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【覚え書き】「ネット怪談の成り立ち」廣田龍平(民俗学者)×梨(ホラー作家)【対談】

今回は、2025年3月にTBSポッドキャストで配信された対談についての覚え書きです。

難しめの話題は自分なりに意図を汲み取って噛み砕いてメモしてます。

廣田先生の著書『ネット怪談の民俗学』で、もっと詳しく具体的にわかりやすく書かれてますので、興味を持った方は是非。

私はこの対談を聞いてから本を買って読んだクチです。
個人的所感としては、この対談で大まかな概要を話してくれているので、本の内容がスッと頭に入ってきたような気がします。

◎出演者

◯廣田龍平さん
『ネット怪談の民俗学』の著者。
文化人類学や民俗学などの学問の立場から妖怪を研究し、大学で教鞭をとっている方。

◯梨さん
ホラークリエイター。
大学時代に文化人類学を学んでいた。
廣田さんの書籍の帯文を書いた。


◎『ネット怪談の民俗学』を書くに至った経緯

・ネット怪談に関する書籍としては、2016年に伊藤龍平さんが書いた『ネットロア ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』という本はあったものの、ネット怪談の歴史を包括的に扱った日本の書籍がまだ無かった。

・今、このタイミングで形に残しておかないと、アーカイブや記録が何も残らなくなってしまうのではないかという危機感がある中、早川書房さんからのお誘いもあり、本書を執筆するに至った。

◎ネット怪談の定義

「ネット怪談」と「ネットホラー」の違いについて。
廣田さんが書籍を書くにあたって、定義した線引きについての話。

・廣田さんの定義での「ネット怪談」とは、“匿名で実体験として語られる話” であり “たくさんの無名の人たちの間で広がり作り上げられたもの” を指すようです。

・ただし「リゾートバイト」などの、後に作者が名乗り出た “創作” であっても、受け手がリアリティを感じて「本当のこと」だと思えば「ネット怪談」として扱うし、本当の話であったとしても、受け手が「フィクション」だと思えば「ネットホラー」として扱う。

・“名もなき人々が作り上げてきたもの” を取り扱う民俗学としては、創作であるネットホラーまで含めると膨大な情報になってしまうため、区切りをつけて本を書いたという。

・テレビ発の怖い話や、街中で流行る都市伝説もネット上で語られているが、その扱いとしては……

ネット上で流通していれば、「都市伝説の花子さん」だろうが「テレビ番組の探偵ナイトスクープ」だろうがネットロアになりうる!
逆に書籍や他の媒体で流通すれば、それはネット発だとしてもネットロアではないものとして扱う。

……というようなことを言ってました。

◎民俗学と文化人類学の違い

・廣田先生曰く。
民俗学は日本国内、文化人類学は海外の研究が多いとよく言われているが、逆パターンも有り得るし、実際は両者にさほど違いはないらしい。
どちらも現地に長期間滞在して学んで帰ってきて論文を書く。

・難しいけど、違いを廣田先生がざっくり説明したものが……

◯民俗学……無名の人々の作ったもの、庶民の習慣、方言など。
歴史学で研究しきれない部分を研究する。内省の学問。

●文化人類学……歴史的な記録のない文化を調べ、世界中の様々な民俗を比較。人類の普遍性を突き詰める学問。


◎ネット怪談を認識したタイミング

・ネット怪談オタクであるお二人ですが、20代の梨さんと40代の廣田先生で年齢差がある。
ネットに対する感じ方も多少ズレがあるだろうということで……

梨さんから、“廣田先生がいわゆる「ネット怪談」を初めて認識したのはいつなのか?” という質問が出る。

・1996年からネットに親しんでいたという廣田先生。
はっきりと覚えてるタイミングは、大学4年の頃に卒業論文を書くためにネット上の話を集めたとき「コトリバコ」が流行っていたこと。

この時、普通の妖怪の話とも、都市伝説とも違う新しいジャンルだと気づいたそうです。

・書籍の感想の中に、“当時は「きさらぎ駅」を怪談だと思ってなかったよね” というものがあったという。
当時は “リアルタイムの異常な出来事” という認識であって、後から振り返ってみたときに「ネット怪談」として定義されたのだなぁ、という話をしてました。

・廣田先生は本書によって、「ネット怪談を枠付けしてしまうのが怖い」そうです。
枠から外れたものが「ネット怪談ではない」とされてしまうことを危惧している様子。

本書の感想に「ネット怪談がだいたい網羅されている」とコメントされてたことに対して、「全然そんなことない。一万分の一も取り上げられてません!」と言う廣田先生。

◎「逆行的オステンション」について

・ここで、著書を読んでない人に向けての説明。親切……!

〈逆行的オステンションとは〉
●「オステンション」
→元はアメリカの民俗学の言葉。
怖い話として伝わってるものを見たり聞いたりするだけではなく、実際に自分の身を持って体験してみることを指す
(例 : 幽霊の出るスポットに行って幽霊を見ようとする)

●「逆行的オステンション」
→元は話が無かったものに対して、実際にやってみたり話を作ったりすること。
(例 : スレンダーマン。スレに投下された画像から怪奇ストーリーが作られて広がり、実際に居る怪異として扱われるようになった)

→もとは存在しないもの(創作話)が、まるで存在するかのように伝播される中で、本当に信じてしまう人が出たならば、その創作は「ネット怪談」になってしまったと言える。

・梨さんはスレンダーマンの話を例にして、「画像に対して尾鰭がつくのがインターネット的」と語る。
画像とテキストがあることから信憑性が上がるイメージの様子ですね。


◎SCPの話

・始まりとしては、海外のサイトで投下された不気味な画像に、とある人が “あたかも実在する秘密機関の報告レポート” のように設定付けをしたことから、他の人も面白がってマネをして〜、現在のSCP財団サイトに至るそうです。

創作都市伝説。ネットホラー。

・梨さんが語るには、「きさらぎ駅」や「蓋スレ」のような話では、スレ住人たちが、特定したり凸したりすることによって共同構築している部分があるのが特徴だという。
そして、スレの一連の出来事が「ネット怪談」だと認識できるのは、後年になってからである。

・流動的に変化し、多様化し続けるネット上の話をまとめ上げるのは至難の業。
梨さんでもSCPの全ては追いつけないと言っている!
今度、SCP財団本家の記事ナンバーの9000台が解放されるらしい……😦

初見の人には不親切すぎる財団サイトについて語る梨さん(笑)

・コロナ禍以降、廣田先生は授業でSCPについて聞かれることが増えたらしい。
考察サイトやまとめ動画が出ることによって、本家の財団サイト記事を読んでない人にも認知されることが増え、その世代が大学生になったからなのではないか……という見解。

・ネット怪談のメディアミックス化についての話。
『きさらぎ駅』、『リゾートバイト』等の映画化、『ダンダダン』のヒットや「オトノケ」の歌詞の話。

ネット怪談で育ってきた世代が、作り手側になったのかも〜、と予測したり。

・梨さんのSCP作品の異彩さを語る廣田先生。
「まず、長い」「何故か民俗学っぽい言葉が散りばめられていて」「怖い」

・あとは梨さんの製作秘話みたいのが、ご本人の口から聞けて興味深かったです☺️概要↓

✽✽✽

コトリバコ全盛期には “民俗学に詳しいおじさん” がキャラクターとして登場するネット怪談が多かった。
あれが好きだった。

しかし洒落怖はもう下火。
でもやりたい。

当時のSCPは海外発祥ということもありSF寄りであった。
学術的なレポート形式の割に日本民俗学の話が少ないことに目をつけた。
意外と親和性が高いのではないかと思い立ち、色んな民俗学の資料を漁りながら書いていったものが『けりよ』『しんに』。
これらのジャパニーズホラー的な作品群を「依談」と名付ける。

✽✽✽

廣田先生「漢字どうでしたっけ?」
梨「憑依の “依” に怪談の “談” です」

✽✽✽

・梨さんのSCP記事の画像は自分で作ってるとのこと。
当時はクリップスタジオ、フォトショなどを駆使したそう。

クリーピーパスタ的なものが好きなので「やっぱ画像ないと始まらないよね」という考え。


・ネット怪談や民俗学系怪談が好きな人が想像する民俗学は、実際の民俗学の現場ではそうそう無いという話もしてました。

梨さんや廣田先生の経験談を聞くに、“創作に出てくる民俗学者” が調べるような内容は、実際には研究できないみたいですね。

・『ネット怪談の民俗学』ではネット上の資料を集めるわけだから文献集めが大変そうですよね……と、梨さん。
今はもう無いサイトとか、沢山ありますし。

本書の場合は、廣田先生の四半世紀に及ぶ “自分の記憶、経験” を元に辿って集めたものが大半だそうです。
あとは、オカルト板を全文ダウンロードして検索したり、ウェイバックマシンを使ったりもしたとか。

書籍の内容は、廣田先生の経験が反映されているんですね〜


・これからのネット怪談について。
今後、ネット怪談に対する受容の仕方や生まれ方も変化するだろうと予測する梨さん。
これからネット怪談が増えそうな場の予測だとか、今後研究したいものなどを廣田先生に尋ねる。

→tiktokやショート動画での流行を予測。
動画や画像なら文字が読めなくても理解できるからグローバルに広がりやすい。

また「still water(人喰いバクテリアの怪談)」など、ストーリーが無くても不穏で何か怖いと感じるものが広まってる印象。

ノスタルジーを利用したホラーコンテンツが増えていくことも予想。
(ネット自体がノスタルジーの対象になっている。)
「リミナルスペース」は不穏さとノスタルジーを併せ持つコンテンツ。

・廣田先生は「ドリームコア」を研究してみたいそうです。




◎廣田先生が梨さんを認識したタイミング

『早稲田文学 2021年秋号』という本に論文を寄稿したとき、廣田先生のひとつ前に載ってたのが梨さんの作品。
2000年代初めのインターネットのスクショ風な画像を多用したノスタルジーを感じる内容で、ちょうど廣田先生の寄稿内容(日本に上陸する前の『The backrooms』についての論文)とセットで読んでも違和感がないものだったとか。

廣田先生、執筆者を調べて「2000年生まれ……?どゆこと?」ってなったとか(笑)

・梨さん曰く。
『行方不明展』ではノスタルジックなホラーを志向して作った。
Y2K的なもの(電話BOX、ガラケー)、ドリームコア的なもの(夢の中で見た景色)を意識的にたくさん入れた。

ウェイバックマシンでも拾い上げられないようなブラックボックス化している時代に対する憧憬が、今の10代20代に多いらしい。

ホラーに限らず、ノスタルジックなものが大きなムーブメントになったらいいな〜、と思ってるそうです。


◎好きなネット怪談

◯廣田先生→『ヒサルキ』
この話単体では、そこまで怖くはないが無関係に思える別の怪談に似かよった名前や要素がある作品が同時期に出てきていた。
これらの繋がってそうで繋がってない雰囲気が好き。
結局何なのかよくわからない。


◯梨さん→『双眼鏡の話』
ちなみに廣田先生は、この話の作者の人から補足されたそうです。




✽✽✽✽✽✽

お二人とも民俗学や文化人類学の畑の方なので、わかり合ってる感がありましたね。
あと、ネット怪談オタクと本人が言ってる通り、その道では有名であろう用語や流行についての話がポンポン出てきて、めちゃ勉強になりました。

書籍の美味しいとこ取りな対談でしたが、じっくり詳しく理解するなら、やはり書籍で読んだほうが味わい深いですね……

日本と海外での流行や広まり方、国は関係なく広がっていくコンテンツなどを解説していて、面白かった!

ネット怪談、奥深いわぁ……

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