です」感が強くて、解決しようがないのが、なんとも。

・『近畿地方の〜』は “お憑かれ様系” の怖さで、読者が当事者にされてるけど。
『穢れた聖地巡礼〜』は、「自分もいつの間にか巻き込まれてるかも」っていう遅効性の怖さがあるなぁ、と思いました。
あとから、だんだん怖さが増してくる☺️

例えるなら『近畿地方の〜』は「時限爆弾のスイッチ押しちゃった」気分になって、『穢れた聖地巡礼〜』は「地雷が確実に埋まってることが判明して、いつか巻き込まれるかもって不安になる」気分。


◉作中の設定について考察

個人的に調べたり、解釈したアレコレを書き出します。

◈作中の心霊スポットについて

【変態小屋】(第一章より)
幼児置き去り事件を起こした幸江は、“その小屋に憎い相手の顔写真を投げ入れると呪い殺してもらえる” という認識でいた様子。

【人形屋敷】(第一章より)
人の名前を書いた人形を “首から吊ってる” ので悪意を感じる。
おそらく、これも名前の相手を呪うための場所と推測できる。

【カラーコーンのある空き地】(短編掌編『私の夢』より)

細い路地の先、雑草生い茂る空き地にある、赤いカラーコーンを四隅に配した土がむき出しの地面。そこには沢山の小銭が散らばっている。

私は、そこへ小銭を投げこもうと手を伸ばし、一瞬ためらった。
私は今、一線を越えようとしている。
人として、大切ななにかを失おうとしている。

(短編掌編『私の夢』より)

→作中に出てきた心霊スポットは「風船男」と関連のある「穢れた聖地」だと推測できる。

変態小屋では写真を。
人形屋敷では人形を。
カラーコーンの空き地では小銭を。
これらを「穢れた聖地」に捧げることで「一線を越える」という “意思表示” になるのかな、と思った。

→この一線を越えれば、呪った側と呪われた側の両者とも「六部殺し」の輪廻に加わることになる。

・そんな “意思表示” の物品が夥しい数あるってことは、輪廻の輪に入ってしまった人の数も推して知るべし……
小説で描かれた人たちは、ほんの一部ってことだよね〜😣

◈「六部殺し」について

六部殺し(ろくぶごろし)は、日本各地に伝わる民話・怪談の一つ。
ある農家が旅の六部を殺して金品を奪い、それを元手にして財を成したが、生まれた子供が六部の生まれ変わりでかつての犯行を断罪する、というのが基本的な流れである。
最後の子供のセリフから、「こんな晩」とも呼ばれる

(Wikipediaより)

→殺された六部が、己を殺した者の子供として転生し、罪を突きつける話。

・作中には、この転生した六部と同じように、幼少時に自身の親に罪を突きつけただろう人物が何人も出てきます。
本人にその記憶は無いようだけれど。

「六部」とは、日本廻国大乗妙典六十六部経聖(にほんかいこくだいじょうみょうてんろくじゅうろくぶきょうひじり)の略称。
写経した法華経を66ヶ所の霊場に1部ずつ納める巡礼者。
信仰目的だけではなく、自らが犯した罪に対する贖罪の目的で巡るものもいたという。

→「六部殺し」の民話では被害者であった六部も、過去に罪を犯した人物である可能性があるのよね……

◈穢れた聖地とは

・作中に出てきた心霊スポットは六十六部が巡っていた寺社の成れの果て。

本来なら、寺社が建てられ信仰が集まり、正のエネルギーに満ちる場所であったが、時とともに廃れ建物も信仰も無くなり、関係のない新たな建物ができたりした。

・その場所で人間が引き起こした “穢れ” により負のエネルギーを溜める場所へ変質。
(=穢れた聖地)

輪廻に囚われた六部は、自らが犯した罪の贖罪のために巡礼するものの、もはやそこは穢れた聖地であり、負のエネルギーを取り込み転生していく。
……という流れかな?

・調べたところ、「写経」の目的は主に祈願、供養、功徳。

実際の巡礼僧がどのくらいの長さの写経をして奉納してたのかはわかりませんが、法華経ってめちゃ長いのね……!
これを写すとなれば大変な作業。

本来ならば労力を割いた写経を聖地に納めるものなのに、時代を経てその流れも変化。
心霊スポットで、お手軽に呪いを願かけするようになってしまった。

◈六部の人たちの気質について

・作中にて「六部殺し」でいうところの「六部」として生まれたと予想できる人物。
池田をはじめ、何人も登場しました。
今世、前世で呪い呪われが入り乱れてるので、数えてみるとけっこうな人数だな……

ここでは、彼らの生き様の傾向を書き出してみます。

≈≈≈

・親が殺した人物の転生体であるため、親に罪を突きつけたことで、恐れられたり気持ち悪がられたりして愛されないことが多い。
(親に愛された六部も存在するが、実の親ではなく育ての親である。)

・強く孤独を感じている。
漠然と「満たされない」感覚を抱いており、そこを満たすことに執着する。
特に幸せになること、家庭を持つことに憧れやすい。

・愛に飢えてるがために、パートナーはそれを重荷に感じ離れていく。

・妬み、僻みの感情が特に大きい。

・幼少期から夢の中に風船男が出てくる。
さらに、憎い相手を呪い殺す方法を教えてもらえる。
その時、憎い相手への殺意が増幅されるのか、衝動的に呪いを実行する。


◈風船男について

物語の各話から抽出。

〈風船男の特徴〉
・通常の人間よりも大きな頭をしていて頭身がおかしい。
・口や目など顔のパーツが不自然な大きさや位置にある。
・ふらふらと頭を揺らしながら歩く。
・男だけでなく女バージョンもいる。
・夢の中に現れる。
・人を呪い殺す方法を教えてくれる。

・第四章にて、敬一の彼女が輪廻に入って「風船男」と同じ存在になった描写があります。
彼女が、かつて聖地だった場所を巡りながら「生まれ変わる」云々言っていることから、「風船男」の姿は「胎児」をイメージさせますね。

→頭が大きくて、バランスが取れずふらふらしてしまうのは赤ちゃんの特徴と一致する。

・そして、巡礼とともに大きくなった頭の中身は……

今や、宿痾あたる人間の欲で穢れた聖地。
その穢れで脳漿を満たし、罪を贖うことで、清麗な私として生まれ直すために。

(p.227  第四章より)

つまり頭の中(=脳漿)には、人間の欲や穢れが詰まってるようです。
だから、「六部」として生まれ落ちた人間は嫉妬深かったり、妬む気質が強いのか?


◉思ったこと色々

◈輪廻が終わらない理由

・「六部」として生まれ直しても、人を恨まずまっとうに生きれば輪廻の輪からは抜け出せるはずですよね?
宝条の父から、池田が言われたのはそういうことでしょう。

でも、彼らはそうするのが難しい性質を持って生まれてくる。
病的なまでの嫉妬、妬みの感情。

たぶん輪廻の輪で「穢れた聖地」を巡礼して、人間の負のエネルギーを溜め込んでくるから。

そこを理性の力で踏みとどまれるかが、分かれ目なんでしょうけど。

------

・さて、ここでひとつ浮かんだ妄想を……話半分で読んでください。

作中で唯一「風船男」の視点を描いたのが、敬一の彼女の巡礼シーンです。

ここから伝わってきたのは、“巡礼は気持ちの良いものであり、終わってほしくないものである” というイメージ。

・自身を呪い殺した相手への復讐のために生まれ変わるのが目的かと思いきや、逆に巡礼することが目的になっているような……?

仕組みとして、ずっと巡礼を続けることはできなくて、いずれ生まれ直しすることは確定しているから……

自身が生まれ直し、復讐を遂げたあとも、あの輪廻に戻れるように立ち回っている……?

・「風船男」として呪いの助言をすれば、「新たな六部」を生み出すきっかけとなり、輪廻の仕組みは続いていく。
また、「六部」が増えれば巡り巡ってどこかの世で、自分を呪い殺してくれる人が現れるかもしれない。
そうすれば再び輪廻の輪に入れる。

……というのが頭に浮かんだ。


◈池田を取り巻く「怖さ」

・今作、いろんな方向からの「怖さ」が描かれていて面白かったですよね〜

まずは「ヒトコワ」。
良きビジネスパートナーに見えていた小林が、実は最初から池田を恐怖に陥れるつもりだったこと。

企画を通すために、池田を “幽霊に取り憑かれたユーチューバー” に仕立て上げようとしていましたね。

自分の食い扶持を稼ぐためだったら、他人がどんな状況になろうと構わないという小林。怖……

・次に「心霊的な怖さ」。

小林は、心霊スポットの情報と池田の心霊体験(本物の幽霊か幻覚かわからない)を都合よく切り貼りして「優子の霊による “六部殺し”」のストーリーを組み立て、池田に信じさせた。

しかし、ここまでの一連の出来事が偶然というには出来すぎており、小林たちは何者かの意思のようなものを感じ取っていた様子。
2人は深入りしないように、これ以上考えるのはやめましたが……

読者は、本書を読み進めるうちに「六部殺し」にまつわる恐ろしい何かが、裏で本当に起きていることを察しましたよね。

物語の最後。
優子が実は生きていたことが明らかになり、今にも優子を呪い殺しそうな雰囲気の池田。
「六部殺し」の輪廻から逃れられない未来を予想させられました。

嘘の話を作ったつもりでいたら、それは本当に存在するもので、何なら隣人は最初からそれに組み込まれていましたよ……という感じ?


◈「六部殺し」の類型について


・六十六部の修行僧たちが向かった寺社は、日本全国に散らばっている。
そして、「六部殺し」の説話もまた、大まかな筋は同じ形で日本各地に伝わっている。

シチュエーション違いの似たような話が沢山あるってことですよね。
これって、似たような出来事が各地で起こっていた……って解釈もできるわけで。

・第零章にて。
「風船男」から派生したような怪談について触れていたけど……たぶん逆で、昔から「風船男」は目撃されていた。

つまり、昔から「六部殺しの輪廻」は綿々と続いてきたものなんでしょうね……

◈荒魂の話

ふせったーに書いた内容をこちらにも載せときます。

・刊行記念書き下ろし掌編『私の夢』にて、宝条が言ってた神社の神様の話が人間にも当てはまるな〜、と思うなどした。

宝条が言う「神社の神様」は「無理なお願いをすると、聖域を穢されたと怒って荒魂になって怖いことになる」らしい。

「神社の神様=人間」、「聖域=その人間のプライド」で置き換えてみると……?


≈≈≈

✩『私の夢』の主人公である女性

この人は、子供の頃から「周りが望んでいるだろうふるまい」をしてきた。
(=願い事をされた神社の神様)

小説家になるという夢は、実力的には不可能。(=無理なお願い)

だから折り合いをつけて忘れようとしていたのに、夫に中途半端に焚きつけられ傷つくことになった。(=聖域を穢された)

その怒りのために「人の死を願う」ほど暴力的な気分に支配された。(=荒魂)

≈≈≈

そして、『穢れた聖地巡礼について』のメイン3人も同様に考えられる。

≈≈≈

✩小林

強面でいかつい体格という見た目からゴシップ系週刊誌に配属。

小林の書きたい誠実な記事とは真逆である、センセーショナルなスクープ記事を作ることを期待される(=無理なお願い)

マスコミ業界の理想と現実に疲弊し、入社当初の矜持を捨てさせられた。(=聖地を穢される)

その反動でなりふり構わず、人を傷つけることも厭わないゴシップ記事を作り上げる(=荒魂)


✩池田

池田の「六部」としての性質(生まれ持っての「からっぽ」)を見抜いていた優子は、「中身がないから付き合えない」言う。

つまり「付き合うためには中身が必要」。(=無理なお願い)

優子と違い平凡である池田は「才能がない」ことを突きつけられる。(=聖地を穢される)

幽霊に優子を殺してくれとお願いしたり、友人の寿命を尋ねるような粗暴な行動にでる。(=荒魂)

✩宝条

クラスメートたちが望むように「幽霊が見える」ことが病気であれば良かったが、実際に見えてしまってるという現実。
(=無理なお願い)

クラスメートに対して無関心でいることで心を守ろうとしていたのに、教育実習生にそれを暴かれそうになる。(=聖地を穢される)

認識すれば害を及ぼすとわかっている幽霊のことを教える。
(=荒魂)

≈≈≈

自分ではどうすることもできない現実に対するストレスが弾けとんで、加虐心が顕になるようなイメージ。

神様も人間も、踏み込んじゃいけないとこに踏み込むと大変なことになるんだな……


🎈🎈🎈

そういえば、こないだの「王様のブランチ」で背筋さん御本人が出演したコーナーは見ました?
まさか顔出しするとは思わなくてテレビ画面の前で動揺したよね。
人は見かけによらないとは言うけど、「こんな爽やか好青年から、あんな悍ましい話が生み出されたのか……」と不思議な気持ちになった。

あと、風船男くんシールについて。

宇宙人みたいなゆるいキャラのキラキラシールの下に、実写版「風船男」みたいな陰鬱なシールがもう一枚隠されてました……😣
サイコー🎈

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コメント

1
shimaguru
shimaguru

巡礼を終わらせたくないから憎しみの輪廻が続いているっていうの、ただのそうゆうシステムってだけじゃないの新鮮でしたね。
「あなたの番」もちゃんと作中で2回だけ使って分かりやすくしてますし、意図してそう。

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【感想】『穢れた聖地巡礼について』【考察】|はづき
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