用務で日本に帰った。関心を持っておられる方々に、アフリカのことなどをお話する機会があった。ブログを読んでいますよ、ブログでアフリカに興味を持ちました、と言ってくださる方もおられ、とても嬉しい。アフリカといっても、日本の方々には遠い世界だから、私の言いたいことがきちんと伝わるかな、と思っていたらとんでもない。鋭い質問がたくさん出て、説明する私にも大いに熱が入った。
日本の方々にお伝えしたかったこと。それはアフリカは決して、貧しく悲惨ばかりの大陸なのではないということ。アフリカのことは、報道でも伝えらることは滅多にない。たまに記事になっても、貧困、戦乱、飢餓、クーデタ、エイズ、砂漠化、よくない話ばかりである。写真といえばいつも、痩せこけた子供の姿。だから日本では、アフリカ大陸には、世界のなかで余程困難なところという印象がある。
たしかにアフリカでは、まだまだ人々の所得水準は低い。私たちの想像を越えた、悲惨な出来事もある。でも、私たちに伝えられる極端な悲惨は、ごく一部の地域の話なのだ。アフリカは、今高度成長の時代を迎えている。日本や先進国が経済不況で喘いでいるなかで、近年アフリカの多くの国々が、5%を越える成長率を堅実に記録している。
その背景には、アフリカの政治の安定がある。1960年代の独立以来、アフリカは政治の不安定を経験してきた。相次ぐクーデタ。独裁政権による人権抑圧。民族間の血腥い紛争。それらは健全な経済発展を阻んできた。しかし、近年になり、多くの国で政治の安定が達成された。政権を担う第二世代、第三世代は、高い教養を備えて、国政に責任をもって取り組んでいる。政治の安定は、企業人たちに安心を与える。法制度や経済体制の整備は、ビジネスに予測可能性を与える。アジアは20年前に堅実な成長を記録しはじめ、豊かな社会を築き上げた。今やアフリカの番だ。発展の胎動を感じる。
アフリカの可哀相な子供たちに支援をしたい。そう言ってくださる人々がいる。その気持ちや活動は有難いことだ。まだまだ支援を必要とする人々がいる。私たちが出来ることは、たくさんある。私たちには多くの人々を救う力がある。その一方で、アフリカは「希望と機会の大陸」である。人口9億人のアフリカ市場が、貿易や投資の相手先として登場しつつある。天然資源は豊富であり、潜在的に高い生産力を持つ地域も数多くある。すでに中国やインドなどのビジネスマンは、どんどんアフリカ市場に入ってきている。日本の経済界の人々も、そうした新しい目で、アフリカを見てほしい。そのようなお話をした。
人種偏見という程ではないが、日本の多くの人々が、まだアフリカの人々に距離を感じている。肌が黒い人々というと、どうしても米国のスラム街のイメージ、社会の中で最下層の人々が、貧困や暴力に喘いでいる姿がある。ところが、アフリカに行けば私たちと同じ、国や経済を背負って立つ人々である。私の講演を聞きに来ていただいた方の中に、自らの体験を語られた方があった。アフリカから来た人々をおもてなしする機会があった、私たち日本人以上に、知識も教養もある人々であった。そのとおり。アフリカのエリート層の人々は、学歴を聞くだけですごい。欧米の最先端の教育を受けている。私たちが真剣に付き合うべき人々だ。そして大変嬉しいことに、日本を訪問したというアフリカの人は皆例外なく、日本での歓迎は素晴らしかったと語る。私たちアジア人こそ、アフリカの人々と偏見なしに付き合えるはずだ。
大使として縁あって、アフリカと日本の橋渡しをする役割をいただいた。両方の人々の間で、気持ちの上で、経済・文化の上で、交流を深めたい。日本の方々に、アフリカをもっと身近に感じてほしい。折りしも、そういう気持ちでお話をした日、オバマ大統領が就任した。オバマ大統領を誇りに、アフリカの人々が自信をつけることは間違いない。いよいよアフリカの何かが変わっていく。そうした予感がした。
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