再びトーゴを訪れて、こんどは食糧援助についての交換公文に署名してきた。10月に早々と信任状捧呈を終えたので、大使として動きやすかったということがあるにしても、半年あまりの間に4回もトーゴに出張して、署名した文書ももう3本目である。
(1)債務救済措置(債務42億3千万円を対象):12月16日署名
(2)ユニセフとの間で「子供のための環境整備計画」(4億5千万円):2月3日署名
(3)食糧援助(6億9千万円):4月7日署名
トーゴは、私にとっていわゆる兼轄国、つまりコートジボワール大使として以外にも、大使の職務を言い付かっている国である。普段アビジャンにいると、電話などでしか仕事が出来ないので、出張するたびに出来るだけ関係する人々と会って、話をするようにしている。ニヤシンベ大統領やウングボ首相とは、だいたい毎回会っている。閣僚の人々とも、その都度会って話をする。ロメに大使館を置いている外交団とも会って、現地情勢などをよく教えてもらう。
「大使にこれだけ頻繁に来ていただいていれば、ロメに日本大使館があるのと変わらないですよ。」
と、エサウ外相が私に言う。たしかに、コートジボワールの外相とも、エサウ外相ほどの頻度では会っていない。そのエサウ外相は、先月に訪日をして、中曽根外務大臣との間で、史上初の日・トーゴ外相会談を行ったところである。東京で暖かい歓迎を受け、京都にも視察に出かけて、すっかり日本びいきになっている。
トーゴは、1993年以来、欧米各国が援助を控えてきた。前の大統領だったエヤデマ大統領が、晩年に非民主的な政治を行い、人権面で問題があったからだ。今のニヤシンベ大統領になって、きちんと民主主義選挙を重ねてきている。首相には、国連開発計画(UNDP)のアフリカ部長を勤めていたウングボ氏を引っ張ってきた。閣僚には、バワラ開発相をはじめ、国際機関の官僚出身の人々が多く抜擢されている。トーゴの開発を進めるため、仕事の出来る内閣をつくって、政治と経済の運営に取り組んでいる。
滞在していたホテルで、ロビーにくつろいでいると、ネクタイと背広の、なんだか真面目そうな面々が続々と現れ、大ホールに消えていく。トーゴのビジネスマンたちだ。知り合いの閣僚の顔もある。バワラ開発相まで現れた。大ホールに顔を出して、何だろうと訊ねてみると、「貧困削減計画についてのワークショップ」だという。 「貧困削減計画」というのは、トーゴが貧困削減にどのように取り組んでいくかを策定した文書だ。この計画がきちんとしている、ということが認められて、トーゴは債務救済の対象国となった。債務支払いを免除する代わり、その資金を国民の貧困克服に使いなさい、という枠組みである。
そして、トーゴはこの「貧困削減計画」を、きちんと実施しようとしている。3日間のワークショップで、計画の各項目をどう実行していくかについて、経済界の責任者との間で話し合うのだと言う。私もあわてて背広に着替え、開会式に出席し、ウングボ首相の演説を聞く。私は大使としての唯一の出席者となり、はからずも日本の存在感を示すことになった。
こうしたトーゴの生真面目さもあって、欧米各国もそろそろ援助の再開に踏み切ろうとしている。それに先駆けて、日本は矢継ぎ早に支援を打ち出し、次々に文書を署名してその姿勢を実行に移してきた。昨年は、TICADやG8サミットで、アフリカ支援が打ち出されたこともあって、日本の積極的姿勢の印象は大変強い。トーゴ政府は、日本がトーゴの開発を、他国に先んじて応援していることを感じて、とても感謝してくれている。
日本にとっても、日本の応援団として、トーゴは大事な国である。トーゴは、日本が毎年人権委員会に提出している「北朝鮮人権決議」に、これまでの棄権の立場から、賛成に回ってくれた。アフリカ各国は、人権問題に国際社会が口を出すことを嫌う傾向があって、この決議にも棄権している。その中で、トーゴは堂々と賛成票だ。トーゴ自身が、この間まで人権問題で国際社会から批判されていた国であることを考えると、この姿勢は貴重である。日本の、安全保障理事会常任理事国入りも、もちろん賛成である。国際捕鯨委員会にも加盟して、鯨問題についての日本の立場を支持してくれている。
来月中旬には、ニヤシンベ大統領の訪日が予定されている。ニヤシンベ大統領は、信任状捧呈ではじめて会ったとき、私に日本を訪問したいと言った。それなので、準備を進めてきた。ニヤシンベ大統領は、若い首脳ながら、昭和天皇の御大喪、今上天皇陛下の即位の礼の両方に出席(父親の前大統領の随伴員として)しているという、首脳の中で珍しい存在だ。 日本には特別の思い入れがあるだけでなく、日本が自らの国を発展させてきたことに学びたい、先進文明と伝統とを両立させてきた知恵を学びたい、という強い関心がある。そういう大統領の希望が、ようやく実現する。ぜひとも実り多い大統領訪日にしたい。
ロメ出張を終えて、アビジャンに戻ってから、インターネットでトーゴ政府のホームページを開けて驚いた。そこに、大きなメッセージが載っていた。
「I LOVE JAPAN」
日の丸が、ハートマークになっていた。
<トーゴ政府HPの記事>
(1)債務救済措置(債務42億3千万円を対象):12月16日署名
(2)ユニセフとの間で「子供のための環境整備計画」(4億5千万円):2月3日署名
(3)食糧援助(6億9千万円):4月7日署名
トーゴは、私にとっていわゆる兼轄国、つまりコートジボワール大使として以外にも、大使の職務を言い付かっている国である。普段アビジャンにいると、電話などでしか仕事が出来ないので、出張するたびに出来るだけ関係する人々と会って、話をするようにしている。ニヤシンベ大統領やウングボ首相とは、だいたい毎回会っている。閣僚の人々とも、その都度会って話をする。ロメに大使館を置いている外交団とも会って、現地情勢などをよく教えてもらう。
「大使にこれだけ頻繁に来ていただいていれば、ロメに日本大使館があるのと変わらないですよ。」
と、エサウ外相が私に言う。たしかに、コートジボワールの外相とも、エサウ外相ほどの頻度では会っていない。そのエサウ外相は、先月に訪日をして、中曽根外務大臣との間で、史上初の日・トーゴ外相会談を行ったところである。東京で暖かい歓迎を受け、京都にも視察に出かけて、すっかり日本びいきになっている。
トーゴは、1993年以来、欧米各国が援助を控えてきた。前の大統領だったエヤデマ大統領が、晩年に非民主的な政治を行い、人権面で問題があったからだ。今のニヤシンベ大統領になって、きちんと民主主義選挙を重ねてきている。首相には、国連開発計画(UNDP)のアフリカ部長を勤めていたウングボ氏を引っ張ってきた。閣僚には、バワラ開発相をはじめ、国際機関の官僚出身の人々が多く抜擢されている。トーゴの開発を進めるため、仕事の出来る内閣をつくって、政治と経済の運営に取り組んでいる。
滞在していたホテルで、ロビーにくつろいでいると、ネクタイと背広の、なんだか真面目そうな面々が続々と現れ、大ホールに消えていく。トーゴのビジネスマンたちだ。知り合いの閣僚の顔もある。バワラ開発相まで現れた。大ホールに顔を出して、何だろうと訊ねてみると、「貧困削減計画についてのワークショップ」だという。 「貧困削減計画」というのは、トーゴが貧困削減にどのように取り組んでいくかを策定した文書だ。この計画がきちんとしている、ということが認められて、トーゴは債務救済の対象国となった。債務支払いを免除する代わり、その資金を国民の貧困克服に使いなさい、という枠組みである。
そして、トーゴはこの「貧困削減計画」を、きちんと実施しようとしている。3日間のワークショップで、計画の各項目をどう実行していくかについて、経済界の責任者との間で話し合うのだと言う。私もあわてて背広に着替え、開会式に出席し、ウングボ首相の演説を聞く。私は大使としての唯一の出席者となり、はからずも日本の存在感を示すことになった。
こうしたトーゴの生真面目さもあって、欧米各国もそろそろ援助の再開に踏み切ろうとしている。それに先駆けて、日本は矢継ぎ早に支援を打ち出し、次々に文書を署名してその姿勢を実行に移してきた。昨年は、TICADやG8サミットで、アフリカ支援が打ち出されたこともあって、日本の積極的姿勢の印象は大変強い。トーゴ政府は、日本がトーゴの開発を、他国に先んじて応援していることを感じて、とても感謝してくれている。
日本にとっても、日本の応援団として、トーゴは大事な国である。トーゴは、日本が毎年人権委員会に提出している「北朝鮮人権決議」に、これまでの棄権の立場から、賛成に回ってくれた。アフリカ各国は、人権問題に国際社会が口を出すことを嫌う傾向があって、この決議にも棄権している。その中で、トーゴは堂々と賛成票だ。トーゴ自身が、この間まで人権問題で国際社会から批判されていた国であることを考えると、この姿勢は貴重である。日本の、安全保障理事会常任理事国入りも、もちろん賛成である。国際捕鯨委員会にも加盟して、鯨問題についての日本の立場を支持してくれている。
来月中旬には、ニヤシンベ大統領の訪日が予定されている。ニヤシンベ大統領は、信任状捧呈ではじめて会ったとき、私に日本を訪問したいと言った。それなので、準備を進めてきた。ニヤシンベ大統領は、若い首脳ながら、昭和天皇の御大喪、今上天皇陛下の即位の礼の両方に出席(父親の前大統領の随伴員として)しているという、首脳の中で珍しい存在だ。 日本には特別の思い入れがあるだけでなく、日本が自らの国を発展させてきたことに学びたい、先進文明と伝統とを両立させてきた知恵を学びたい、という強い関心がある。そういう大統領の希望が、ようやく実現する。ぜひとも実り多い大統領訪日にしたい。
ロメ出張を終えて、アビジャンに戻ってから、インターネットでトーゴ政府のホームページを開けて驚いた。そこに、大きなメッセージが載っていた。
「I LOVE JAPAN」
日の丸が、ハートマークになっていた。
<トーゴ政府HPの記事>
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