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昭和八年の直木三十五春日井ひとし『昭和八年 文学者のいる風景 その13 昭和八年の直木三十五 時代と斬り結ぶ』(掌珠山房、二〇二二年一月)を頂戴した。面白く読了。 《ちょうど直木賞発表の時期と重なりましたが、拙稿ではもちろん直木賞のことは出てきません。 例によって昭和八年のこと中心ですが、今回は新発見(?)の資料「大菩薩峠を評す」により、直木の中里介山への思いにも多くのページを割いています。》 直木の『南国太平記』(誠文堂、一九三一年)は青山二郎の装幀第一号とされており(挿絵は岩田専太郎)、青山二郎本を集めている頃には小生も架蔵していたが、とっくの昔に処分してしまった。で、その小説を読んだかと問われたら、残念ながら読んでいない。直木賞として名前が残る昭和初期の代表的な流行作家だったわけだからちょっとぐらい読んでおくんだったと今になって思うのだけれど、その頃は「直木賞は読むに値せず」という純文学志向だった、というかだいたいが小説よりも随筆が好きだったのだ(今でも基本はそうです)。 本書にも直木と廣津和郎(同い年で早稲田大学予科では二級上)の交流が描かれている部分があるのだが、親しくなってからでも廣津は直木の小説を読まなかった。 《廣津は大衆文学を好まない、面白いとも思わないと公言する。最初に『大菩薩峠』を読んだのが悪かった。第二巻までは辛抱して読んだが、三巻で我慢がならず投げだしたという。それで大衆文学に興味を失い、直木の作も読んでいなかった。『中央公論』の文芸時評を担当した月に直木の時局小説『日本の戦慄』(昭和七年六月 中央公論社刊)が出版され、感想を求められて読みかけたのだが、やはり途中で投げた。それでも直木の全集が出ることになって、京阪神と名古屋での宣伝講演会で話してくれと頼まれて、他ならぬ直木のことと引き受けた。久米正雄、横光利一、林芙美子が一緒だった。小説は読んでいないから人間直木についてだけをしゃべった。ところが四都市での講演が終ってホテルで一人になった日、渡されていた第一巻を読んでみて大いに感心し、晩までかかって読み終えてしまった。並大抵の腕前でない。》(p28) 大衆文学だから、時代物だから、どうこうでなくて、面白ければ、巻を措く能わず、というのは当たり前の話である。ということで、本書のおかげにより、直木三十五を改めて読みたくなっている自分に気付いたしだい。 上図は絵葉書「(大東京)日本橋三越呉服店」(KOBUNDO NAKAMURA)。《三越呉服店》と書かれているのでおそらく昭和二年の改築のときのイメージではないかと思う。「三越」の呼称は昭和三年六月から(三越伊勢丹ホールディングス「三越のあゆみ」より)。昭和十年に増改築されるまでこの姿であったと推測される。よって昭和八年も含まれます。
by sumus2013
| 2022-01-23 17:31
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Comments(2)
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