総務省、LINEヤフーに2度目の行政指導 「対策不十分」
総務省は16日、情報漏洩が相次いでいるLINEヤフーに2度目となる行政指導をしたと発表した。3月の行政指導を受けて同社が4月1日に提出した報告書では対策が不十分だと判断した。7月1日までに具体的な対策強化を盛り込んだ報告を求める。
同日記者会見した松本剛明総務相は「行政指導への対応が不十分だったという事態を重く捉え、徹底した対応に期待したい」と述べた。大株主である韓国ネット大手ネイバーへの業務委託の縮小や終了についてより踏み込んだ説明を求めた。情報漏洩の温床となったネイバーとLINEヤフーの共通システムを早期に分離することや、資本関係の見直しを促した。
LINEヤフーは同日「行政指導を真摯に受け止め、信頼回復に努めるとともに、安心してサービスを利用できるよう努力する」との声明を出した。
直近時点でLINEヤフーは、情報漏洩の再発防止に100億円程度の費用を計上すると想定していた。自社システムの開発を進め、ネイバーなどへのシステム運用委託の縮小を目指していたとみられる。この対策費用は2度目の行政処分を反映しておらず、必要な支出は今後膨らむ可能性がある。
LINEヤフーに64.4%を出資する中間持ち株会社のAホールディングスは、ソフトバンクとネイバーが折半出資している。総務省はLINEヤフーの情報漏洩の背景に、主要サービスの委託先でもあるネイバーへの「強い依存」があると指摘。3月の行政指導では業務委託の見直しとともに、ソフトバンクがLINEヤフーへの資本的関与を強めるよう異例の要請を出した。
LINEヤフーは4月1日の報告書でネイバーへの業務委託の縮小などを盛り込んだ。一方、資本構成の見直しについてはネイバーからの反発もあったと見られ、「要請している」との表現にとどまっていた。
LINEヤフーは2023年11月にLINEアプリの利用者情報など約44万件が漏洩した可能性があると公表。24年2月には別の情報漏洩を公表するなど不祥事が続いていた。
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(更新)- 佐藤一郎国立情報学研究所 教授ひとこと解説
韓国ネイバーへの不正アクセスにおいて、旧LINEの管理するデータまで漏洩範囲が広がった背景は、旧LINEがヤフーと統合した後も、ネイバーへの業務委託など、ネイバーへの技術依存が続いていた結果といえないか。総務省はLINEヤフーに対してネイバーへの業務委託の縮小や終了を求めているが、LINEヤフーがネイバーへの技術依存なしでやっていけるのであれば総務省の行政指導はひとつの方向だが、仮にそうでないとすると別の問題を引き起こすことになる。日本におけるSNSなどの社会インフラともいえるサービスがどうあるべきなのか、というレベルに立ち戻るとともに、事業者の実状に考慮した議論が必要となるだろう。
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(更新)