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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

長距離輸送の足かせ

2008-12-25 | Weblog
トーゴでの仕事を終えたあと、次の訪問国ベナンに移動することとなった。ベナンは、トーゴの東隣の国。トーゴのロメから、ベナンのコトヌまで、大西洋岸を150キロの距離であるから、車で移動することにした。そうしてみると、ロメ港のアデニョン所長が指摘した問題は、私の目にもたちまち明らかになった。

車にトランクを積み込んで、ロメの街を出発するやいなや大渋滞だ。走るにつれ、ロメ港の周辺で何か混雑が生じているのだ、ということが分かる。大型トラックが多数並んで、道路を占拠している。輸出のための貨物を積んできたトラックが、港の施設に入りきらずに、外に溢れているようである。アデニョン所長が言っていた、税関当局が能力不足で、貨物の通関を処理しきれない、ということが原因なのだろうか。そこで事情を詳らかにしたわけではないのであるが、とにかく沢山のトラックが一般道に延々と並んで、他の交通を麻痺させているというのは尋常ではない。

また、アフリカの道路交通には、舗装の破損がひどいという問題がある。舗装工事が貧弱なのだろうか、すぐに穴が開く。熱帯の雨も、私たちの想像を越えて激しく、鉄砲水はアスファルトの下の土を流してしまう。国が貧しいために補修もままならず、悪路のつけは全て運転手にまわってくる。それでも自家用車の運転手はまだいい。車内の同乗者に、しっかりつかまっておくように警告した上で、波打つ路面をロデオさながら乗り越える。損害は、せいぜい車の底を磨ったり、足回りの部品が早く傷む程度である。

ところがトラックの運転手には、時には命がけの試練になる。トラックが傾きすぎると、貨物がバランスを崩して転倒するからだ。実際、郊外を走ってみると、数多くのトラックが、道端で横倒しになっているのを見かける。運転手の死亡事故に至ることもある。だから、大型トラックは皆、実に慎重に走る。一見きれいな舗装道路でも、突然陥没があるかもしれない。急ブレーキはかけられないので、安全のためにゆっくり走る。大型トラックを先頭に、長い車の列が出来る。

都市と都市の間の田園地域では、道路の舗装は割合良好で、車は椰子の林の中を気持ちよく走り抜ける。ところが、街に入ると穴ぼこだらけになる。市街地では道路の使用頻度が多いから、たやすく舗装を傷めてしまう。幹線道路はすべて都市間道路なので、町に入るごとにのろのろ運転だ。日本のように、高速道路を平均時速で走れるというのとは訳が違う。ロメ港で荷揚げしても、その後各地への長距離輸送がこういう有様では、搬送コストが相当掛かってしまうだろう。バワラ開発相の、ロメを中心とした道路輸送ライン構想も、現実には課題山積のようだ。そして、ベナンとの国境に到着すると、さらに別の課題があることが分かった。

国境の手前数キロから、延々と大型トラックの列が続く。道路の半分を路上駐車で塞いでいる。ここでも国境を越えるための手続きが大変なのだ。どれくらいの待ち時間かは調査しなかったが、ずいぶん長い時間になっているのであろう。運転手たちは皆、牽引車の下の隙間に寝たりしている。ハンモックを吊って休んでいる人もいる。沿道は、藁葺きの売店や小料理屋ができて、大変な賑わいである。トラックを追い越して先に進もうとする自家用車と、反対方向に進む車が交錯して、しばしば身動きができなくなる。

出入国の管理事務所は、車の往来で埃だらけの広場に立つ、コンクリート建て平屋の小さな建物だ。予め通報してあったこともあり、私は大使だということで、それぞれの出入国管理事務所で冷房つきの待合室に通された。トーゴ側の出国、ベナン側の入国について、それぞれ手続きは短時間で済んだ。しかし、事務所には数人の官吏しかおらず、この混沌の中で一般の人々が手続きを済ませるのは大変であろう。

手続き待ちの大型トラックが数知れず停まっている中を、掻き分けるようにして、わが車は前に進む。前方で、軍服を着て銃を持った男が制止をする。ベナンの税関当局の官吏と思われるが、サングラスをかけて柄が悪そうだ。同乗の書記官が、日本大使の車だから通せ、と書類を見せて主張する。
「ちっちっ、駄目駄目、早くトランクを開けろ。」
怒鳴りながら高圧的である。この車はレンタカーだから、いろいろ言われても仕方ない。トランクを開ける。わが書記官が勇猛果敢にも軍服男としばらくやりあって、これは日本大使の車で、ベナン政府にも簡易通関を要請してある旨を、なんとか納得させたようである。
「日本大使の車だったら、いっぱい日本のお土産を積んでいるんじゃないのん。」
軍服男は名残惜しそうであった。別のやり方で、スムーズに通過することも出来たのかもしれない。いずれにしても、国境でこういう無秩序で遅々とした手続きがある、おまけにお行儀の悪い役人がいるというのは、貨物の長距離輸送にとって、この上ない足かせになる。

それでも挫けることなく、たくさんのトラックが貨物を満載して国境を越えようとしている。私は、この地域の商取引と流通に、多大の活力があることを感じた。

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