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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

アビジャンから謹賀新年

2009-01-01 | Weblog
「この番組で、最初の最初に新年をお祝いする大使であることを、光栄に思います。日出づる国から、あけましておめでとうございます。」
私の声が流れる。12月31日午後3時である。ラジオ放送局から依頼があって、ある番組に参加している。といっても、前もって録音してあるものが流れているのであって、私も公邸でソファーに座って、自分の声を聴いている。

時差があるので、東の国から順番に元旦の午前零時になる。それぞれの国の大使に、順番に新年の挨拶をしてもらう、という企画のラジオ番組なのだ。ここにはニュージーランド大使も豪州大使もいないので、9時間の時差がある日本の大使がトップバッターである。この後、中国大使、インド大使、サウジアラビア大使、とその国の午前零時ごとに続いていくはずだ。

アナウンサーが、日本では年をどのように越すのですか、と尋ねる。私は、除夜の鐘の話をする。
「日本のお寺では、過ぎた一年のいろいろな煩悩を、108つ鐘を叩いて消去するのです。108つ叩いたあとは、人々の煩悩が全部消えて、人の心が真新しくなります。日本人にとって、元旦を迎えるというのは、清新な気持ちで一年を新たに始める、ということです。人々は、一年の目標を立てて、神社やお寺に初詣に行きます。その後は、親戚や友人の家を訪ねます。年末年始の1週間は会社も閉まって休暇を取り、みな家族親族との交遊で時間を過ごします。一年のうちで一番大切な時期です。」

それでは、大使の今年の目標は何ですか、と聞かれる。私は、こちらに赴任して3ヶ月が経った、と説明してから抱負を語る。
「2009年は、私にとってもコートジボワールにとっても、飛躍の年となるでしょう。まず何より大統領選挙の年です。選挙を実施して、長く続いてきた危機から完全に脱出しなくてはならない。そして、政治が正常化すれば、経済活動が元に戻り、コートジボワールが西アフリカの経済の中心として復活する見通しがつくでしょう。」
だから今年は、日本の企業が、貿易や投資を進めるためにコートジボワールに戻ってくるように尽力したい、経済協力や文化交流なども具体的に進めてゆきたい、と述べる。
「だから、一緒に頑張りましょう。コートジボワールに平和と繁栄が続くように。」

自分の言葉をラジオで聞きながら、私も私自身に、2009年はどういう年にするべきだろう、目標を立てるとすれば何だろうと改めて問うている。大使としての仕事は、何とか軌道に乗ってきた。準備体操の段階を終えて、いよいよ成果に繋がる道筋を開いていきたい。すでにいくつか腹案もある。でも、それだけでは物足りない。せっかく西アフリカに居るのだから、仕事以外にも何か新しいことに挑戦したい。幸いにして、こちらで生活して、美術、音楽、文学、風習、芸能、宗教、文化、民芸、哲学、言語、どこにも少しずつ興味をそそられるものがある。研究すべき課題はけっこうあるので、何か目標を絞るというのは難しい。

大使という職業の特典は、いろんな人に会えることである。それも、それぞれの分野で一仕事を成している人々と会って、話を聞く機会がある。今年もどのような人に出会えるか、楽しみだ。常に知的好奇心の網を張っておいて、出会う人々から知りえることで、面白いと思ったものを拾っていく。そう、来年の今ごろまでには、また365日分の新しいことが拾い集められればいい。

だいじなのは目標というよりは、常にアンテナを敏感にしておくという心がけだろうか。新しいことに怖じないという気持ちだろうか。そういうふうに一年の心構えを正して、アビジャンで新しい年を迎えている。

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