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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

国際会議に出席する(2)

2009-02-24 | Weblog
さて、討論に移ったところで、いきなり発言したのが、チョイ国連事務総長代表である。選挙の日程が昨年11月30日と決まっていたのに、それが延期されてしまった、しかも新たな日程が示されないままになっているのは、人々に先行き不透明の不安感を与えて、大変困ったことである、と発言する。ところで、先ほどマンベ選挙管理委員長からの説明で、早ければ本年の10月にも選挙を実施することは可能である、とあった。この「評価支援委員会」でも、「10月実現を目安に頑張ろう」というような声明を出して、人々の不安感を払拭しようではないか、と発言する。

見事な先制攻撃だ。チョイ代表は、選挙日程の話を討論しようというのだ。この会合では、皆がコートジボワール側から財政支援の要請が出てくるだろうと予想している。前回の「評価支援委員会」(昨年7月)では、議論のほとんどが、資金が必要、でも出せないという話に終始したらしい。私も資金の話が中心になることを予想して、演説原稿を準備している。たしかに、先ほどのコートジボワール側の発言では、和平プロセスには資金が要るという訴えが相次いでいた。だから今回も、そのまま資金供与を巡っての労使交渉のような議論になってもおかしくはなかった。

国連や国際社会の側は、早く選挙に向けて進みなさい、何をぐずぐずしているのだ、という気持ちであり、それに対してコートジボワール側は、早く進めと言われても資金が足りないのだから進めない、もっと資金供与をしてくれ、という気持ちである。その、選挙実施と資金供与の2つの論点のうち、チョイ代表は、切っ先を制して、選挙実施のほうに議論を向けようとしている。今回の「評価支援委員会」では、昨年11月30日という約束を守れなかったという点で、コートジボワール側に若干後ろめたいところがある。チョイ代表は、その弱みを突いて来ている。

国際会議では往々にして、いの一番の発言で、全体の流れが決まる。チョイ代表の発言に続いて、フランス大使が、発言を求める。「早ければ本年の10月にも」という見通しには、たいへん勇気付けられるが、地方の選挙実施の体制不備や、身分認定などの係争案件も出てくるだろうから、この見通しどおりに進むかどうかは、安心できないというような趣旨を発言する。米国大使も後を続けて、日程の目処が示されることは、コートジボワールに投資を再開しようと考えている投資家たちにとっても、たいへん重要なのだ、という発言をする。皆、あくまでも選挙日程の問題に議論を集中させ、議事の流れを固めてしまおうとしているようだ。

私も札を立てる。国際会議では、目の前に置いてある「JAPON」と書かれた三角柱の札を、机の上に垂直に立てれば、発言したいという意思表示である。コンパオレ議長が私を指名する。さてここで、せっかく用意してきた演説原稿ではあるが、それをそのまま読んではいけない。私としては、2万2千個の投票箱の話を誇示したいのは山々である。しかし今その演説をすると、せっかく資金支援の議論が陰に隠れているのに、寝た子を起こすようなことになる。この、流れをよく読まなければならないあたりが、国際会議の難しいところだ。

私は、投票箱の話は一切せず、わが国としても選挙期日が明確に示される必要があると考える、それはコートジボワール自身のためだ、と発言する。それは、第一にコートジボワール経済の再活性化のためである、例えば外国企業にとって、選挙実施によってコートジボワールの信用が回復されないと、貿易や投資をしようと思っても、取引銀行から信用保証が得られないのだ、と説明を加える。私は、発言に説得力を与えるために、なるべく具体的な話や数字を入れるようにしている。第二に、と私は続ける。選挙日程への展望が示されないと、国民の不安や不満が高まる。これでは再び治安上の問題が生じかねない。それだけ発言して、マイクを切った。

(続く)

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