規制団体"Collective Shout"について
ITmediaで「Detroit: Become Human(デトロイト ビカムヒューマン)」がSteamから削除された記事を読みました。気になったのでCollective Shoutについて調べてみました。(初めて書くのでどこを太字にするか迷いました。)
これに関わったのが、オーストラリアを拠点に活動するCollective Shoutという非営利団体。彼らは直前にクレジットカード会社や決済代行業者に対してSteamなどに圧力を加えるよう要請する公開書簡を送っており、ゲーム削除後には幹部がSNSで“勝利宣言”をしました。
"Collective Shout"はキリスト教保守団体なのか?
Collective Shoutは広告・ファッション・ドール・ポルノ雑誌・ポルノサイト・ゲーム・ヌードカレンダ・ポスターなどでのいわゆる”アダルト表現”に抗議する団体のようで、女性・子供の性的描写を"性的搾取"として問題視しているようです。間接的なものポルノ雑誌"プレイボーイ"の株取得などにも抗議している例もあるようです。
結論から言うと、Collective Shoutについては以下のことが言えます。
※一般的にキリスト教保守派は中絶の権利・性的少数者の権利拡大に反対であると言われています。
・Collective Shoutはどの政党・宗派にも属さない団体と明言している。
・公式サイトには中絶描写の言及や中絶の権利に関して立場の表明がない。
・性的少数者の性的描写についても言及が全くない。
・団体の現議長のKim Vanden Hengelは、中絶の権利拡大・性的少数者の権利拡大に反対するキリスト教保守派の非営利団体で働いていた経歴がある。
・Collective Shoutの創設者の一人で現運動ディレクターのMelinda Tankard Reistは自身を中絶に反対するフェミニスト(pro-life feminist)と過去に公表している。カトリック協会の関係団体で講演を行った過去もある。
・同じくMelinda Tankard Reistは別団体も立ち上げている。その別団体(Women's Forum Australia)は中絶の権利の拡大・トランスジェンダーの権利拡大に反対すると明言している。
Collective Shoutは団体として非宗教団体であると強調していますが、中心人物を少し調べてみると疑わしさが生まれました。
何が問題なのか?
欧米圏、特にアメリカでの政治家が女性の中絶の権利の拡大・性的少数者の権利拡大に反対、または言葉を濁す場合、まずキリスト教保守団体の影響が疑われます。一方で、オーストラリアでは中絶は合法です。
ここで問題になるのは、このCollective Shoutという団体が規制を呼びかけてきた理由が実は宗教的な理由ではないのか?と疑われてしまう点です。
例えばこの団体が「Detroit: Become Human」を排除すべきと示した理由が本当かどうかわからなくなってしまうのです。表向きではフェミニスト団体が示すような理由を提示していたとしても、実際には団体の議長、あるいは運動ディレクターのキリスト教保守的な思想上、問題のある描写が存在するゲームだったから標的にしたのかもしれません。
特に団体の創設者は自身を中絶反対(pro-life)であると過去に明言していました。オーストラリア人の創設者が"pro-life"という立場を過去に表明していたこと自体、キリスト教的な思想を持っていることを自ら進んで強調していたと言えます。さらに、一般的にフェミニストは中絶を容認するので中絶に反対するフェミニスト(pro-life feminist)というのは特殊な立場と言えます。
※一般的に欧米圏で生命尊重・中絶反対(pro-life)はキリスト教保守派、選択の自由支持・中絶容認(pro-choice)はリベラル派が主張すると言われる。
この疑問を解決するのはとても簡単です。
Collective Shoutが中絶の権利や性的少数者に関して立場・意見を明らかにすればいいだけです。
そもそも、Collective Shoutが「女性の権利」を掲げるのであれば、中絶の権利や性的少数者の権利は避けて通れない重要なテーマです。これは欧米圏のみならず、日本を含む多くの国で同様です。
しかし、彼らは何も行わないでしょう。2008年に設立している団体なのに、未だに女性の権利拡大を掲げながら中絶の権利に言及せず、性的少数者に関してはQ&Aページにすら一言も書いていないのですから。
なぜ中絶の権利を取り上げないのか?
この団体が標的にしているものは広告・ゲーム・子供服など様々で、抗議する理由として理解できるものもあります。 一方で、ペニスを模したクリスマスのオーナメントのネット広告まで批判しているのは理解しがたいです。
https://www.collectiveshout.org/ad-standards-refuses-to-review-complaint-against-typo-sponsored-penis-post
性的なものであればジョークグッズとして、別に問題がなさそうなものまで問題があると指摘していています。一方で、中絶問題に関しては「中絶」と「政治的亡命」を並べて質問形式にして書いて返答として中絶の権利を女性の権利として取り上げないことを明言しています。
そもそも、オーストラリアでは合法である「中絶」を「政治的亡命」同列にして一蹴する意味が分かりません。また、「政治的亡命」と比べると「中絶」の権利は女性の性的な問題と切り離せません。映画やテレビドラマでもティーンエイジャーの中絶の描写が存在する作品も存在します。
中絶の権利は女性含むほとんどの人類にとって、クリスマスのオーナメント広告より、比べ物にならないほど大切な問題でしょう。
https://www.collectiveshout.org/other_topics
性的少数者には言及すらしない
女性の権利・特に子供の権利、性的描写を取り上げながら、性的少数者を取り上げないというのはとても奇妙です。
"sexual minority","transgender", "LGBT", "LGBTQ", "homosexual"といった用語でQ&Aのページを検索しても全くヒットしません。それどころかサイトに性的少数者を取り上げた記事が存在しないようです。
これではダブルスタンダードと言われてしまいます。Collective Shoutは性的少数者の性的描写に関しては言及する価値すらないと考えているのでしょうか?
結論
Collective Shoutって、多分、中絶反対団体(Women's Forum Australia)と思想は同じで目的だけ分けて作られただけなんじゃないの?一つは表現規制で、もう一つは中絶の権利反対をする団体として。
Collective Shoutは女性・子供を守るためと言いつつ、実質的にはキリスト教の保守思想で抗議運動をしてるだけじゃないの?
アダルト表現に反対してポルノを危険視して、実際は中絶の権利も団体として反対していて、性的少数者の存在も黙殺したいのでは?という疑念はどうしても残ってしまいます。
少なくともCollective Shoutをいわゆるフェミニズム団体として安易にとらえその運動を支持するのは賢明ではありません。
再度書きますが、この疑問を解決するのはとても簡単です。
Collective Shoutが中絶の権利や性的少数者に関しての立場・意見を明らかにすればいいだけです。そのうえで、団体として注力する運動が表現規制であることを述べればいいだけです。それをしない限りこの団体の運動は信頼に値しません
Collective Shoutは団体の運動によって、2024年に複数の数十億円規模の企業と数兆円規模の企業にも“勝った”ことを公式サイトで強調しています。これほどの影響力がある団体ならなおのこと、Collective Shoutが中絶の権利や性的少数者に関しての立場・意見を明らかにする社会的責任があると言えるでしょう。
Collective Shout has made significant strides in calling-out a sexualised culture that is damaging to women and girls. The movement has led successful national and international campaigns, seeing a record number of wins in 2024, including against multi-billion and in one case even multi-trillion-dollar corporations.
感想
Collective Shoutという団体はサイトを読むと、あらゆるアダルト表現・ポルノを規制したがる昭和時代の規制団体を思わせました。それぐらい、あからさまな表現規制強硬派の団体です。物事を単純化し、ポルノがあらゆる性犯罪の原因であると信じ切っているようです。
Collective Shoutの問題点は、女性の権利拡大をうたいつつ、中絶の権利や性的少数者については書かず、主張しないことを理由をつけて正当化している点です。団体として信頼に値しません。おそらく、キリスト教保守層が彼らの寄付者のターゲットなので書けないのだろうと推測されます。
ただし、Collective Shoutのような規制団体はどこの国でも時代・思想・程度・規模の違いこそあれ存在するのも推測できることです。
問題は、なぜこういう規制団体が現在力を持ってしまっているのか、そしてその要請にクレジットカード会社・決済代行業者が対応したのかでしょう。特に今回のクレジットカード側の対応は致命的で、女性のため・子供のためと掲げればなんでも規制できると、他の規制団体も暴走する恐れがあります。
結局、クレジットカード会社・決済代行業者が対応した理由、対応する基準が未だに誰にもわかりません。この状態は非常に危ういです。
もちろん、Collective Shoutもクレジットカード会社・決済代行業者に依存しています。Collective Shoutのサイトに寄付(Donate)のページがあって、進めると決済代行業者のVISA・MasterCardなどが並んだ支払いページが出てきます。
現状、数年経って特定の団体からの抗議で規制基準が劇的に変わる可能性も当然あるでしょう。例えば女性の選択の自由が重視されるようになったとしましょう。その場合、この団体は創設者が女性の中絶の権利に反対すると公言していたという理由で、Collective Shoutがカード決済から排除されることすら十分考えられます。
また、少し調べると出てきますが、団体としては独立・非政党・非宗教を掲げているのに、創設者のMelinda Tankard Reistはシドニー大司教区のカトリック学校(Aquinas Catholic College)で2018年に講演しています。私はこれが問題だとは思いませんが、疑問もあります。
例えば、Collective Shoutの判断基準だとオーストラリアのカトリック教会の団体なんて性犯罪組織ではないのですか?と皮肉として聞きたくなります。
※2000年以降、各国で過去のキリスト教系の教会での児童性犯罪事件の告発が相次いで起き、オーストラリアも2017年に調査が公表されました。その結果オーストラリアのカトリック教会では4000件越えの児童性犯罪の申し出を隠ぺいしていたと明らかになりました。
https://www.cnn.co.jp/world/35096138.html
補足:"Collective Shout"の議長の経歴・キリスト教保守団体系
以下は規制団体Collective Shoutの現議長のLinkedinの経歴の抜粋です。
Collective Shoutの現議長は1999-2005年、2011-2014年にいわゆる保守的なキリスト教団体の非営利団体で働いていたことを公表しています。
「Anglicare Sydney」と「Sydney Anglican Schools Corporation」はシドニー聖公会系列の非営利団体。
シドニー聖公会は中絶に対して強く反対する立場を取っています。そして、ニューサウスウェールズ州議会で中絶関連法案が審議されるたびに、シドニー聖公会は声明を発表しています。さらに、議員に法案への反対票を投じるよう呼びかけ、信徒に対しても中絶反対の運動への参加を促しています。また、シドニー聖公会は、性的少数者の権利拡大、特に同性婚やトランスジェンダーの肯定的な扱いに強く反対する立場を取っています。
※以下は2013年から2021年までシドニー大主教(シドニー聖公会のトップ)を勤めたグレン・デイヴィスが引退し、2022年に同性婚反対を掲げ新教区を作ったという旨の記事。
https://www.abc.net.au/news/2022-08-17/australia-anglican-church-splits-over-same-sex-marriage/101341078
「Baptist World Aid Australia」はオーストラリア・バプテスト教会の非営利団体。バプテスト教会は保守的な福音派の教派に属しており、一般的に中絶に対して強く反対する立場、同性婚に対しては反対の立場です。
The Archbishop of Sydney's Appeals Unit program manager
Anglicare Sydney
1999 - 2003 4 years
Consultant
Sydney Anglican Schools Corporation
2004 - 2005 1 year
Baptist World Aid Australia
- Director of Supporter Relations
May 2013 - Aug 2014 1 year 4 months
Sydney, Australia
-Manager Church Relations & Major Gifts
Jul 2011 - Apr 2013 1 year 10 months


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