岐阜市の市会議員をしている杉山利夫さんが、公邸に私を訪ねてこられた。コートジボワールの子ども達に、靴を配るのだという。日本で運動靴のお古を4千足集めて、こちらに送った。アビジャンの港で引き取って、グランラウ(Grand Lahou)という、西に120キロ行ったところの街まで持っていくのだ。
杉山さんがコートジボワールを訪ねるのは、これが2度目である。昨年4月に、グランラウを訪問して、サッカーボールを6つ贈呈した。大変歓迎されて、また来年も来ましょうということになった。コートジボワールではサッカーが盛んで、村の広場で子ども達が練習や試合をしている。でも、多くの子ども達が裸足だ。運動靴は高くて手に入らない。だから、杉山さんは、今度は運動靴を持ってこようと考えた。
ただ運動靴を買ってきて贈呈するというのではない。岐阜市の市民によびかけて、不要になった運動靴を集めようと考えた。使い古した運動靴。これはいいところに目をつけたものだ。子どもは成長するから、必ず運動靴が小さくなって、要らなくなった靴が、どの家の靴箱にも溜まっていく。捨てるのは勿体ない。コートジボワールの子ども達が履いて、さらに運動場で活躍できるなら、これらの靴にとっても、靴箱でゴミになる運命を待つより、ずっと嬉しいことであろう。
1年かけ、岐阜の人々に、使わなくなった運動靴を提供して欲しいと呼びかけた。たくさんの人が、杉山さんに賛同して、運動靴を持ってきてくれた。各自で水洗いをしてから持ってきてもらったけれど、それを箱詰めにする作業などは、杉山さんの仲間たちが手伝った。アビジャンまでの送料は、約30万円。これも街頭カンパで集めた。そして、1年後、約束どおり、杉山さんはコートジボワールに戻ってきた。今度は4千足の運動靴と一緒である。
杉山さんは、以前はコートジボワールのことなど、何も知らなかった。この国との縁が出来たのは、コートジボワール人元日本留学生、カクさんと会ったからである。日本での勉強を終えて、岐阜市に仕事で残ったコートジボワール人留学生のカクさんは、そこで日・コートジボワール友好の交流をはじめていた。そして、友達になった杉山さんに、コートジボワールの話をした。杉山さんは、カクさんを通じて、この西アフリカの国に興味をもった。
コートジボワールとの交流活動に本腰が入って、NPO法人「ぎふ・コートジボワール」を立ち上げるまでになった。そして昨年4月に、カクさんに連れられて、コートジボワールを訪ねたわけである。昨年の大晦日には、日本中のコートジボワール人留学生によびかけて、岐阜のお寺に集まってもらい、合宿をした。
年末年始というのは、日本で一人ぽっちで残っている外国人にとっては、居場所のない寂しい時期である。留学生たちは、お寺のお堂に泊まって、コートジボワールから材料を取り寄せて料理を作って食べたり、除夜の鐘をついたりして、大変楽しい時間を過ごした。このように、日本とコートジボワールの友好親善を、民間の活動として進めている方々がおられるとは、大使としてたいへん心強いことである。
「今回の活動については、それはね、いろいろな意見があります。」
と、杉山さん。
「たとえば、輸送費の30万円を街頭で集めました。人によっては、その30万円をグランラウの人々にそのまま贈ったほうが、靴よりは喜ばれるんじゃないか、とか。」
よくある議論である。ボランティア活動でこつこつ面倒な作業を重ねるより、お金で解決したほうが、話が早いし、より効果的であるという議論である。
「でも、それは違うのです。集まった運動靴には、みんなの気持ちが現れている。関心がこもっている。例えば、ある高校の生徒たちが、活動の趣旨を理解して賛同してくれて、卒業にあたって不要になった運動靴を、学校ぐるみで集めて贈ってくれました。岐阜県の少年サッカーの連盟も、県下数箇所の試合会場に回収箱を設置して、子ども達からサッカーシューズを集めてくれました。地域の商店街、幼稚園、学習塾等からも集まりました。人伝てに聞いたといって宅配便で1足だけですが送ってくれた方もあります。」
杉山さんは、熱い目をして語る。
「輸送費のカンパだって、街頭でコートジボワールの話を聞いて、それで関心をもって財布から千円札を出してくれた人々の、心の積み重ねです。ただの靴やただのお金とは違うんです。」
そのとおり。国際協力や支援というのは、単に豊かな私たちから貧しい彼らに物をあげるという行為ではない。お金や効率では評価しきれない、まったく別の何かがある、というのは私の経験則でもある。
杉山さんは、明日、靴を携えてグランラウに向かうという。私は、今年は事前によく知らなかったのでお手伝いができない、でも来年はぜひ私も参加したい、と伝えた。杉山さんは、「靴を贈る運動」で使ったポスターを、私に一枚分けてくれた。ポスターには、次のように書いてあった。
「この運動を通して、アフリカと日本の子ども達に、物を大切にする心や、人を思いやる心、地球を大切にする心が育まれれば幸いです。」
日本からコートジボワールに、何かを贈るということだけが重要なのではない。日本の子ども達も、コートジボワールの子ども達も、ともに何かを得る、何かを学ぶということだ。つまり、金銭や物資を渡すだけではない、いろいろなものを、相手に伝え、相手から受け取る。これこそが、あらゆる国際協力の本質というか、それを進めるべき一番の意義ではないか、と私は考えている。
<運動靴を贈る運動のポスター>
また、ポスターもいただいたので、記事本文に添付しました。ご覧下さい。
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【靴集めについて】
靴はこんな風にお集めいただけましたら幸いです
次回は今回と同様、来年の3月頃に日本から送る予定です
靴は順次集まっています
いつでも、下記住所宛てお送りください
〒502-0817
岐阜市長良福光2525-1
花屋のすぎやま内
NPO法人ぎふ・コートジボワール
輸送費のカンパも受け付けています
郵便払込
00890-3-90817 ぎふ・コートジボワール です
前回送った輸送費等で、資金は枯渇しています
再度チャレンジです
(以上、杉山利夫さんからの連絡)
今学年で、運動靴を送ろうという計画をしています。
3月の6日に卒業式があります。
そのあとに靴を集め、洗って乾かしてをしていると3月の後半になってしまうかも知れません。
3月ごろに送るということですが、
間に合うでしょうか。
どうぞお返事をお願いいたします。
気持ちのある方は一足でもお送り頂ければ嬉しいとのことです。
送料は負担して頂くことになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
全国の高校の卒業式に、卒業生のみなさんの体育館シューズ、上履きを集めていただいています
靴は比較的集まりやすいのですが、輸送費を捻出するのが大変です