それは、偶々そうなったことだったのか。あるいは、政治の舞台として私の公邸が選ばれたのか。そこのところは、私にも良く分からない。私は、日本の大使として、天皇誕生日の祝賀レセプションを、きちんと正しく主催した。そこでご招待したお客さんの間での出来事までは、私としてどうにも力の及ぶところではない。
ソロ首相を待つ間、お客さんが続々と到着。私は玄関で、列を作るお客さんたちと、順々ににこやかに挨拶をし、言葉を交わしていた。そこに、ボディーガードに囲まれた人物が現れた。なんと、「人民党」のアフィ・ヌゲサン党首である。
アフィ・ヌゲサン党首は、2000年から2003年まで首相を務めた人物だ。もちろんバグボ大統領の党の党首として、重要な人であるから、少し前に挨拶に赴き、いろいろ意見交換をしていた。日本とコートジボワールの関係促進についても、話に花が咲いた。だから、アフィ・ヌゲサン党首が、私の招待に応じて祝賀会に駆けつけてくれることは、何ら不思議ではないし、彼ほどの重要人物の出席を得られるなど、大使として実に栄誉溢れることである。
そうはいっても、ここ数日の激しい論争の渦中の人物なのだ。しかも、その論争の事実上の相手方であるソロ首相が、あと数十分でここに主賓として到着しようとしている。私は、強く握手して、歓迎と感謝の意を表現しながら、どういうことになるか、祝賀会の主人として何か気を付けるべきことがあるか、頭を大回転させていた。とりあえず、アフィ・ヌゲサン党首に囁いた。
「もうすぐソロ首相が来ます。」
心構えはしておいてもらおう。彼を当惑させるようなことがあってはならない。
アフィ・ヌゲサン党首は「そうですか」とだけ言って、特に気にとめた様子は無い。
私は玄関にいたので、その後アフィ・ヌゲサン党首が会場でどういうふうにしていたか、全く承知しない。招待客として出席していた外国系通信社の代表が、車にマイクを取りに走っていた。絶好の取材の機会となったのであろう。後で聞くと、アフィ・ヌゲサン党首は、たくさんの報道関係者に取り巻かれていたという。一方、玄関にいる私は、ソロ首相を迎えた。今日の祝賀会では、主賓はソロ首相であるから、当然ながら私はソロ首相にぴったり付いて、最大限の礼を尽くす。
祝辞を終えた私は、ソロ首相を、酒類のカウンターに案内し、出席を得られたことに感謝を表明しつつ雑談をする。たちまち、閣僚連中をはじめとして、たくさんの人たちが、首相に挨拶に訪れる。焼き鳥、寿司などの日本食が、ボーイによって運ばれてくるので、私は首相に勧める。首相も焼き鳥を一串手に取り、和やかに歓談している。
さて、祝賀レセプションのお客さんたちは、私の祝辞が終わると、そろそろ帰り始める。大使たちや政府の要人たちが、玄関に集まってきた。こういう人たちは、それぞれ迎えの車を呼ばなければならないから、玄関の担当は対応でてんてこ舞いになる。そうして、玄関が大混雑になっていたときに、ソロ首相がお帰りということになった。警備の車などがあるから、長い車列になる。首相を帰すのが優先である。大使たちや他の要人たちに、そこで順番を待ってもらって、首相を玄関に案内した。
するとそこで、何とアフィ・ヌゲサン党首が車を待っていた。如何ともしようがない。ソロ首相と、ばったり出くわさざるをえない。今コートジボワール中をはらはらさせている、対立の両主人公が、私の公邸の玄関でご対面である。しかも、アフィ・ヌゲサン党首はソロ首相暗殺計画の裏にいる、とまで「新勢力」に非難されているのである。同じく車を待っていた各国の大使連中も、この大団円をどうなることかと見守ったであろう。
ソロ首相は、何ら躊躇なく、あたかも友人に会ったときのように、アフィ・ヌゲサン党首に挨拶をした。
「やあ、ここでお会いするとは。」
アフィ・ヌゲサン党首もにこやかにソロ首相に話し掛けた。どちらから握手の手を差し出したかまでは、私は確認していない。外交団や政府要人や報道関係者が見守る前で、二人の主人公は、何か問題でもあるのか、というように振舞ってみせた。ソロ首相は、見送りに出た閣僚たちなど、周りの人々と二言三言声を交わしたあと、車列に乗り込んだ。両者の間で火花がはじけているという報道が、まるでどこか違う世界での作り話のように思えた。
日本大使公邸での両雄対面の一場は、満場安堵の中で幕を閉じた。
ソロ首相を待つ間、お客さんが続々と到着。私は玄関で、列を作るお客さんたちと、順々ににこやかに挨拶をし、言葉を交わしていた。そこに、ボディーガードに囲まれた人物が現れた。なんと、「人民党」のアフィ・ヌゲサン党首である。
アフィ・ヌゲサン党首は、2000年から2003年まで首相を務めた人物だ。もちろんバグボ大統領の党の党首として、重要な人であるから、少し前に挨拶に赴き、いろいろ意見交換をしていた。日本とコートジボワールの関係促進についても、話に花が咲いた。だから、アフィ・ヌゲサン党首が、私の招待に応じて祝賀会に駆けつけてくれることは、何ら不思議ではないし、彼ほどの重要人物の出席を得られるなど、大使として実に栄誉溢れることである。
そうはいっても、ここ数日の激しい論争の渦中の人物なのだ。しかも、その論争の事実上の相手方であるソロ首相が、あと数十分でここに主賓として到着しようとしている。私は、強く握手して、歓迎と感謝の意を表現しながら、どういうことになるか、祝賀会の主人として何か気を付けるべきことがあるか、頭を大回転させていた。とりあえず、アフィ・ヌゲサン党首に囁いた。
「もうすぐソロ首相が来ます。」
心構えはしておいてもらおう。彼を当惑させるようなことがあってはならない。
アフィ・ヌゲサン党首は「そうですか」とだけ言って、特に気にとめた様子は無い。
私は玄関にいたので、その後アフィ・ヌゲサン党首が会場でどういうふうにしていたか、全く承知しない。招待客として出席していた外国系通信社の代表が、車にマイクを取りに走っていた。絶好の取材の機会となったのであろう。後で聞くと、アフィ・ヌゲサン党首は、たくさんの報道関係者に取り巻かれていたという。一方、玄関にいる私は、ソロ首相を迎えた。今日の祝賀会では、主賓はソロ首相であるから、当然ながら私はソロ首相にぴったり付いて、最大限の礼を尽くす。
祝辞を終えた私は、ソロ首相を、酒類のカウンターに案内し、出席を得られたことに感謝を表明しつつ雑談をする。たちまち、閣僚連中をはじめとして、たくさんの人たちが、首相に挨拶に訪れる。焼き鳥、寿司などの日本食が、ボーイによって運ばれてくるので、私は首相に勧める。首相も焼き鳥を一串手に取り、和やかに歓談している。
さて、祝賀レセプションのお客さんたちは、私の祝辞が終わると、そろそろ帰り始める。大使たちや政府の要人たちが、玄関に集まってきた。こういう人たちは、それぞれ迎えの車を呼ばなければならないから、玄関の担当は対応でてんてこ舞いになる。そうして、玄関が大混雑になっていたときに、ソロ首相がお帰りということになった。警備の車などがあるから、長い車列になる。首相を帰すのが優先である。大使たちや他の要人たちに、そこで順番を待ってもらって、首相を玄関に案内した。
するとそこで、何とアフィ・ヌゲサン党首が車を待っていた。如何ともしようがない。ソロ首相と、ばったり出くわさざるをえない。今コートジボワール中をはらはらさせている、対立の両主人公が、私の公邸の玄関でご対面である。しかも、アフィ・ヌゲサン党首はソロ首相暗殺計画の裏にいる、とまで「新勢力」に非難されているのである。同じく車を待っていた各国の大使連中も、この大団円をどうなることかと見守ったであろう。
ソロ首相は、何ら躊躇なく、あたかも友人に会ったときのように、アフィ・ヌゲサン党首に挨拶をした。
「やあ、ここでお会いするとは。」
アフィ・ヌゲサン党首もにこやかにソロ首相に話し掛けた。どちらから握手の手を差し出したかまでは、私は確認していない。外交団や政府要人や報道関係者が見守る前で、二人の主人公は、何か問題でもあるのか、というように振舞ってみせた。ソロ首相は、見送りに出た閣僚たちなど、周りの人々と二言三言声を交わしたあと、車列に乗り込んだ。両者の間で火花がはじけているという報道が、まるでどこか違う世界での作り話のように思えた。
日本大使公邸での両雄対面の一場は、満場安堵の中で幕を閉じた。