goo blog サービス終了のお知らせ 

コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

運転席か客席か

2009-02-21 | Weblog
2002年にコートジボワールが南北に分裂し、危機が始まってから、国際社会は大いに心配した。仏が中心となり、リコルヌ軍を派遣するなどしつつ、コートジボワールの紛争当事者間に働きかけて、平和を回復するための合意の達成をめざした。いったんは成立した合意(リナ・マルクーシ合意:2003年1月)も、仏軍とコートジボワール軍との間で衝突(2004年9月)が起こってご破算になった。一方で、国連は、安全保障理事会の決議により、国連平和維持部隊をコートジボワールに駐留させつつ、紛争の解決を図った。それ以来、国連が紛争当事者を呼んでは、調停を試みてきていた。

そうこうして4年を経た2006年秋、和平に向けての努力が、新たな展開を見せた。バグボ大統領が、国連による調停ではなく、当事者どうし直接の話し合いによる解決という方向を探り始めたのである。ブルキナファソのコンパオレ大統領に周旋役を頼み込み、コンパオレ大統領のもとで関係当事者の間での協議が持たれた。その結果、今から2年前の2007年3月に、南北両勢力が、合同で暫定政府をつくり、改めて大統領選挙を行う、というワガドゥグ合意が成立した。

さて、紛争当事者が、彼らだけで和平への道筋を決めたというのだから、それはいちおう結構なこと。これまでの国連の調停活動は、後ろに引っ込んだ。それでは、国連も国際社会も、もう皆さんにお任せして失礼します、ということになるかというとそう簡単ではない。この合意がきちんと履行されていくかどうかを、国連としても引き続き関心を持って見守ってゆかなければならない。長期にわたる混乱を経て、治安は乱れに乱れていた。だから治安維持や選挙実施支援について、引き続き国連に任務が委ねられた。それを実施していくために、平和維持部隊にも、駐留継続が求められた。

そして、欧米諸国や日本などには、和平に必要な資金を負担することが期待された。平和構築にお金がかかるのは仕方あるまい。しかし支援をする以上は、和平の進み具合について、きちんとご相談にあずからなければならない。そこで、「評価支援委員会」という会合が、開かれることになった。資金の胴元となる国々が、コンパオレ大統領のもとで、ブルキナファソの首都ワガドゥグで、コートジボワール側の当事者たちと一堂に会して、和平の進み具合について報告を受け、協議をするのである。

前置きが長くなった。その「評価支援委員会」の第6回会合が、2月16日にワガドゥグで開かれた。日本も、資金を出す用意を示し、実際に多くの資金を提供しているから、当然ご相談にあずからなければならない。つまり「評価支援委員会」に呼ばれていなければならない。ところが、これまでアビジャンには日本大使がいなかった。昨年9月に私が着任したので、はじめて日本も出席することになった。今回の会合開催の日、私はたまたま信任状捧呈があったためワガドゥグに残っていたので、アビジャンから国連機で到着した国連平和維持活動(UNOCI)のチョイ事務総長代表や、コートジボワールの同僚大使たちと合流して、この会合に参加することになった。

コートジボワールの和平構築には、他の紛争地域の和平構築と比べて、明らかに大きく異なる点がある。それは、以上のように、紛争当事者がその主導権を握っており、国連や国際社会は脇役にいる、ということだ。つまり、和平路線を走ることが期待されている、「ワガドゥグ合意」という列車の運転席に、国連は座っていない。座っているのは、ワガドゥグ合意の当事者たち、つまりバグボ大統領、ソロ首相、ベディエ元大統領、ウアタラ元首相の4人である。その後ろから、コンパオレ大統領が叱咤激励をしている。国連も、国際社会も、客席の方に座っている。

その運転がいかにもアフリカ的である。つまり、時刻表を守れない。大統領選挙という終着駅に到着する予定が、大幅に遅れている。ワガドゥグ合意では、10ヶ月以内、つまり昨年春までに到着するはずだった。その期日が、昨年の11月30日に延びた。その期日も守れず、また先延ばしになって、今やいつ終着駅に到着するのか不透明になっている。

このような運転に、客席にいる国連や国際社会の各国は苛々しはじめている。遅くなればなるほど、運転経費が嵩んでいくからだ。一方で、運転手達は、経費が足りないので運転がうまく進まないのだ、と不満を見せている。「評価支援委員会」では、そうした双方の立場が対峙するだろう。私は、ワガドゥグ合意の履行についての、交渉現場に顔を出すことになったのである。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。