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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

ベナン初の運動会

2009-04-06 | Weblog

運動会といえば、日本だと赤組と白組、とだいたい決まっている。それが、ベナンでは、赤組と黄組と緑組。なぜかというと、国旗がその三色旗だから。だから、勝負は3組の巴戦になる。子供たちが、「棒引き」に挑む。正方形の運動場に、長さ5メートルばかりの木の棒が、3本並べられている。まずは赤組と黄組の対決。子供たちが、運動場の両端に並ぶ。用意ドンで、棒に走りより、自分たちの陣地に棒を引き込む。3本のうち2本以上を取ったほうが、勝ちである。

子供たちは考える。1本に勢力を集中すれば、確実に取れるが、残りの2本が覚束なくなったら負けだ。むしろ、1本は捨てて、2本に力を集中して2本とも取ったほうがいい。ところが、その作戦で出たら、相手は捨てた1本を易々と自分の陣地に持ち帰ったうえに、残り2本のうち1本を、全員で集中して取りに来た。

熱戦が繰り広げられるのは、ベナンの南部アラダ市(Allada)にある、グランデュー小学校の運動場である。体育の授業を指導するのは、青年海外協力隊の市山高太郎さんと比留間庸泰さんの2人の隊員。2人は、スポーツをとおして町の活性化を図りたい、というアラダ市の要望に応じて、協力隊員として派遣されてきた。そこで、市内数ヶ所の小学校で、体育の授業を指導してきた。今日は、小学校の5年生と6年生の授業である。

棒引きの練習で、今日の授業はほぼ終わり。後は整理体操だ。子供たちが、両手を広げながら間合いを取って、運動場いっぱいに広がる。比留間さんが、はーい大きく背伸びをしてー、と声を掛けて、体操が始まる。日本であれば、ラジオ体操もあって、誰もが子供の頃から体操に慣れ親しんでいる。ところが、ベナンではそうではない。そもそも、広場などで体操をしていると、珍しいので人だかりができるほどだ。

「運動といっても、ベナンの教育では、体系立った体育教育はありません。行進をしたり、うさぎ跳びなどの単純運動を繰り返させるだけです。だから、皆で揃っていっせいに身体を動かして体操をする、ということが、なかなかうまく出来ない。」
市山さんが、こちらに来て観察したことである。たしかに、目の前で体操する子供たちは、ぴょんぴょん飛んでも全然揃っていない。リズムをつけて一緒の動きをするというのは、結構難しいことなのだ。日本では、国民の誰もが、体育の学校教育によってそれが自然に出来るようになっている。これは、意外に重要な、国民の財産なのかもしれない。

さらに、スポーツということについても、とても限られた知識しかない。知っているスポーツ競技は、テレビなどでやっているサッカーとハンドボールだけ。
「ひとつには、体操器具やスポーツ道具がない、という事情があります。それらが必要な運動やスポーツは、子供たちにとっては、してみたくても出来ないのです。」
と、市山さんが説明する。確かに、どんなスポーツ競技にも、何か道具が要る。例えばテニスといっても、ラケットも要ればテニスコートも要る。バレーボールなどは、あまり道具が要らないほうだけれど、それでもボールとネットが必要だ。だから、市山さんと比留間さんが授業に取り入れた「棒引き」は秀逸である。木の棒を3本見つけてくれば出来る。

「はーい、掛け声を掛けて。」
体操する子供たちに、比留間さんの声が飛ぶ。お互いに声を掛け合うのは、皆でリズムを合わせるために必要なことだろう。ところが、「いち、に、さん、し」と掛け声を掛けるというのも、こちらの流儀ではない。比留間さんの指示にかかわらず、子供たちは声を出さない。慣れないので少し恥ずかしい、ということもある。運動のときに声を掛け合う、というのは当たり前と思っていたが、どうもこれも日本人独特の風習かもしれない。そういえば、日本のグランドで、野球部員が練習をするときいつも大声を出しているのを見て、とても日本的で興味深い、と西洋人の友人が言っていたのを思い出す。

体操が終わった。子供たちは、体育の授業の終わりには、行進で運動場を1周してから退場するのが、ベナンでのしきたりになっているという。赤・黄・緑の3組が列をつくって、子供たちが元気良く行進を始める。と、子供たちが皆で大声で歌を歌い始めた。歌を歌うと、足並みがきっちり揃う。なるほど、さすがアフリカの子供たちである、と私は妙に感心する。日本では掛け声のところが、ベナンでは歌なのだ。

市山さんと比留間さんは、受け持っている小学校の2校と相談して、運動会を企画することにした。両校の子供たちが一堂に会して、日頃の成果を競うのである。4月8日に予定していると言うから、もうすぐだ。子供たちもその日に向けて、今日も熱心に練習をしているのだろう。運動会というのは、ベナンではこれまで行われたことがないということだ。ベナン初の運動会の成功を期待したい。

 子供たちの整列

 棒引きの試合

 棒引きの試合

 熱戦

 さらに熱戦

 体操を始める

 ぴょんぴょん飛んで

 屈伸運動

 深呼吸

 歌を歌って行進する

 三列で行進

 年少組の見学

 年少組の子供たち

 市山さんと比留間さん


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