バグボ大統領と会談した。日本に用務出張で帰るので、その前に会っておこうと面会を申し込んでおいたのだが、なにぶんにも隣国ガーナの大統領就任式が7日にあり、大統領は8日に帰国、翌10日にはナイジェリアを訪問するという予定だ。だから面会要請を出しながら、私に会う時間などとてもないだろう、と思っていた。そうしたら、電話がかかってきて9日に会うという。とても好印象を受ける。大統領は、日本との関係を優先してくれている。
大統領府の執務室で、バグボ大統領は、白シャツだけの楽な格好で、私を迎えてくれた。私は新年の挨拶を述べ、明日から日本に帰るので、何か承知しておくべきことがあれば聞きたく参上した、と述べる。大統領は、それでは日本の皆様にこのように伝えてほしい、コートジボワールは本当に必要な協力をしてくれる日本に感謝している、世論調査するたびに人気ある国の第一は日本と出る、コートジボワールが累積債務などの難局から脱出することを応援してほしい、と述べる。
私は、日本として民主的な大統領選挙が早く実施されることを望んでいることに変わりはない、しかし、ただ選挙を待つというのではなく、選挙の後に何をするか、経済をどう発展させるかに今から備えなければならない、日本はそのための協力を考える、と述べる。そして、天皇誕生日祝賀会に行った私の祝辞を、是非読んでくれといって渡す。私は、大統領に言う。
「この祝辞にあるように、コートジボワールの人々には、いつもこう言っているんです。未来を目指そう。未来のために、一緒に働こう。」
バグボ大統領は、そのとおりだ、と頷きながら言う。
「コートジボワールの人々は、今日のことで頭がいっぱいだ。今日のマニョクがあるか、今日の米があるか。それがあればあるで直ぐに食べてしまって、子供の将来のために貯蓄するとかに、なかなか思いが至らない。だから、出てくるのは現状の不満ばかりだ。明日をどうするかを考えるべきだと、私もいつも国民に訴えているが、これが難しい。」
私は、大統領の演説をヤムスクロで聞きましたよ、アフリカの人々はただ資源の上に座っているだけだ、と訴えておられましたね、と言葉を挟む。大統領は、嘆かわしいことに、それが現実なのだ、と言う。アフリカには色んな資源がある。石油、鉄、ボーキサイト、金、カカオ。しかし、それを自ら開発していく知恵と意欲がない。アフリカの人々は、そうした知恵と意欲を身につけなければならない。
日本も貧しかった。資源など無かった。でも、私の親の世代は、目標を立ててしっかり働いた。政策担当者も、所得倍増計画といった夢を掲げた。そしてその夢を実現した。コートジボワールの人々にもできるはずだ。大統領が、国民に目標や夢を示して、皆がその目標や夢に向けて希望を持てるようにすれば、コートジボワールの人々の隠れた力が、必ずや表に出てくるはずだ。私は大統領にそういう趣旨を述べる。なんだか説教じみてきてしまった。大統領は、私が恐縮したのを察したのか、いやいや今日はこうやってお話しをしながら、いろいろ自分にも構想が湧いてきた、と言ってくれる。また話しに来てくれたまえ。
出口で、別れの握手をしようとしたら、バグボ大統領は私の肩をつかんで、頭を右左にぶつけてきた。ふつうはアフリカ人同士でしかしない、親近感を表す挨拶である。私は、今年バグボ大統領が会う、最初の大使となった。
大統領府の執務室で、バグボ大統領は、白シャツだけの楽な格好で、私を迎えてくれた。私は新年の挨拶を述べ、明日から日本に帰るので、何か承知しておくべきことがあれば聞きたく参上した、と述べる。大統領は、それでは日本の皆様にこのように伝えてほしい、コートジボワールは本当に必要な協力をしてくれる日本に感謝している、世論調査するたびに人気ある国の第一は日本と出る、コートジボワールが累積債務などの難局から脱出することを応援してほしい、と述べる。
私は、日本として民主的な大統領選挙が早く実施されることを望んでいることに変わりはない、しかし、ただ選挙を待つというのではなく、選挙の後に何をするか、経済をどう発展させるかに今から備えなければならない、日本はそのための協力を考える、と述べる。そして、天皇誕生日祝賀会に行った私の祝辞を、是非読んでくれといって渡す。私は、大統領に言う。
「この祝辞にあるように、コートジボワールの人々には、いつもこう言っているんです。未来を目指そう。未来のために、一緒に働こう。」
バグボ大統領は、そのとおりだ、と頷きながら言う。
「コートジボワールの人々は、今日のことで頭がいっぱいだ。今日のマニョクがあるか、今日の米があるか。それがあればあるで直ぐに食べてしまって、子供の将来のために貯蓄するとかに、なかなか思いが至らない。だから、出てくるのは現状の不満ばかりだ。明日をどうするかを考えるべきだと、私もいつも国民に訴えているが、これが難しい。」
私は、大統領の演説をヤムスクロで聞きましたよ、アフリカの人々はただ資源の上に座っているだけだ、と訴えておられましたね、と言葉を挟む。大統領は、嘆かわしいことに、それが現実なのだ、と言う。アフリカには色んな資源がある。石油、鉄、ボーキサイト、金、カカオ。しかし、それを自ら開発していく知恵と意欲がない。アフリカの人々は、そうした知恵と意欲を身につけなければならない。
日本も貧しかった。資源など無かった。でも、私の親の世代は、目標を立ててしっかり働いた。政策担当者も、所得倍増計画といった夢を掲げた。そしてその夢を実現した。コートジボワールの人々にもできるはずだ。大統領が、国民に目標や夢を示して、皆がその目標や夢に向けて希望を持てるようにすれば、コートジボワールの人々の隠れた力が、必ずや表に出てくるはずだ。私は大統領にそういう趣旨を述べる。なんだか説教じみてきてしまった。大統領は、私が恐縮したのを察したのか、いやいや今日はこうやってお話しをしながら、いろいろ自分にも構想が湧いてきた、と言ってくれる。また話しに来てくれたまえ。
出口で、別れの握手をしようとしたら、バグボ大統領は私の肩をつかんで、頭を右左にぶつけてきた。ふつうはアフリカ人同士でしかしない、親近感を表す挨拶である。私は、今年バグボ大統領が会う、最初の大使となった。